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[T18-O-6]Terrestrial vegetation response during the Early Late Paleocene Event (ELPE) in the Nemuro Group, Hokkaido, Japan

*Tatsuya YOSHIDA1, Keiichi HAYASHI2, Hideto NAKAMURA2,4, Masashi IKEDA1, Takuto ANDO3 (1. Hokkaido Univ., 2. Fukui Prefectural Univ., 3. Akita Univ., 4. Fukui Prefectural Dinosaur Museum)
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Keywords:

Paleocene,Nemuro Group,Hyperthermal event,Terrestrial vegetation,Biomarker


 白亜紀-古第三紀境界における大量絶滅後、陸上植生は古第三紀の温暖な気候下で分布域を変化させ、白亜紀から続く被子植物の多様化に伴って生態系の複雑化が進行した(高橋,2005;Benton et al.,2022)。この時期には短周期の全球温暖化イベント(ハイパーサーマル)が断続的に発生しており、大量絶滅後の陸上生態系の再編・多様化にも影響を与えた可能性がある。しかし、暁新世-始新世温暖化極大(PETM)を除く暁新世のイベントについては、陸上植生応答の検討例が限られていた。本研究では、北海道東部白糠丘陵地域に分布する根室層群堆積岩中の陸上植物由来化合物を対象に有機地球化学分析を行い、暁新世中期に発生したハイパーサーマルイベント“Early Late Paleocene Event (ELPE)”時の北西太平洋地域における陸上植生応答を検討した。対象とした古第三系の富川層および活平層は、タービダイト性の砂層を挟在することから、陸棚以深の深海相で堆積したと考えられる。林ら(2023,JpGU)による、渦鞭⽑藻シスト化⽯–炭素同位体⽐統合層序に基づき、ELPEの発生したセランディアン-サネチアン境界期層準を特定した。分析の結果、陸上植物由来の芳香族セスキテルペノイド、ジテルペノイド、トリテルペノイドが検出された。これらのうち、レテンとカダレンからなる陸上高等植物指標;HPP(van Aarssen et al.,2000)および、芳香族トリテルペノイドとジテルペノイドからなる、被子/裸子植物指標;ar-AGI(Nakamura et al.,2010)について検討した。その結果、ELPE層準内では、HPPがar-AGIとは非同調的に一時的な減少スパイクを示した後、ar-AGIの低下が比較的持続するという、時間的に異なる二段階の古植生指標変動が認められた。ELPE層準初期のHPP減少スパイクは、HPPの分母にあたるカダレンの増加によって駆動されている可能性が高く、被子植物や裸子植物以外の植物群の寄与増加を示すと考えられる。PETM期の北海や北極海などでは、物理的撹乱後に先駆植物としてシダ植生が維持された可能性が示唆されており(Nelissen et al.,2026)、本研究の結果も、ELPE時に類似した植生撹乱が生じた可能性を示す。一方、HPP減少スパイクに続くar-AGIの持続的な低下は、芳香族トリテルペノイドの減少、すなわち被子植物寄与の減少として解釈できる。始新世のハイパーサーマルでは、湿潤化に伴う裸子植物花粉の増加と、被子植物花粉の減少が報告されており(Li et al.,2023)、本研究のar-AGIの低下もELPE中の湿潤化傾向を反映している可能性がある。ただし、この層準では、粘土鉱物の触媒作用を反映すると考えられるステロイドの芳香族化指標もar-AGIの減少と同調しており、古植生変化に加えて砕屑物供給源の変化や鉱物学的影響も関与した可能性がある。ELPEは一般に、深海底コアでは単一の炭素同位体比変動として記録されてきた(e.g. Bralower et al.,2002)。一方、アルゼンチンの古土壌記録や中国の浅海相では、約20万年間隔で生じた2回の同位体比変動および古環境変動として記録されている(Hyland et al.,2015;Li et al.,2024)。本研究で認められたHPP減少スパイクと持続的なar-AGI低下の間にも、おおよそ15万年前後の時間差があり、ELPE時の環境擾乱が断続的に発生した可能性を支持する。また、アルゼンチンの記録ではイベント後も、長期的な植生変化が示唆されているのに対し、本研究ではイベント終了後に古植生指標がイベント前と同程度まで回復した。したがって、少なくとも本研究で用いた指標からは、ELPE後の長期的な植生変化は認められなかった。今後、花粉・胞子データと統合することで、特定の植物群に残存した変化をより詳細に評価できると期待される。
[引用文献]
高橋(2005)石技誌. 70,37–46
林ほか(2023)JpGU
Benton et al.(2022)NewPhytol. 233,201735
Bralower et al.(2002)GSAToday 12,4–10
Hyland et al.(2015)Palaeo3. 417,371–378
Li et al.(2023)Palaeo3. 610,111317
Li et al.(2024)J. Sediment.Res. 94,937–952
Nakamura et al.(2010)Org.Geochem. 41,975–980
Nelissen et al(2026)PNAS. 123,e2509231122
vanAarssen et al.(2000)GCA. 64,1417–1424

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