Presentation Information
[T3-O-24]Carbon and oxygen isotopes of calcite veins record repeated fault sealing by high-temperature fluids in western Tottori Prefecture, Japan
*Kiyokazu OOHASHI1, Hirokazu KATO2, Yusuke MIYAJIMA1, Kenta KOBAYASHI3 (1. National Institute of Advanced Industrial Science and Technology (AIST), 2. Teikyo University of Science, 3. Niigata University)
【ハイライト講演】断層帯には鉱物脈によるシーリングが普遍的に観察されるが,鉱物脈を形成した流体の起源や温度,その駆動力まで明らかにした例はほとんど無い.本研究では,鳥取県西部の断層岩に残されたカルサイト脈を同位体分析することで,周囲よりも数百度も高温の流体が断層帯に沿って上昇し,地震後の断層を繰り返しシールした可能性を示す. ※ハイライト講演とは...
Keywords:
Cataclasite,Geofluid,Mineral vein,Clumped isotope,Carbon and oxygen isotope,K-Ar dating,U-Pb dating
地震前〜地震後の断層の強度は,震源核形成や動的破壊伝播,その後の余効すべりなどの力学的な挙動を決定する重要なパラメータである.その推定には,固結した断層岩の微細組織解析と物質解析を通して地震サイクル間に生じた物理・化学過程を明らかにし,変形を担う鉱物やその変形様式,流体の影響,地震後の固着プロセス等を明らかにする必要がある.本研究では,鳥取県西部地域の白亜紀花崗岩中に発達するカタクレーサイトから,破壊と固着の繰り返しとそこで起こる物理・化学過程を解読することを目的としている.本発表では,特にカタクレーサイト中に認められるカルサイトの組織解析・年代測定・化学分析から,断層を通過した流体の起源・時期・環境を特定し,地震活動との関連性を明らかにすることを目的とする.
2000年鳥取県西部地震(Mj7.3)で地表変状が生じた鳥取県西伯郡南部町の緑水湖西側には,花崗岩に貫入する岩脈(玄武岩・流紋岩)の縁に幅2 m程度のカタクレーサイトを伴う断層帯が露出する(鈴木ほか, 2016).カタクレーサイトは等粒状の粗いポリゴナル組織を呈すカルサイト脈を特徴的に伴い,地震に伴って開口した断層面において,外部由来の流体から急速に析出したものと解釈できる(大橋, 2024; 大橋・小林, 2025).また,脈形成と剪断の繰り返しから,少なくとも3回の地震性の破壊・すべりとカルサイトによるシーリングが繰り返したことが明らかとなっている.本研究では,鉱物脈のXRD分析,カルサイトの炭素・酸素同位体比測定および炭酸凝集同位体温度計の適用,カタクレーサイトに含まれる熱水変質鉱物(イライト)および近傍の岩脈の年代測定を実施した.炭酸凝集同位体温度計は,炭酸塩を構成する炭素原子と酸素原子の重い同位体の組み合わせの確率分布からのずれ(Δ47値)が形成温度と負の相関を持つことを利用した温度計(Ryb et al., 2017)であり,炭酸塩鉱物が流体から析出した時の温度を推定することができる.
分析の結果,断層帯中のカルサイトは約100〜300℃の温度で析出したことが明らかとなった.またXRD分析から,高温を示すものほど石英と共存することも分かった.約300℃を示したカルサイト(2試料)は主断層面に分布するが,断層帯に隣接する岩脈の距離と炭酸凝集同位体温度に相関は認められない.さらに,カルサイトから推定した水の酸素同位体比(δ18OVSMOW)は–6〜+7‰の幅広い値を示し,マグマ水/有馬型塩水と天水の混合で説明可能である.カタクレーサイト中のイライトのK-Ar年代は約26〜28 Ma(暫定値)を示し,岩脈の年代(玄武岩中の斜長石のK-Ar年代:23.40±0.63 Ma,流紋岩中のジルコンのU-Pb年代:19.3±0.2 Ma)とは有意に異なる.島根県東部の花崗岩類の冷却史(大平ほか, 2006)から,本地域は20 Ma台後半には80〜100℃程度の温度環境であったと考えられる.すなわち,カルサイトは温度80〜100℃,深度2.6〜3.4 km(地表温度を15℃,地温勾配を25℃/kmと仮定)の環境で,断層に沿って地下からもたらされた周囲よりも高温の流体(300°C以上)と天水との混合によって析出し,地震後の断層を繰り返しシールしたと考えられる.
【文献】
大平ほか(2006)島根県東部・鍋山鉱山および周辺花崗岩類のFT 年代と冷却史.フィッション・トラック ニュースレター,19,11–14.
大橋(2024)2000年鳥取県西部地震余震域の断層岩に記録された地震性すべりと方解石シーリングの繰り返し.日本地質学会第131年学術大会,T10-O-2.
大橋・小林(2025)2000年鳥取県西部地震余震域に分布する含方解石カタクレーサイトと非ダブルカップル型地震.日本地球惑星科学連合2025年大会講演要旨,SSS10-P14.
Ryb, U. et al. (2017) The clumped-isotope geochemistry of exhumed marbles from Naxos, Greece. Earth Planet Sci Lett 470:1–12. https://doi.org/10.1016/j.epsl.2017.04.026
鈴木ほか(2016)2000年鳥取県西部地震余震域内に露出する破砕帯露頭.日本地球惑星科学連合2016年大会講演要旨,SCG63-P39.
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