Presentation Information
[T18-O-12]Diverse molecular fossils recovered from coal beds in the Upper Cretaceous Hakobuchi Formation of the Hobetsu area (Hokkaido, Japan) and their paleoenvironmental significance
*Keishiro Sakurai1, Yuki Tateshita1, Ken Sawada1,2 (1. Graduate School of Science, Hokkaido University, 2. Department of Earth and Planetary Sciences, Faculty of Science, Hokkaido University)
Keywords:
Hakobuchi Formation,biomarker,Campanian,paleoenvironment
[はじめに] 北海道中央部に分布する蝦夷層群函淵層は、カンパニアンからマーストリヒチアンにかけての砂岩および砂質シルト岩から構成される浅海成~河川成堆積層である(田中,1960; Ando, 2003)。むかわ町穂別地域の函淵層には上方粗粒化を示す第3オーダーの海水準シーケンスが特徴的にみられ、海退期の堆積物と考えられる粗粒層には層厚約1~2mの石炭層が複数挟在している。さらにカンパニアンからマーストリヒチアンにかけては、 後期カンパニアンイベント(LCE)、カンパニアン/マーストリヒチアン境界イベント(CMBE)など、複数の安定炭素同位体比(δ13C)イベントが報告されている(Linnert et al., 2017)。これらのイベントに伴う気候や海洋循環の変化については活発に議論されているが、広く認められた見解は得られていない。田中(1960)によってまとめられた生層序によると穂別地域函淵層の石炭層のうち最上位の石炭層はカンパニアン/マーストリヒチアン境界にあたり、これらの石炭層は白亜紀後期におけるδ13Cイベントの古環境変動を詳細に記録している可能性がある。本研究では穂別地域に分布する函淵層の夾炭層を調査し、採取した石炭試料から多種多様な分子化石を見出した。それらが記録したカンパニアンからマーストリヒチアンにおける古北海道の陸域環境を復元した。
[試料と方法] 試料は北海道穂別地域富内の鵡川沿いに分布する函淵層の露頭から採取した、砂岩、炭質泥岩、石炭試料である。この地域では上方粗粒化堆積相が石炭層を境にして繰り返し見られ、上部から石炭層A~Cの3層の石炭層が確認されている。石炭層Bの直上層では裸子植物であるニルソニア(Nilssonia sp.)が多産し、またその直下からはInoceramus shumidtiが産出した。また、採取した試料は粉末にした後、有機溶媒によって抽出し、GC-MSにより分析した。
[結果と考察] 試料からは植物のワックス成分に由来するn-アルカン、バクテリア由来のホパノイド、陸上植物由来の植物テルペノイドなど様々な分子化石が検出された。αβ/ββ C31ホモホパン比は石炭層で高い値を示し、この特徴はpH4~6の酸性環境の泥炭地で報告されていることから、石炭層の堆積環境は酸性環境の沼地が発達した泥炭地であったことが示唆された。石炭層試料ではC32~C35ベンゾホパン(芳香族ホパン)とC31~C33ホパン酸が比較的高濃度で検出された。特殊なバクテリアによって合成されたホパノイドに由来するか、特徴的な還元環境下で生成したことが推察される。
後背地の植生に関して、テルペノイド比に基づく裸子植物の寄与を示すHPP’(マツ科の針葉樹の寄与)とar-AGI(被子/裸子植生比)は石炭層A、B内部で大きく変動した。石炭層Aの上部ではHPP’とar-AGIが共に減少する傾向が見られた。この時期にαβ/ββ C31ホモホパン比は減少しているため、泥炭地の拡大と寒冷化による森林植生の縮小が同期している可能性を示す。一方、石炭A, B試料からヒノキ科起源のクパレンが検出され、さらに、ヒノキ科がもつスギオールに由来する2-メチルレテンの相対比が増加することがわかった。つまり、石炭層形成期には、後背地には相対的に湿潤気候下で繁茂するヒノキ科の針葉樹林が卓越していたと推定した。石炭は海退期に露出した陸棚域において、湿潤環境下で沼地が形成されたことに加え、元々陸棚域であった広い堆積場において鉱物の流入が抑制されることで泥炭地が発達し、埋没後、石炭となったと推定した。このような環境では風化が促進され、大気中の二酸化炭素が消費されることで寒冷化が進行したという議論があり(Chenot et al., 2016)、石炭層Aの堆積時に同様の環境変動が起こっていたと解釈している。
引用文献:Ando, H. 2003. J. Asian Ear. Sci. 21, 921–35; Chenot, E. et al. 2016. Palaeogeogr. Palaeoclimatol. Palaeoecol. 447, 42–52; Jiang, L. et al. 2024. Org. Geochem. 195, 104843; Linnert, C. et al. 2018. Newsletters on Stratigraphy 51, 145–66; 田中啓策, 1960, 地調月報, 11, 543- 554.
