Presentation Information
[T3-O-18]Frictional Properties of Carbonate Fault Mirrors and Their Mechanical Role in the Earthquake Cycle
*Takehiro Hirose1, Uhmb Tae-Hoon, Yohan Park (1. Kochi Institute for Core Sample Research, JAMSTEC)
Keywords:
Fault Mirror,Earthuake,Friction
【はじめに】
断層に沿って鏡肌が普遍的に観察される。特に、炭酸塩を含む断層には、ナノ粒子からなる平滑で強い光沢を示す鏡肌が広く認められ、地震時の高速すべり運動の痕跡と考えられてきた(例えば、Siman-Tov et al., 2013)。一方、室内実験によって鏡肌を再現する試みも進められており、様々な垂直応力とすべり速度条件下で鏡肌が形成されることが明らかになってきた(例えば、Fondriest et al., 2013; Verberne et al., 2014)。しかし、鏡肌の形成条件や微細組織、形成メカニズムについては多くの研究がなされてきたが、鏡肌そのものの摩擦特性については未解明な点が多い。そこで本研究では、カララ大理石を用いた摩擦実験により鏡肌を再現し、その摩擦ヒーリング特性と摩擦の速度依存性を統合的に評価することで、炭酸塩断層鏡肌の地震サイクルにおける力学的役割を検討した。
【実験手法】
実験には回転式低〜高速摩擦試験機を用い、カララ大理石円柱試料から①Pre-sheared Bare Rock with cataclastic gouge(BR)、②Fault Mirror(FM)、および低速すべりによりFMを破壊した③Crushed Fault Mirror(CF)の3つの試料を作成して、それぞれの摩擦特性を調べた。摩擦ヒーリング特性は、垂直応力1 MPa、すべり速度1 µm/s、保持時間3〜6760 sのSlide-Hold-Slide (SHS) 実験により調べた。また、摩擦速度依存性(摩擦則)は、垂直応力2 MPaの条件で10–100 µm/sのVelocity-Step (VS) 実験を行い、Rate & State(RS)摩擦パラメーターa、b、a–bおよび臨界すべり距離Dcを推定した。実験後の試料はSEM/TEM観察により微細組織を解析した。
【実験結果】
SHS実験では、BRおよびCFが保持時間とともに静摩擦強度を増加させるDietrich型の摩擦ヒーリングを示したのに対し、鏡肌(FM)のヒーリング率βは9.27×10^-4と、BR(4.55×10^-3)およびCF(8.06×10^-3)より約1桁小さかった(Park et al., 2021)。VS実験では、BR、CFはいずれも典型的な速度強化挙動を示し、bは正、a–bは平均0.003であった。一方、鏡肌(FM)は特徴的にbが負となり、a–bはすべりの進行に伴って約0.02から、CFのa-b値である約0.003に徐々に減少した。また、鏡肌(FM)のDcは平均約50 µmであり、BRおよびCFより数倍大きかった。微細組織観察では、鏡肌(FM)が低空隙率の緻密な焼結ナノ粒子層からなるのに対し、CFではその層が角礫化し、より多孔質なガウジへ変化することが確認された。
【考察・議論】
炭酸塩断層の鏡肌は、ヒーリング率が著しく小さく、断層すべり停止後の摩擦強度の回復が強く抑制されることがわかった(Park et al., 2021)。ヒーリングの抑制は、鏡肌を構成する焼結ナノ粒子層の低空隙率・高凝集性により、真実接触面積が増大し、接触域の時間依存成長が阻害されるためと解釈される。さらに、長い保持時間においては、静止保持中のヒーリング率 β と RS摩擦則におけるb値 は同じ接触時間依存過程を反映しており、β ≒ b と考えられる。したがって、βが著しく小さいSHS実験の結果は、鏡肌が速度強化的(a–b > 0)な性質を有することを示唆する。実際にVS実験からもこの解釈は裏付けられ、鏡肌は強い速度強化挙動を示す一方で、すべりに伴って鏡肌構造が破壊されると、ヒーリング能力が回復し、a–b値は徐々に小さくなることが明らかになった。
このように、炭酸塩鏡肌の摩擦特性は、すべりに伴う微細組織変化によって大きく変化する。地震時に形成された鏡肌は、摩擦強度を回復しにくく、かつ大きな正のa-bを示すことから、地震間欠期には非地震性のゆっくりとしたすべり挙動が期待される。しかし、そのすべりに伴い鏡肌が破壊されはじめると、強度回復能力が再び現れ、a-b値およびDcが小さくなることで、地震を引き起こすポテンシャルを有するようになる可能性がある。いったん地震が発生して高速すべりに至ると、再び鏡肌が形成される。このような鏡肌の形成・破壊に伴う摩擦特性の変化が、地震発生帯における地震性すべりと非地震性すべり挙動を支配しているのかもしれない。今後は、このような鏡肌の形成・破壊に伴う摩擦挙動の変化を、震源域に相当する熱水環境下で、地殻を構成する多様な岩石を用いて検証していく必要がある。
