Presentation Information
[R1-P-02]Electron diffraction tomography of silicate mineral
*Akira MIYAKE1, Takahiro KURIBAYASHI2 (1. Kyoto Univ., 2. Tohoku Univ.)
Keywords:
Electron diffraction tomography
近、電子顕微鏡スケールの結晶の結晶構造解析のために、電子回折を用いた手法が行われ始めている。しかし、酸化物、特にケイ酸塩鉱物の電子回折構造解析はまだ始まったばかりと言える。こうした電子線回折をもちいた結晶構造解析の最大の強みは、試料サイズが100nm前後の試料で構造解析が可能であることである。一方で、以下の多くの課題がある。
1.電子と物質との相互作用が極めて大きいため、測定できる試料の大きさが限られている。
2.電子線の吸収:充分小さいと思われる微小結晶でも、電子線が透過しない場合がある。
3.動力学的効果:電子線が結晶を通過する際に、多重反射が起こる。結晶が厚ければ厚いほど動力学的効果が大きくなり、構造決定や精密化に大きな影響を及ぼす。
4.試料の損傷:電子線は高エネルギーの荷電粒子線であるため、試料の損傷がおきる場合がある。
本研究では、日本電子(株)とリガク(株)とが共同開発したXtaLAB Synergy-EDを用いて、ケイ酸塩鉱物の電子回折構造解析を行った。ここで、課題4の電子線による試料損傷を減らすために、損傷がほとんど見られないるオリビン((Mg,Fe)2SiO4, a = 4.7612(9) Å, b = 10.2282(15) Å, c = 5.9906(10) Å)を試料として用いた。また、課題1、2,3の影響をなるべく減らすために、長さ数100nm、直径約100nmのピラー状の試料をFIBを用いて作製した。得られた回折強度データは、SHELXL [1]とWinGX [2]、およびXtaLAB Synergy-EDに付属している3DED/MicroED用ソフトウェアCrysAlisPro for EDを用いて構造精密化を試みた。
測定の1例としては、加速電圧200 kV, 試料傾斜角を -79°から79°,0.5°間隔を、 775 x 385 pixelsのカメラ、露光時間2.5 secによって回折図形を取得した。この測定結果では、格子定数として、a = 4.8026 Å, b = 10.2787 Å, c = 6.0316 Åの結果を得た。この結果は、X線回折実験の結果よりもわずかに大きい値である。また、構造解析についてもSHELXLとWinGXのみで行った場合、十分な結果は得られなかった。これは減衰効果や動力学的効果がはいっておらず、試料が100nmΦであっても大きく寄与すると言える。一方、CrysAlisPro for EDをもちいて、これらの効果を含めて解析を行うと、比較的良い値を示した。しかし、このソフトでの処理はブラックボックスになっているため、実際なにが行われているかなど課題が残る。詳細の結果やそこから見えた造岩鉱物へ適用する際の課題について、報告する。
謝辞:日本電子(株)の村山晴佳・青山佳敬両氏には電子回折データを取得していただいた。リガク(株)の佐藤寛泰氏には、CrysAlisPro for EDの使用許可および使い方を教えていただいた。
[1] Sheldrix (2015) Struct. Chem. 71, 3-8. [2] Farrugia (2012) J. Appl. Cryst., 45, 849-854.
1.電子と物質との相互作用が極めて大きいため、測定できる試料の大きさが限られている。
2.電子線の吸収:充分小さいと思われる微小結晶でも、電子線が透過しない場合がある。
3.動力学的効果:電子線が結晶を通過する際に、多重反射が起こる。結晶が厚ければ厚いほど動力学的効果が大きくなり、構造決定や精密化に大きな影響を及ぼす。
4.試料の損傷:電子線は高エネルギーの荷電粒子線であるため、試料の損傷がおきる場合がある。
本研究では、日本電子(株)とリガク(株)とが共同開発したXtaLAB Synergy-EDを用いて、ケイ酸塩鉱物の電子回折構造解析を行った。ここで、課題4の電子線による試料損傷を減らすために、損傷がほとんど見られないるオリビン((Mg,Fe)2SiO4, a = 4.7612(9) Å, b = 10.2282(15) Å, c = 5.9906(10) Å)を試料として用いた。また、課題1、2,3の影響をなるべく減らすために、長さ数100nm、直径約100nmのピラー状の試料をFIBを用いて作製した。得られた回折強度データは、SHELXL [1]とWinGX [2]、およびXtaLAB Synergy-EDに付属している3DED/MicroED用ソフトウェアCrysAlisPro for EDを用いて構造精密化を試みた。
測定の1例としては、加速電圧200 kV, 試料傾斜角を -79°から79°,0.5°間隔を、 775 x 385 pixelsのカメラ、露光時間2.5 secによって回折図形を取得した。この測定結果では、格子定数として、a = 4.8026 Å, b = 10.2787 Å, c = 6.0316 Åの結果を得た。この結果は、X線回折実験の結果よりもわずかに大きい値である。また、構造解析についてもSHELXLとWinGXのみで行った場合、十分な結果は得られなかった。これは減衰効果や動力学的効果がはいっておらず、試料が100nmΦであっても大きく寄与すると言える。一方、CrysAlisPro for EDをもちいて、これらの効果を含めて解析を行うと、比較的良い値を示した。しかし、このソフトでの処理はブラックボックスになっているため、実際なにが行われているかなど課題が残る。詳細の結果やそこから見えた造岩鉱物へ適用する際の課題について、報告する。
謝辞:日本電子(株)の村山晴佳・青山佳敬両氏には電子回折データを取得していただいた。リガク(株)の佐藤寛泰氏には、CrysAlisPro for EDの使用許可および使い方を教えていただいた。
[1] Sheldrix (2015) Struct. Chem. 71, 3-8. [2] Farrugia (2012) J. Appl. Cryst., 45, 849-854.