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[T3-P-11]Mineral Distribution and Estimated Frictional Heating Temperature of the Latest Slip Zone of the Neodani Fault
*Tsuyoshi MAEDA1, Tomoyuki OHTANI2 (1. Graduate School of Natural Science and Technology, Gifu University, 2. Department of Civil Engineering, Gifu University)
Keywords:
Fault,Fault gouge,Magnetic susceptibility,SEM,Magnetic minerals
これまで断層浅部は大きなひずみエネルギーを蓄えることができないと考えられ,重要視されてこなかった.しかし,2011年東北地方太平洋沖地震では,断層浅部ほど変位量が増加し,海溝軸で65 mの変位があったと推定されている1.また,2016年熊本地震では断層直上(地表地震断層から約100 m以内)で建物の全壊率が高い値を示している2.これらは断層浅部の挙動が断層活動に少なからず影響を及ぼしている可能性を示しており,その解明が望まれる.断層活動に伴う摩擦発熱は断層内部で進行する物理化学的過程を支配する最も重要な要因であると考えられている3.そのため,断層浅部における挙動を理解する上で,摩擦発熱の程度を把握することが重要である.断層のすべり面では,摩擦発熱による磁性鉱物の生成が報告されており4,すべり面およびその周辺における磁性鉱物の分布を明らかにすることは,断層活動時の摩擦発熱の影響を検討する上で有効である.そこで本研究は,1891年濃尾地震において大きな地表変位を生じた根尾谷断層において,最新すべり面やその周辺における磁性鉱物の分布や産状を明らかにし,発熱温度を推定することを目的とする.
研究対象は根尾谷断層のボーリングコアである.ボーリング掘削は原子力規制庁により岐阜県本巣市の根尾長嶺と根尾水鳥で行われた.根尾長嶺で掘削されたR3NDFD-1は鉛直深度64 mで最新すべり面を貫通している.根尾水鳥で掘削されたNDFD-1は鉛直深度382 mで最新すべり面を貫通している.これらの試料から最新すべり面を含むように岩石薄片を作成し,主にSEM観察とSEM-EDS分析を行った.
R3NDFD-1の深度64 mでは,最新すべり面の帯磁率が周囲の断層ガウジと比較して局所的に高い値を示す.高帯磁率を示す領域のSEM観察の結果,主に硫化鉄を主とする鉱物,セルシアン(重土長石),放射状のバライト,菱鉄鉱が認められる.また,最新すべり面から5-10 mm程度の領域(以下,ガウジA)で硫化鉄を主とする鉱物が多く分布している.EDS分析ではこれが常磁性鉱物である黄鉄鉱か磁性鉱物である磁硫鉄鉱(pyrrhotite)か判断できないものの,最新すべり面が高い帯磁率を示すことから磁硫鉄鉱である可能性が考えられる.また,ガウジAより最新すべり面から離れた領域(以下,ガウジB)はガウジAと色調が同じであるが,組成を比較すると前者でBaが多く,後者でKが多く含まれている.
NDFD-1の深度382 mでは,最新すべり面およびその周辺の帯磁率が高く,その中でも帯磁率が高い領域と低い領域がある.両者のSEM観察の結果,いずれにおいても酸化鉄を主とする鉱物,長石,輝石が分布している.これらと最新すべり面以外の断層ガウジを対象として,酸化鉄を主とする鉱物の数,面積率,粒径を比較すると,数と面積率は高帯磁率最新すべり面,低帯磁率最新すべり面,最新すべり面以外の断層ガウジの順で多く,粒径には差が見られない.また,比較を行った領域の組成は一致している.
黄鉄鉱は還元的環境かつ>500℃で磁硫鉄鉱に変化することが知られている4.よってR3NDFD-1の深度64 mのガウジAでは,断層活動時に摩擦発熱により>500℃となり,磁硫鉄鉱が生成された可能性がある.一方で,断層活動の摩擦発熱による温度上昇を計算5したところ,330 Kの温度上昇が推定され,500℃には到達しない可能性がある.他にも, >250℃でスメクタイトなどの粘土鉱物から磁鉄鉱が新たに生成される4ことが分かっており,これによって生成された磁鉄鉱が還元され磁硫鉄鉱に変化した可能性も考えられる.この深度でみられるバライトは粒子の隙間を埋めるような放射状をしており,溶解・再沈殿によって形成されたと考えられる.バリウムが溶解するのは還元的な環境であるため,この深度で磁鉄鉱が還元されて磁硫鉄鉱になった可能性がある.一方で,ガウジAとガウジBの組成が異なっていることから,断層活動によって地下水が流入した可能性や,他の断層ガウジと混ざった可能性もあり,摩擦発熱による磁性鉱物の生成と断定できない.
