Presentation Information
[T10-P-7]Soft clay with ophiolitic rocks exposed at the coastal area in the Mineoka Tectonic Belt, Boso Peninsula, Japan
*TAKAHASHI Naoki1, KIKUKAWA Akihide2, FURUKAWA Noboru3 (1. Citizen Researcher of Natural History Museum and Institute, Chiba, 2. Natural History Museum and Institute, Chiba, 3. Chiba University)
Keywords:
Boso Peninsula,Mineoka Belt,ophiolitic rocks,soft clay,fault gouge
房総半島南部に分布する嶺岡帯は,本邦でも最も新しいオフィオライト様岩類が産出する地質体の1つとして知られている.しかし,それらの岩石は構造帯中の岩塊として分断・孤立して存在し,相互の関係や周囲の堆積層との関係が不明なことが多い.それは,嶺岡帯の分布域が地すべり多発地帯であり,露頭状況が悪いことが大きな要因となっている.高橋ほか(2012)は,嶺岡帯の基本構造は,下部中新統の保田層群中に各種のオフィオライト様岩類を含む蛇紋岩類が構造的に貫入したものであると推定し,また,その動きは現在でも継続している可能性を示したが,実際にそのような状況を示す露頭はほとんど見いだせていない状況であった.最近になって,嶺岡帯東端の海岸部において,嶺岡帯の基本構造を示唆するオフィオライト様岩類を含む軟弱な粘土層が発見されたので報告する.
鴨川市八岡海岸は蛇紋岩類が最も広く露出する嶺岡山地の中軸部が海岸に達した場所で,海岸には嶺岡帯を構成する様々な岩石の礫が多量に広がるほか,干潮時にはやや大型(数10cm〜数m規模)の岩体の露頭が観察できる.代表的な岩石として,蛇紋岩,玄武岩,保田層群の泥岩,珪質凝灰岩,荒島層の凝灰角礫岩,チャートなどが挙げられる.しかし,それらはそれぞれ孤立して存在し,岩体同士の関係は不明であった.近年,波打ち際に軟弱な粘土層が見出されたが,分布域が水面下であるため詳しい構造は観察できないでいた.最近になって,海岸のやや内陸側を覆っていた礫が洗い流され,陸上部に軟弱な粘土層を主体とする露頭が露出したことから,それらの構造を詳しく観察した.
この粘土層は軟弱な粘土部とそれらに取り巻かれた岩塊から構成され,非対称の剪断変形組織を示す.岩塊としては,蛇紋岩(ハルツバーガイト及びダナイト起源),斑れい岩,保田層群の泥岩及び凝灰質泥岩,荒島層の凝灰岩及び火山礫凝灰岩が見出され,レンズ状の形態を示すことが多く,鏡肌が見られる.粘土部には面構造が発達し,その走向はほぼ東西方向であり,嶺岡帯全体の伸びの方向と一致する.この粘土部では色相の異なる層が面構造にほぼ平行に配列する.色相としては,赤色,明緑色,暗緑色,灰色,灰褐色などが存在する.これらのうちのいくつかについて,X線回折分析を実施した.結果として,赤色粘土からはモンモリロナイトと方解石,明緑色粘土からは蛇紋石(クリソタイルまたはアンチゴライト及びリザルダイト),暗緑色粘土と灰色粘土からはともに石英,斜長石,緑泥石(クリノクロア),雲母粘土鉱物(イライトなど)が検出された.色相の違いは粘土化の源岩の違いを反映していると考えられ,赤色粘土は玄武岩(方解石脈を含む),明緑色粘土は蛇紋岩,暗緑色粘土と灰色粘土は保田層群の凝灰岩や泥岩が源岩と推定される.これらは粘土中の岩塊の岩石種ともほぼ一致している.玄武岩は露頭中には見いだせなかったが,海岸の近傍には玄武岩の大型の岩体が存在し(海岸すぐ沖合の雀島など),嶺岡帯内では玄武岩が蛇紋岩に取り込まれる様子もしばしば観察されることから,蛇紋岩が存在すれば玄武岩も多少付随していることが想定される.実際に,今回観察した露頭では赤色粘土と明緑色粘土は隣接する.
これらの事実から,本粘土層は嶺岡帯を構成する蛇紋岩,玄武岩(蛇紋岩中の岩塊)などのオフィオライト様岩類のほか,保田層群や荒島層の堆積岩類が,共に剪断変形作用を受けて混合し粘土化したものと見ることができる.このような軟弱な粘土層の存在は,この剪断破砕作用が比較的新しい時代にも進行していることを示すと考えられる.
本粘土層と同様な産状の粘土層は,海岸部から900mほど内陸に位置する国道128号線の嶺岡トンネル掘削工事中にも観察されており(鈴木ほか,1974),本粘土層が嶺岡帯内に広く分布する可能性を示している.そして,本地帯全体における地すべりの発生要因にもなっていることが想定される.また,類似した軟弱粘土層(断層ガウジ)は,嶺岡帯の延長部である三浦半島葉山帯の活断層の1つである北武断層沿いでも観察されており(浅見ほか,1992;柴田・蟹江, 2016),嶺岡帯を構成する粘土層も,活構造の産物の可能性が示唆される.以上の点を踏まえると,プレート三重点近傍に位置する三浦半島及び房総半島南部では,2つの海洋プレートの沈み込みの影響を受けて,かつて付加したオフィオライト様岩類を含む地質体が現在でも活動中であることが想像される.
