Presentation Information
[T3-P-1]Development of a viscous shear zone composed of chlorite–amphibole schist along the slab–mantle interface
*Kotaro KUBOTA1, Ken-ichi HIRAUCHI1, Thomas YEO2 (1. Shizuoka University, 2. University of Tsukuba)
Keywords:
Chlorite–amphibole schist (CAS),Deformation mechanisms,Metasomatism,Subduction zone,Rheology
沈み込み帯浅部スラブ-マントル境界域では,安定すべりやスロースリップに代表される深部スロー地震が観測されている.この境界域では,マントルウェッジ起源の蛇紋岩と沈み込んだ海洋地殻起源の岩石がテクトニック的に混合し,メランジュが形成される場合がある.先行研究により,メランジュ中には緑泥石-角閃石(アクチノ閃石)片岩(chlorite-amphibole (actinolite) schist; CAS)からなる粘性剪断帯が発達することが報告されており,CASがスラブ–マントル境界域のレオロジー特性を支配している可能性が示唆されている(Nishiyama et al., 2023; Yamasaki et al., 2026).CASは蛇紋岩と様々な種類の岩石との間の交代作用によって形成されることが知られている(Nishiyama et al., 2023; Hoover et al., 2022; Cenki et al., 2025).また,Nishiyama et al. (2023)は,CAS中の細粒アクチノ閃石に卓越する溶解-析出クリープが粘性剪断帯として機能するために重要であると結論付けている.また,同研究では細粒アクチノ閃石は交代作用によって形成されたと解釈されている.しかし,Ca角閃石の粒径減少は,転位クリープとも関連することが知られており(Cao et al., 2010),細粒化プロセスは未だ十分に解明されていない.
本研究では,交代・変形作用に伴うCASからなる粘性剪断帯の発達過程を明らかにするために,野母半島長崎変成岩類に分布するCASの構造岩石学的・地球化学分析を行った.CASは蛇紋岩体に隣接する交代作用を受けた塩基性岩中に発達した片理に沿って,厚さ数 cmの剪断帯として産する.CASは主に,粗粒なCa角閃石(Tremolite)および細粒緑泥石集合体からなるレンズ状部と,それを取り囲むように形態定向配列した細粒な針状Ca角閃石(Tremolite)からなるマトリックス部で構成される.緑泥石集合体内にはFeクロマイトが確認された.このことは,CASの主要な原岩は蛇紋岩であったことを示唆する.
角閃石は幅広い粒径を示し,粗粒粒子(長軸長さ50 μm~4 mm)は,粒子長軸とCASの線構造の幾何学関係に基づいて2種類(TypeⅠ,TypeⅡ)に区別される.TypeⅠ粗粒粒子では [001]軸が線構造に対して非平行に配向し,{110}劈開面に沿った顕著な脆性破壊が認められる.一方で,TypeⅡ粗粒粒子では [001]軸が線構造に対して平行に配向し,大きな粒内方位差や粒子長軸に平行および垂直な2方向の亜粒界,強い結晶方位定向配列(CPO),高頻度な低角粒界の存在など,転位クリープの卓越を示唆する微細構造が認められる.また,TypeⅡ粗粒粒子の縁辺部には,粒子長軸とほぼ平行に配列する針状細粒粒子群が産する.これらの特徴は,細粒粒子が主としてTypeⅡ粗粒粒子の亜粒界回転を伴う動的再結晶によって形成されたことを示唆する.一方,細粒粒子(長軸長さ<50 μm)は,粒内方位差が小さいことに加え,粒子長軸に沿った Alのゾーニングおよびそのトランケーション構造を示し,溶解–析出クリープの卓越を示唆する.さらに角閃石の主要元素組成分析の結果,粗粒粒子は高いCr含有量(<0.05 apfu)を示すのに対し,細粒粒子はの低いCr含有量(<0.01 apfu)を示した.このことから,粗粒粒子は原岩である蛇紋岩のCrに富む特徴を保持する一方,細粒粒子は溶解–析出クリープが働くことにより流体を介してCrが外部に放出されたことが示唆される.
以上の結果は,CASからなる粘性剪断帯が,蛇紋岩の交代作用によって形成された粗角閃石粒子において転位クリープおよび動的再結晶が進行し,細粒角閃石粒子が形成された後,溶解–析出クリープが活性化することで発達したことを示している.本研究は,CASからなる粘性剪断帯の発達が,交代・変形作用の複合プロセスによって進行することを結論付ける.
引用文献:Nishiyama et al. (2023), Lithos, 446-447, 107115. Yamasaki et al. (2026), Journal of Structural Geology, 209, 105735. Hoover et al. (2022), Geophysical Research Letters, 49, e2022GL101083. Cenki et al. (2025), Earth Sciences Bulletin, 2025, 196, 10. Cao et al. (2010), Journal of Structural Geology, 32, 606-622.
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