Presentation Information
[R1-P-01]Electron diffraction imaging for hierarchical structure in minerals and its application to the Earth and planetary sciences
*Yohei IGAMI1, Akira MIYAKE1 (1. Kyoto University)
Keywords:
electron microscopy,electron diffraction,4D-STEM
鉱物の多くは複雑な結晶構造を持ち、またより大きなスケールにおいても様々な不均一組織/複合組織を呈する。天然に産する鉱物はこうした階層的な不均質構造を持つことが一つの大きな特徴であり、それが形成過程を理解するための重要な情報源でもある。そのため、理想的にはこれらを統一的に把握し理解することが求められるが、現実にあらゆる空間階層での構造情報を収集するのは非常に困難である。こうした観点での研究にあたって、多様な微視的スケールで観察が可能な電子顕微鏡は非常に有効なツールの一つと思われる。特に走査型透過電子顕微鏡(STEM)法は近年も様々な進展があり原子列レベルに至る空間分解能で多様なイメージングが可能となっている。ただし、原子スケールのイメージングだけでは視野が極めて狭いためにナノメートル~マイクロメートルスケールの不均一性との関連付けの問題が残る。こうした鉱物学に特有の課題を踏まえて我々は、原子レベル情報は回折・散乱信号により得つつ、ナノ電子プローブを比較的広く走査することでナノ~マイクロ領域の不均質組織を抑え、これらを統合して解析する方法を、電子回折イメージングと呼び、検討してきた[1]。この手法では、各プローブ位置で結晶構造パラメータを明瞭な走査像と共に得て評価することができる利点がある。なお、このような電子顕微鏡手法は、絞った電子プローブを2次元(2D)グリッド状に走査して各プローブ位置から2D回折パターンを記録して4D配列データを取得することから、最近では4D-STEMとも総称される[2]。
分析においては、京都大学に設置のTEM(JEOL, JEM-2100F)を用いて、スクリプト制御により電子線ナノプローブ走査とCCDカメラでの回折図形取り込みの同期をはかり、鉱物試料から回折イメージング4D配列データを取得・解析する環境を構築した。簡単なGUIを準備し、ビーム走査のキャリブレーション機能をつけて、様々なビーム条件/走査範囲に対して歪みを抑えたビーム走査を可能とした。電子線収束角は任意に選択可能であるが、我々がこれまで行ってきた応用研究においては平行性の高いビームを多く活用してきた。この条件では数nmの実効空間分解能を保ちつつシャープなブラッグスポットパターンが得られるため、対称性変化に伴う弱い反射の検出や、格子歪みの精密決定が容易となる。さらに、照射電流量を1 pA程度に抑えられるため、含水鉱物に対しても問題になる損傷の形成無しに分析が可能である。得られた回折イメージングデータセットからは、任意形状の仮想対物しぼりによる回折コントラスト像を構成でき、各回折図形の非弾性散乱をバックグラウンドとして除去すれば高コントラストが得られる。また、ブラッグスポットの位置変化を用いた定量的な格子歪み/格子定数マップも得られる。また制限視野回折(SAED)に比べて微結晶の検出感度に優れ、実際にSAEDでは全く得られなかった結晶相の情報が当手法で発見できる利点も分かってきた。発表ではいくつかの具体的な鉱物学/地球惑星科学応用例を紹介する。
[1] Igami, Y., Miyake, A. (2023) JpGU meeting, abstract. [2] Ophus, C. (2019) Microsc. Microanal. 25, 563.
分析においては、京都大学に設置のTEM(JEOL, JEM-2100F)を用いて、スクリプト制御により電子線ナノプローブ走査とCCDカメラでの回折図形取り込みの同期をはかり、鉱物試料から回折イメージング4D配列データを取得・解析する環境を構築した。簡単なGUIを準備し、ビーム走査のキャリブレーション機能をつけて、様々なビーム条件/走査範囲に対して歪みを抑えたビーム走査を可能とした。電子線収束角は任意に選択可能であるが、我々がこれまで行ってきた応用研究においては平行性の高いビームを多く活用してきた。この条件では数nmの実効空間分解能を保ちつつシャープなブラッグスポットパターンが得られるため、対称性変化に伴う弱い反射の検出や、格子歪みの精密決定が容易となる。さらに、照射電流量を1 pA程度に抑えられるため、含水鉱物に対しても問題になる損傷の形成無しに分析が可能である。得られた回折イメージングデータセットからは、任意形状の仮想対物しぼりによる回折コントラスト像を構成でき、各回折図形の非弾性散乱をバックグラウンドとして除去すれば高コントラストが得られる。また、ブラッグスポットの位置変化を用いた定量的な格子歪み/格子定数マップも得られる。また制限視野回折(SAED)に比べて微結晶の検出感度に優れ、実際にSAEDでは全く得られなかった結晶相の情報が当手法で発見できる利点も分かってきた。発表ではいくつかの具体的な鉱物学/地球惑星科学応用例を紹介する。
[1] Igami, Y., Miyake, A. (2023) JpGU meeting, abstract. [2] Ophus, C. (2019) Microsc. Microanal. 25, 563.