[試料と方法] 試料は北海道穂別地域富内の鵡川沿いに分布する函淵層の露頭から採取した、砂岩、炭質泥岩、石炭試料である。この地域では上方粗粒化堆積相が石炭層を境にして繰り返し見られ、上部から石炭層A~Cの3層の石炭層が確認されている。石炭層Bの直上層では裸子植物であるニルソニア(Nilssonia sp.)が多産し、またその直下からはInoceramus shumidtiが産出した。また、採取した試料は粉末にした後、有機溶媒によって抽出し、GC-MSにより分析した。
[結果と考察] 試料からは植物のワックス成分に由来するn-アルカン、バクテリア由来のホパノイド、陸上植物由来の植物テルペノイドなど様々な分子化石が検出された。αβ/ββ C31ホモホパン比は石炭層で高い値を示し、この特徴はpH4~6の酸性環境の泥炭地で報告されていることから、石炭層の堆積環境は酸性環境の沼地が発達した泥炭地であったことが示唆された。石炭層試料ではC32~C35ベンゾホパン(芳香族ホパン)とC31~C33ホパン酸が比較的高濃度で検出された。特殊なバクテリアによって合成されたホパノイドに由来するか、特徴的な還元環境下で生成したことが推察される。
後背地の植生に関して、テルペノイド比に基づく裸子植物の寄与を示すHPP’(マツ科の針葉樹の寄与)とar-AGI(被子/裸子植生比)は石炭層A、B内部で大きく変動した。石炭層Aの上部ではHPP’とar-AGIが共に減少する傾向が見られた。この時期にαβ/ββ C31ホモホパン比は減少しているため、泥炭地の拡大と寒冷化による森林植生の縮小が同期している可能性を示す。一方、石炭A, B試料からヒノキ科起源のクパレンが検出され、さらに、ヒノキ科がもつスギオールに由来する2-メチルレテンの相対比が増加することがわかった。つまり、石炭層形成期には、後背地には相対的に湿潤気候下で繁茂するヒノキ科の針葉樹林が卓越していたと推定した。石炭は海退期に露出した陸棚域において、湿潤環境下で沼地が形成されたことに加え、元々陸棚域であった広い堆積場において鉱物の流入が抑制されることで泥炭地が発達し、埋没後、石炭となったと推定した。このような環境では風化が促進され、大気中の二酸化炭素が消費されることで寒冷化が進行したという議論があり(Chenot et al., 2016)、石炭層Aの堆積時に同様の環境変動が起こっていたと解釈している。
引用文献:Ando, H. 2003. J. Asian Ear. Sci. 21, 921–35; Chenot, E. et al. 2016. Palaeogeogr. Palaeoclimatol. Palaeoecol. 447, 42–52; Jiang, L. et al. 2024. Org. Geochem. 195, 104843; Linnert, C. et al. 2018. Newsletters on Stratigraphy 51, 145–66; 田中啓策, 1960, 地調月報, 11, 543- 554.
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