Presentation Information
[R1-P-03]Estimation of Fe2+/Fe3+ ratios using FeLβ/FeLα intensity ratios using EPMA – evaluation of instrumental factors and development of program for effective peak analysis
*Minoru Kamata1,2, Terumi Ejima1,3, Yoshiaki Kon3, Maki Hamada4, Hiroaki Ohfuji2 (1. Shinshu Univ. Sci., 2. Tohoku Univ. Sci., 3. AIST, 4. Kanazawa Univ. S.E.)
Keywords:
Electron Probe Microanalyzer,FeL emission line,Fe2+/Fe3+
鉱物中のFeの価数を評価することは,固体地球科学において重要な意味をもつ。例えば,地表付近におけるマグマの高温酸化の影響を議論する場合,斑晶鉱物のコアおよびリムにおけるFe2+/Fe3+の精密な定量評価が不可欠である。そのような場合には,メスバウアー分光のようなバルク分析ではなく,数μmの空間分解能で分析が可能な電子プローブマイクロアナライザー(EPMA)を用いた手法(EPMA法; Albee and Chodos, 1970等)が有効である(木村・赤坂, 1999等)。木村・赤坂(1999)はFeLβ/FeLα強度比とFe2+/Fe3+の相関を利用した手法(Albee and Chodos, 1970)を再検討し,より適当な検量線を提案し,同手法がFe2+/Fe3+の半定量評価に有効であることを確認したが,電子銃タイプや分光器仕様を含めた装置依存性の評価はされていない。そこで本研究では,木村・赤坂(1999)が提案した検量線が,現在普及している電解放出(FE)電子銃を備えた装置(FE-EPMA)にも適用可能かどうかの検証および分光器依存性の評価を行った。また,得られたFeL線スペクトルに対してピークフィッティングを行いFeLβ/FeLα強度比を正確に読み取るためのソフトウェアの開発を行い,その有効性も評価した。
1)FeLβ/FeLα強度比の装置・分光器依存性の評価
試料には,Fe2+/Fe3+が湿式分析およびメスバウアー分光分析によって定量されている単斜輝石2試料,パイロープ1試料(木村・赤坂,1999),および産地不詳のファヤライト,パキスタン産のフォルステライト(江島・赤坂,2011),隠岐島後産のかんらん石(Ejima et al., 2011),アメリカSan Carlos産のフォルステライトを用いた。FE-EPMA装置には,信州大学および東北大学設置のJEOL JXA-iHP200F,産業技術総合研究所設置のJEOL JXA-8530Fを用いた。FeL線スペクトルの測定条件は,木村・赤坂(1999)の手法と同様とした。試料ダメージを軽減するため,1測定点につき測定位置をずらして6回測定し,測定した強度を積算して十分な強度のスペクトルを得た。JEOL JXA-8800Mを用いた木村・赤坂(1999)の検量線のFE-EPMAへの有効性について,JXA-iHP200FおよびJXA-8530Fを用いて比較・検証を行った。なお,X線スペクトルの収集にはいずれもTAP分光器を用いた。2つのFE-EPMA装置で測定した値は,いずれも木村・赤坂(1999)の検量線上にはのらず,FeLβ/FeLα強度比には装置依存があり,装置ごとに補正を行う必要があることが分かった。また,FeLβ/FeLα強度比の分光器依存性を評価するため, JXA-8530F搭載のTAPとTAPH,JXA-iHP200F搭載のTAPとTAPLによる強度比を比較したところ,いずれも異なる分光器間で有意な差がみられた。従って,同一装置を用いた場合でも分光器仕様に応じて補正を行う必要があることも明らかになった。一方,フォルステライト2試料について,信州大学と東北大学に設置の同型装置で同型分光器(TAPL)を用いて測定を行ったところ,両者のFeLβ/FeLα強度比に有意な差は見られなかった。従って,同型装置および分光器を用いれば,補正の必要なく同一の検量線が使用できる可能性がある。