文献:Fondriest et al. (2013) Geology, 41(11); Park et al. (2021) GRL, 48; Siman-Tov et al. (2013) Geology, 41(6); Verberne et al., (2014) Science, 346(6215)
断層に沿って鏡肌が普遍的に観察される。特に、炭酸塩を含む断層には、ナノ粒子からなる平滑で強い光沢を示す鏡肌が広く認められ、地震時の高速すべり運動の痕跡と考えられてきた(例えば、Siman-Tov et al., 2013)。一方、室内実験によって鏡肌を再現する試みも進められており、様々な垂直応力とすべり速度条件下で鏡肌が形成されることが明らかになってきた(例えば、Fondriest et al., 2013; Verberne et al., 2014)。しかし、鏡肌の形成条件や微細組織、形成メカニズムについては多くの研究がなされてきたが、鏡肌そのものの摩擦特性については未解明な点が多い。そこで本研究では、カララ大理石を用いた摩擦実験により鏡肌を再現し、その摩擦ヒーリング特性と摩擦の速度依存性を統合的に評価することで、炭酸塩断層鏡肌の地震サイクルにおける力学的役割を検討した。
【実験手法】
実験には回転式低〜高速摩擦試験機を用い、カララ大理石円柱試料から①Pre-sheared Bare Rock with cataclastic gouge(BR)、②Fault Mirror(FM)、および低速すべりによりFMを破壊した③Crushed Fault Mirror(CF)の3つの試料を作成して、それぞれの摩擦特性を調べた。摩擦ヒーリング特性は、垂直応力1 MPa、すべり速度1 µm/s、保持時間3〜6760 sのSlide-Hold-Slide (SHS) 実験により調べた。また、摩擦速度依存性(摩擦則)は、垂直応力2 MPaの条件で10–100 µm/sのVelocity-Step (VS) 実験を行い、Rate & State(RS)摩擦パラメーターa、b、a–bおよび臨界すべり距離Dcを推定した。実験後の試料はSEM/TEM観察により微細組織を解析した。
【実験結果】
SHS実験では、BRおよびCFが保持時間とともに静摩擦強度を増加させるDietrich型の摩擦ヒーリングを示したのに対し、鏡肌(FM)のヒーリング率βは9.27×10^-4と、BR(4.55×10^-3)およびCF(8.06×10^-3)より約1桁小さかった(Park et al., 2021)。VS実験では、BR、CFはいずれも典型的な速度強化挙動を示し、bは正、a–bは平均0.003であった。一方、鏡肌(FM)は特徴的にbが負となり、a–bはすべりの進行に伴って約0.02から、CFのa-b値である約0.003に徐々に減少した。また、鏡肌(FM)のDcは平均約50 µmであり、BRおよびCFより数倍大きかった。微細組織観察では、鏡肌(FM)が低空隙率の緻密な焼結ナノ粒子層からなるのに対し、CFではその層が角礫化し、より多孔質なガウジへ変化することが確認された。
【考察・議論】
炭酸塩断層の鏡肌は、ヒーリング率が著しく小さく、断層すべり停止後の摩擦強度の回復が強く抑制されることがわかった(Park et al., 2021)。ヒーリングの抑制は、鏡肌を構成する焼結ナノ粒子層の低空隙率・高凝集性により、真実接触面積が増大し、接触域の時間依存成長が阻害されるためと解釈される。さらに、長い保持時間においては、静止保持中のヒーリング率 β と RS摩擦則におけるb値 は同じ接触時間依存過程を反映しており、β ≒ b と考えられる。したがって、βが著しく小さいSHS実験の結果は、鏡肌が速度強化的(a–b > 0)な性質を有することを示唆する。実際にVS実験からもこの解釈は裏付けられ、鏡肌は強い速度強化挙動を示す一方で、すべりに伴って鏡肌構造が破壊されると、ヒーリング能力が回復し、a–b値は徐々に小さくなることが明らかになった。
このように、炭酸塩鏡肌の摩擦特性は、すべりに伴う微細組織変化によって大きく変化する。地震時に形成された鏡肌は、摩擦強度を回復しにくく、かつ大きな正のa-bを示すことから、地震間欠期には非地震性のゆっくりとしたすべり挙動が期待される。しかし、そのすべりに伴い鏡肌が破壊されはじめると、強度回復能力が再び現れ、a-b値およびDcが小さくなることで、地震を引き起こすポテンシャルを有するようになる可能性がある。いったん地震が発生して高速すべりに至ると、再び鏡肌が形成される。このような鏡肌の形成・破壊に伴う摩擦特性の変化が、地震発生帯における地震性すべりと非地震性すべり挙動を支配しているのかもしれない。今後は、このような鏡肌の形成・破壊に伴う摩擦挙動の変化を、震源域に相当する熱水環境下で、地殻を構成する多様な岩石を用いて検証していく必要がある。
文献:Fondriest et al. (2013) Geology, 41(11); Park et al. (2021) GRL, 48; Siman-Tov et al. (2013) Geology, 41(6); Verberne et al., (2014) Science, 346(6215)
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