Presentation Information
[T1-P-17]Paleostress inversion and constraints on the formation age of faults in the Eastern Outer Zone of the Kii Peninsula
*Koshi KIMURA1, Tetsuya TOKIWA1, Kojiro USUI2, Hiroshi MORI1 (1. Shinshu University, 2. Nippon Koei Co., Ltd.)
Keywords:
Kii Peninsula,Fault slip data,Stress tensor inversion,Paleostress,Sinistral strike-slip fault
西南日本外帯には,三波川帯,秩父帯,四万十帯が広く分布する.近年,紀伊半島中央部では,三波川帯の内部構造や地質帯の境界などの地質構造を切断するような北東-南西走向の断層群が報告されている(竹内ほか,2025).しかし,本断層群の広域分布や変位等の詳細は明らかでなく,形成時期や古応力場に関する検討はされていない.そこで本研究では,紀伊半島東部に発達する地質構造の把握と,断層スリップデータに基づく応力逆解析を行い,断層群が形成された古応力場とその形成時期の制約を議論した.
研究地域の北端には中央構造線が分布し,その南側には三波川-四万十変成付加コンプレックスおよび秩父付加コンプレックスが分布する.片理面や層理面の走向は西北西-東南東方向が主体であり,傾斜は北傾斜が卓越し,北から南へ向かって高角度から低角度へと変化する.また,三波川-四万十変成付加コンプレックスには,Wallis (1990) のDs, Dt, Duに該当する主片理面や露頭スケールの褶曲が発達し,北部では,主片理面を曲げる東西走向・直立軸のDuアンチフォームが研究地域を横断するようにして発達している(e.g., Fukunari & Wallis, 2007).
研究地域には,上述した構造や,コンプレックス内の各ユニット境界など,すべての地質構造を高角度で切断する北東-南西走向で左横ずれが卓越する断層群が発達する.48条の断層スリップデータにHough法(Sato, 2006; Yamaji et al., 2006)を適用した結果,σ1が187/13(trend/plunge),σ3が278/3を示す横ずれ断層型の応力場が得られた.また,42条の断層がミスフィット角30°以内を示すことから,これらは同一応力場で形成されたと考えられる.隣接する西側の地域にも同様の北東-南西走向の左横ずれ断層群が報告されており(竹内ほか,2025),紀伊半島東部~中央部に同一断層系が広く発達すると考えられる.
これらの断層群は,イザナギプレートの左斜め沈み込みが太平洋プレートの直交する沈み込みに遷移し,圧縮応力場に変化したことで形成されたとされるDu変形による褶曲(Aoya, 2022)をはじめとするすべての地質構造を切断し,中期中新世(約15 Ma)に貫入したとされる岩脈群には変位を与えていない.したがって断層群の形成時期は太平洋プレートの沈み込み開始から約15 Maの間に制約される.
より詳細な形成時期を推定するため,応力場とテクトニクスとの関係を比較した.この比較を行うにあたって,約18~16 Maに生じた日本海拡大に伴う西南日本弧の時計回りの回転(41.7±5.4°:Otofuji et al., 1985; 星,2018)を補正したところ,断層群の形成当時のσHmaxの方向は145.3±5.4°,もしくは325.3±5.4°(北西-南東方向)となる.プレート運動の復元モデルでは,約55 Maに沈み込むプレートがイザナギプレートから太平洋プレートへ切り替わる(Zahirovic et al., 2022).また,太平洋プレートがユーラシアプレートに沈み込む方位角は,約55~52 Maで約280~300°(西北西方向),約52~48 Maで約300~310°(北西方向),約48~15 Maで約300~260°(西北西~西方向)へと推移する.加えて,海溝に対する沈み込み方向は,55 Ma以降から15 Maの間では52~49 Maのみ左斜め沈み込みを示す(Wu et al., 2024).この期間における沈み込む方位角が,断層群の形成時期として予測される期間のプレート運動の中で,補正されたσHmaxに最も近い値を示し,沈み込む方向は断層群に左横ずれが卓越することと整合的である.したがって,本断層群は,約52~49 Maの太平洋プレートの左斜め沈み込みに伴って形成された可能性が示唆される.
引用文献:Aoya, 2022, Island Arc, 31, e12463; Fukunari & Wallis, 2007, Island Arc, 16, 243–261; 星 博幸,2018,地質学雑誌, 124, 675-691; Otofuji et al., 1985, Earth Planet. Sci. Lett., 75, 265–77; Sato, K., 2006, Tectonophysics, 421, 319–330; 竹内ほか, 2025, 産総研地質調査総合センター,118p; Wallis, 1990, Jour. Geol. Soc. Japan, 96, 345–352; Wu et al., 2024, Elements, 20, 103–109; Yamaji et al., 2006, Jour. Struct. Geol., 28, 980–990; Zahirovic et al., 2022, Geosci. Data Jour., 9, 371–383.
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