2)ソフトウェアの開発
FeL線スペクトルにピークフィッティングを行いFeLβおよびFeLαピーク強度を正確かつ効率的に読み取るソフトウェアを開発するため,主にフィッティング関数のパラメータ初期値の決定に着目して使用性の改善を図った。その結果,相互相関関数を用いてピークサーチ(Black, 1969)を行い,フィッティング関数(2つのローレンツ関数と定数関数の和)のパラメータ初期値を調節して大まかにピーク形状に合わせた後,最小二乗法による精密なフィッティングを行うことで,初期値を手動で入力する必要がなくなり,人為的なフィッティング不良が防止された。また,複数の測定データを連続的に自動処理できるようにし,大量のデータを効率的に解析することが可能となった。強度比読み取りの再現性を評価するため,フィッティングの結果を木村・赤坂(1999)で使用されたソフトウェアと比較したところ, FeLβ/FeLα強度比に有意な差はみられず,χ二乗検定によるフィッティングの適合度も同等であった。本プログラムを用いることで,従来と同等の再現性・精度で効率的に強度比を読み取ることが可能となった。
1)FeLβ/FeLα強度比の装置・分光器依存性の評価
試料には,Fe2+/Fe3+が湿式分析およびメスバウアー分光分析によって定量されている単斜輝石2試料,パイロープ1試料(木村・赤坂,1999),および産地不詳のファヤライト,パキスタン産のフォルステライト(江島・赤坂,2011),隠岐島後産のかんらん石(Ejima et al., 2011),アメリカSan Carlos産のフォルステライトを用いた。FE-EPMA装置には,信州大学および東北大学設置のJEOL JXA-iHP200F,産業技術総合研究所設置のJEOL JXA-8530Fを用いた。FeL線スペクトルの測定条件は,木村・赤坂(1999)の手法と同様とした。試料ダメージを軽減するため,1測定点につき測定位置をずらして6回測定し,測定した強度を積算して十分な強度のスペクトルを得た。JEOL JXA-8800Mを用いた木村・赤坂(1999)の検量線のFE-EPMAへの有効性について,JXA-iHP200FおよびJXA-8530Fを用いて比較・検証を行った。なお,X線スペクトルの収集にはいずれもTAP分光器を用いた。2つのFE-EPMA装置で測定した値は,いずれも木村・赤坂(1999)の検量線上にはのらず,FeLβ/FeLα強度比には装置依存があり,装置ごとに補正を行う必要があることが分かった。また,FeLβ/FeLα強度比の分光器依存性を評価するため, JXA-8530F搭載のTAPとTAPH,JXA-iHP200F搭載のTAPとTAPLによる強度比を比較したところ,いずれも異なる分光器間で有意な差がみられた。従って,同一装置を用いた場合でも分光器仕様に応じて補正を行う必要があることも明らかになった。一方,フォルステライト2試料について,信州大学と東北大学に設置の同型装置で同型分光器(TAPL)を用いて測定を行ったところ,両者のFeLβ/FeLα強度比に有意な差は見られなかった。従って,同型装置および分光器を用いれば,補正の必要なく同一の検量線が使用できる可能性がある。
2)ソフトウェアの開発
FeL線スペクトルにピークフィッティングを行いFeLβおよびFeLαピーク強度を正確かつ効率的に読み取るソフトウェアを開発するため,主にフィッティング関数のパラメータ初期値の決定に着目して使用性の改善を図った。その結果,相互相関関数を用いてピークサーチ(Black, 1969)を行い,フィッティング関数(2つのローレンツ関数と定数関数の和)のパラメータ初期値を調節して大まかにピーク形状に合わせた後,最小二乗法による精密なフィッティングを行うことで,初期値を手動で入力する必要がなくなり,人為的なフィッティング不良が防止された。また,複数の測定データを連続的に自動処理できるようにし,大量のデータを効率的に解析することが可能となった。強度比読み取りの再現性を評価するため,フィッティングの結果を木村・赤坂(1999)で使用されたソフトウェアと比較したところ, FeLβ/FeLα強度比に有意な差はみられず,χ二乗検定によるフィッティングの適合度も同等であった。本プログラムを用いることで,従来と同等の再現性・精度で効率的に強度比を読み取ることが可能となった。