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[T3-P-5]Selective heat and fluid focusing into ultramafic rocks during high-temperature dehydration: Evidence from a contact metamorphic aureole★2026年度学生優秀発表賞受賞★

*Kaho NOBUAHRA1, Hiroshi MORI1, Yurie TSUKISHIMA1, Takayoshi NAGAYA2, Ken YAMAOKA3, Koichiro FUJIMOTO4, Takafumi SHINYA1, Yuho HAYAKAWA5, Tetsuya TOKIWA1 (1. Shinshu University, 2. Waseda University, 3. GSJ, AIST, 4. Tokyo Gakugei University, 5. Chuo Kaihatsu Corporation)
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【ハイライト講演】  沈み込み帯深部における超苦鉄質岩の脱水反応は,流体・熱・物質輸送を支配する重要なプロセスであるが脱水時の構造が保存された天然の例は稀である.本研究では,接触変成帯を天然の加熱実験場とみなし,稠密な鉱物・化学・密度分析から,脱水反応に伴って熱と流体が集中する稀有な描像が捉えられている. ※ハイライト講演とは...

Keywords:

subduction zone,ultramafic rocks,Sanbagawa metamorphic belt,contact metamorphism,metamorphic reaction,mass transfer,fluid,heat advection


 超苦鉄質岩類の脱水反応に伴う流体挙動は,沈み込み帯深部の熱・物質輸送の主要因であり,沈み込み帯の水循環や地震活動をはじめとした諸現象の理解に重要である.高圧変成帯に分布する超苦鉄質岩類は,これら挙動追跡に有用であるが,上昇時に後退変成作用を強く被っており,脱水反応時の流体挙動の直接復元することは困難である.そこで本研究では,接触変成作用を受けた高圧変成帯の超苦鉄質岩類を「天然の加熱実験室」とみなし,脱水反応に伴う流体挙動と,それに伴う物理・化学的特性の変化を検討した.
研究地域である赤石山地北部・三波川帯には,泥質片岩に挟まれて超苦鉄質岩類が北北東―南南西方向に分布し,調査地域北端では,木舟深成岩体の貫入に伴い周囲の岩石は接触変成作用を被っている.本研究では,貫入岩体から約10 kmの範囲内に分布する超苦鉄質岩を対象に,XRD分析に基づく全岩鉱物量比および含水量,XRF分析による全岩化学組成,および密度測定を行い,貫入岩体からの距離に伴う空間変化を検討した.また周辺岩相との相互作用を検討するために,周囲に分布する泥質岩についてもXRF分析と密度測定を実施した.
研究地域に分布する超苦鉄質岩類は,鉱物組み合わせの空間変化に基づき,貫入岩体から離れた地域から順にLizardite (Liz) zone, Antigorite (Atg) zone, Olivine + Talc (Ol + Tlc) zone, Ca-amphibole (Ca-amp) zoneに区分される.Liz zoneは低温蛇紋岩化作用のみを受けた一方で,Atg~Ca-amp zoneは接触変成作用を被り,各zoneの温度条件は,Liz zoneが350 ºC以下,Atg zoneが350~500 ºC,Ol + Tlc zoneが500 ºC以上,Ca-amp zoneが700 ºC以上に制約される1.Ol + Tlc~Ca-amp zoneではカンラン石脈,Ca-amp zoneではパッチ状に産する斜長石や,Mg普通角閃石のリムをパーガス閃石が置換した組織が認められる.XRD分析に基づく全岩鉱物量比は,Ca-amp zoneにおけるCa含有鉱物の出現と,含水量の約75%に及ぶ急激な低下を示した.XRF分析では同zoneにおいてCaO,Al2O3,Na2Oの増加と共にMgOの減少が認められた.また,密度についてはCa-amp zoneで約14%の顕著な増加を示すと共に,密度と含水量の間には明瞭な負の相関関係が認められた.超苦鉄質岩類では上述の一連の系統的な変化が認められた一方で,泥質岩では全岩化学組成および密度ともに貫入岩体からの距離に伴う顕著な空間的変化は認められなかった.
Ca-amp zoneにおける超苦鉄質岩類の全岩鉱物量比・全岩化学組成の変化は,カンラン石脈とパーガス閃石の置換組織の存在とあわせて,脱水流体の放出および外部起源流体の流入に伴う物質移動を示唆する.これに対し泥質岩では顕著な変化が認められないことから,流体流入・放出は超苦鉄質岩に選択的に集中した可能性がある.さらに,超苦鉄質岩類から推定される温度条件は,泥質岩の炭質物ラマン温度および熱伝導モデリングから推測される温度よりも著しく高く,超苦鉄岩類では熱伝導に加えて流体を介した熱移流が作用した可能性を示す1, 2.したがって,本地域の超苦鉄質岩類は,周辺岩相に比べて熱・流体の集中場として機能したことが考えられる.
また,超苦鉄質岩類の密度および含水量の高い相関関係に着目すると,両者が大きく変化するOl + Tlc zoneからCa-amp zoneへの遷移では,緑泥石とタルクが消失し,両者の系統的な変化は,約700 ºCの高温条件で進行した緑泥石・滑石の脱水分解が寄与した可能性が高い.以上より,本地域の超苦鉄質岩類では,約700 ºCにおける高温脱水反応に伴って,全岩鉱物量比・含水量・全岩化学組成・密度が顕著に変化し,その過程で流体・熱輸送が選択的に促進されたと考えられる.
本研究では,高温脱水反応を経験した超苦鉄質岩類が,周辺岩相に比べて熱および流体の選択的な輸送経路となり得ることを示す.接触変成帯で得られた脱水反応および熱・流体集中の知見は,今後,沈み込み帯における流体移動や熱輸送の理論モデルを解釈する上で重要な制約を与えることが期待される.

[引用文献]
1Nobuhara et al. (2026), JMPS, 121, 250516
2Mori et al. (2025), Tectonophysics, 907, 230759

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