[引用文献]
浅見茂雄ほか,1992,横須賀市博研報,40,21–23.
柴田健一郎・蟹江康光,2016,横須賀市博研報,63, 9–15.
鈴木 守ほか,1974,応用地質,15,1-13.
高橋直樹ほか,2012,神奈川博調査研報(自然),14,25-56.
鴨川市八岡海岸は蛇紋岩類が最も広く露出する嶺岡山地の中軸部が海岸に達した場所で,海岸には嶺岡帯を構成する様々な岩石の礫が多量に広がるほか,干潮時にはやや大型(数10cm〜数m規模)の岩体の露頭が観察できる.代表的な岩石として,蛇紋岩,玄武岩,保田層群の泥岩,珪質凝灰岩,荒島層の凝灰角礫岩,チャートなどが挙げられる.しかし,それらはそれぞれ孤立して存在し,岩体同士の関係は不明であった.近年,波打ち際に軟弱な粘土層が見出されたが,分布域が水面下であるため詳しい構造は観察できないでいた.最近になって,海岸のやや内陸側を覆っていた礫が洗い流され,陸上部に軟弱な粘土層を主体とする露頭が露出したことから,それらの構造を詳しく観察した.
この粘土層は軟弱な粘土部とそれらに取り巻かれた岩塊から構成され,非対称の剪断変形組織を示す.岩塊としては,蛇紋岩(ハルツバーガイト及びダナイト起源),斑れい岩,保田層群の泥岩及び凝灰質泥岩,荒島層の凝灰岩及び火山礫凝灰岩が見出され,レンズ状の形態を示すことが多く,鏡肌が見られる.粘土部には面構造が発達し,その走向はほぼ東西方向であり,嶺岡帯全体の伸びの方向と一致する.この粘土部では色相の異なる層が面構造にほぼ平行に配列する.色相としては,赤色,明緑色,暗緑色,灰色,灰褐色などが存在する.これらのうちのいくつかについて,X線回折分析を実施した.結果として,赤色粘土からはモンモリロナイトと方解石,明緑色粘土からは蛇紋石(クリソタイルまたはアンチゴライト及びリザルダイト),暗緑色粘土と灰色粘土からはともに石英,斜長石,緑泥石(クリノクロア),雲母粘土鉱物(イライトなど)が検出された.色相の違いは粘土化の源岩の違いを反映していると考えられ,赤色粘土は玄武岩(方解石脈を含む),明緑色粘土は蛇紋岩,暗緑色粘土と灰色粘土は保田層群の凝灰岩や泥岩が源岩と推定される.これらは粘土中の岩塊の岩石種ともほぼ一致している.玄武岩は露頭中には見いだせなかったが,海岸の近傍には玄武岩の大型の岩体が存在し(海岸すぐ沖合の雀島など),嶺岡帯内では玄武岩が蛇紋岩に取り込まれる様子もしばしば観察されることから,蛇紋岩が存在すれば玄武岩も多少付随していることが想定される.実際に,今回観察した露頭では赤色粘土と明緑色粘土は隣接する.
これらの事実から,本粘土層は嶺岡帯を構成する蛇紋岩,玄武岩(蛇紋岩中の岩塊)などのオフィオライト様岩類のほか,保田層群や荒島層の堆積岩類が,共に剪断変形作用を受けて混合し粘土化したものと見ることができる.このような軟弱な粘土層の存在は,この剪断破砕作用が比較的新しい時代にも進行していることを示すと考えられる.
本粘土層と同様な産状の粘土層は,海岸部から900mほど内陸に位置する国道128号線の嶺岡トンネル掘削工事中にも観察されており(鈴木ほか,1974),本粘土層が嶺岡帯内に広く分布する可能性を示している.そして,本地帯全体における地すべりの発生要因にもなっていることが想定される.また,類似した軟弱粘土層(断層ガウジ)は,嶺岡帯の延長部である三浦半島葉山帯の活断層の1つである北武断層沿いでも観察されており(浅見ほか,1992;柴田・蟹江, 2016),嶺岡帯を構成する粘土層も,活構造の産物の可能性が示唆される.以上の点を踏まえると,プレート三重点近傍に位置する三浦半島及び房総半島南部では,2つの海洋プレートの沈み込みの影響を受けて,かつて付加したオフィオライト様岩類を含む地質体が現在でも活動中であることが想像される.
[引用文献]
浅見茂雄ほか,1992,横須賀市博研報,40,21–23.
柴田健一郎・蟹江康光,2016,横須賀市博研報,63, 9–15.
鈴木 守ほか,1974,応用地質,15,1-13.
高橋直樹ほか,2012,神奈川博調査研報(自然),14,25-56.
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