Presentation Information
[T16-O-6]Investigation into the Factors Controlling the Formation of the Inoceramus uwajimensis Acme Zone Toward Proposing a SABS for the Turonian/Coniacian Boundary in the North Pacific Province
*Kosuke TAKAHASHI1, Reishi TAKASHIMA2, Masanari ARAO1, Toshiro YAMANAKA3, Taiga TOMARU1, Azumi KUROYANAGI2 (1. Department of Earth Science, Graduate School of Science, Tohoku University, 2. The Center for Academic Resources and Archives Tohoku University Museum, 3. Tokyo University of Marine Science and Technology)
【ハイライト講演】最近,北海道苫前地域の古丹別川セクションで高解像度の統合層序が構築され,白亜紀の国際年代境界を補助する模式地「SABS」の候補となる可能性が示された.本発表では,年代境界付近の二枚貝密集帯について,当該地域内2地点の地層対比と岩相・元素組成の解析から形成要因と同時性を検証し,SABSで境界を認定・対比する地域的指標としての有効性を探る. ※ハイライト講演とは...
Keywords:
Cretaceous,Yezo Group,Turonian/Coniacian boundary,Inoceramus
これまで北太平洋地域の上部白亜系は,欧米地域のGSSP(Global Boundary Stratotype Section and Point)で各階の境界を定義する化石種の産出が乏しく,正確な年代対比が困難であった.こうした中で,Takahashi et al. (2026)は北海道苫前地域の古丹別川セクションにおいて高解像度の大型化石・炭素同位体比統合層序を構築し,チューロニアン/コニアシアン境界(以降T/C境界)をGSSPと同精度で厳密に特定した.これにより,同セクションはT/C境界のGSSPを補完する,北太平洋地域のSABS(Standard Auxiliary Boundary Stratotype)として提案できる可能性がある.
SABSの設定には,境界を特徴づける地域的なマーカーが不可欠である.Inoceramus uwajimensisは北太平洋地域でT/C境界区間を特徴づける二枚貝の一種であり,各地で排他的に密集する特徴的な産状を示す.古丹別川セクションでは本種のAcme帯がT/C境界の直上で終了することが確認されており,これを欧州のIndex fossilが乏しい本地域における境界の指標とできる可能性がある.しかしながら,本Acme帯の終了をT/C境界のマーカーとして設定するためには,その形成要因を解明し,広域的な等時性を持ちうるか検証する必要がある.本研究では,上記の検証を目的に,北海道苫前地域の古丹別川セクション及び朱鞠内川セクションに露出する蝦夷層群羽幌川層において,I. uwajimensis Acme 帯を含む区間の泥岩試料を採取した.そして,炭素同位体比層序及び凝灰岩層中のアパタイトの微量元素組成を用いたセクション間の高精度な対比とともに,蛍光X線(XRF)分析,並びに全有機炭素(TOC)・全硫黄(TS)分析を行った.
この結果,広域対比可能な凝灰岩の鍵層が得られ,両セクションでI. uwajimensis Acme帯が最上部チューロニアンから最下部コニアシアンのT/C境界直上までの区間に位置することが明らかになった.また,XRF分析ではAcme帯で風化指標のK/Rb比,及び粗粒化を示すZr/Rb比の顕著な増加が認められた.これはAcme 帯で単調な泥岩のみからなる岩相がタービダイト砂岩をしばしば挟む岩相へと変化し,T/C境界付近でAcme帯の終了とほぼ同時に泥岩のみからなる岩相に戻る傾向と整合的である.加えて,生物生産性指標のP/Al比は分析した全区間を通じてほとんど変動が見られなかったが,TS及びC/S比はAcme 帯の直下と直上で堆積物内の強い還元環境を示し,Acme 帯内では酸化的な環境を示す傾向が得られた.
以上は本Acme帯が水柱の局所的な貧酸素化や生産性の変化によるものではなく,海水準の低下に伴い堆積場が陸域へ近づき,底層水により酸素が供給されやすい環境へ変化したことを反映している可能性を示す.また,チューロニアン末期からT/C境界にかけての海水準の低下はヨーロッパ地域の複数の地点からも報告されているため (Jarvis et al., 2015; Wilmsen et al.,2019) ,本研究の国際対比に基づくと,Acme帯に対応するタービダイト砂岩の流入期間は当時の全球的な海水準変動と連動している可能性が高い.したがって,本Acme帯は北太平洋地域において高い等時性を持つ有効な層序マーカーとなり得る.
引用文献
Jarvis et al., 2015, The Depositional Record, 1(2), 53–90.
Takahashi et al., 2026, Cretaceous Research, 183, 106341.
Wilmsen et al., 2019, Facies, 65, 13.
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