NDFD-1の深度382 mでは,最新すべり面内で酸化鉄を主とする鉱物の数と面積率が高く,最新すべり面内外で断層ガウジの組成が一致することから,濃尾地震によって酸化鉄が生成された可能性が高い.また,断層活動の摩擦発熱により400Kの温度上昇が推定され,前述の>250℃で粘土鉱物から磁鉄鉱が生成される現象が生じたと考えられる.
参考文献 1Sun et al. (2017) Nature Comm., 8, 14044. 2久田ほか (2020) 日本地震工学会論文集, 20, 90-132. 3Yang et al. (2019) J. Geophys. Res. Solid Earth, 124, 26-43. 4Yang et al. (2020) Rev. Geophys., 58, e2019RG000690. 5Hirono et al. (2007) Geophys. Res. Let., 34, L19308.
研究対象は根尾谷断層のボーリングコアである.ボーリング掘削は原子力規制庁により岐阜県本巣市の根尾長嶺と根尾水鳥で行われた.根尾長嶺で掘削されたR3NDFD-1は鉛直深度64 mで最新すべり面を貫通している.根尾水鳥で掘削されたNDFD-1は鉛直深度382 mで最新すべり面を貫通している.これらの試料から最新すべり面を含むように岩石薄片を作成し,主にSEM観察とSEM-EDS分析を行った.
R3NDFD-1の深度64 mでは,最新すべり面の帯磁率が周囲の断層ガウジと比較して局所的に高い値を示す.高帯磁率を示す領域のSEM観察の結果,主に硫化鉄を主とする鉱物,セルシアン(重土長石),放射状のバライト,菱鉄鉱が認められる.また,最新すべり面から5-10 mm程度の領域(以下,ガウジA)で硫化鉄を主とする鉱物が多く分布している.EDS分析ではこれが常磁性鉱物である黄鉄鉱か磁性鉱物である磁硫鉄鉱(pyrrhotite)か判断できないものの,最新すべり面が高い帯磁率を示すことから磁硫鉄鉱である可能性が考えられる.また,ガウジAより最新すべり面から離れた領域(以下,ガウジB)はガウジAと色調が同じであるが,組成を比較すると前者でBaが多く,後者でKが多く含まれている.
NDFD-1の深度382 mでは,最新すべり面およびその周辺の帯磁率が高く,その中でも帯磁率が高い領域と低い領域がある.両者のSEM観察の結果,いずれにおいても酸化鉄を主とする鉱物,長石,輝石が分布している.これらと最新すべり面以外の断層ガウジを対象として,酸化鉄を主とする鉱物の数,面積率,粒径を比較すると,数と面積率は高帯磁率最新すべり面,低帯磁率最新すべり面,最新すべり面以外の断層ガウジの順で多く,粒径には差が見られない.また,比較を行った領域の組成は一致している.
黄鉄鉱は還元的環境かつ>500℃で磁硫鉄鉱に変化することが知られている4.よってR3NDFD-1の深度64 mのガウジAでは,断層活動時に摩擦発熱により>500℃となり,磁硫鉄鉱が生成された可能性がある.一方で,断層活動の摩擦発熱による温度上昇を計算5したところ,330 Kの温度上昇が推定され,500℃には到達しない可能性がある.他にも, >250℃でスメクタイトなどの粘土鉱物から磁鉄鉱が新たに生成される4ことが分かっており,これによって生成された磁鉄鉱が還元され磁硫鉄鉱に変化した可能性も考えられる.この深度でみられるバライトは粒子の隙間を埋めるような放射状をしており,溶解・再沈殿によって形成されたと考えられる.バリウムが溶解するのは還元的な環境であるため,この深度で磁鉄鉱が還元されて磁硫鉄鉱になった可能性がある.一方で,ガウジAとガウジBの組成が異なっていることから,断層活動によって地下水が流入した可能性や,他の断層ガウジと混ざった可能性もあり,摩擦発熱による磁性鉱物の生成と断定できない.
NDFD-1の深度382 mでは,最新すべり面内で酸化鉄を主とする鉱物の数と面積率が高く,最新すべり面内外で断層ガウジの組成が一致することから,濃尾地震によって酸化鉄が生成された可能性が高い.また,断層活動の摩擦発熱により400Kの温度上昇が推定され,前述の>250℃で粘土鉱物から磁鉄鉱が生成される現象が生じたと考えられる.
参考文献 1Sun et al. (2017) Nature Comm., 8, 14044. 2久田ほか (2020) 日本地震工学会論文集, 20, 90-132. 3Yang et al. (2019) J. Geophys. Res. Solid Earth, 124, 26-43. 4Yang et al. (2020) Rev. Geophys., 58, e2019RG000690. 5Hirono et al. (2007) Geophys. Res. Let., 34, L19308.
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