Presentation Information
[R2-12]Analysis of stacking faults in kaolin group minerals by low-dose and high-resolution imaging using OBF-STEM
*Hayato Miura1, Toshihiro Kogure2, Taiga Okumura2, Ichiro Ohnishi1 (1. JEOL Ltd., 2. Waseda Univ.)
Keywords:
OBF-STEM,crystal structure,stacking fault,clay minerals,kaolinite
代表的な粘土鉱物であるカオリン鉱物(Al2Si2O5(OH)4)は、2八面体型1:1層状珪酸塩の単位層をもち、その2八面体中の空サイトの位置や上下の層の位置関係の違いによって3つのポリタイプ(kaolinite, dickite, nacrite)がこれまでに報告されている。また、層状珪酸塩鉱物は異なるポリタイプの積層様式が混在した積層欠陥や積層不整を含むものが多いが、カオリン鉱物もこのような特徴をもち、例えばkaoliniteとdickiteの構造が混在した構造などが高分解能TEMにより明らかにされている(Kogure and Inoue, 2005)。一方、nacriteはkaolinite/dickiteとはその層間の構造あるいは積層様式が大きく異なっており、Bailey(1969)の定義する1:1型層状珪酸塩の分類ではkaolinite/dickiteはGroup Aに属するのに対してnacriteはGroup Dに属する。このためkaolinite/dickiteの積層とnacriteの積層がひとつの結晶に混在する可能性は低いとも考えられるが、赤外吸収や電子回折などの結果からkaolinite/dickiteとnacriteの積層が混在する可能性が提案され(Ruiz Cruz, 1996; Johnston et al., 2008)、高分解能TEM等による原子配列の直接観察でその真偽を明らかにすることが望まれる。しかしながらGroup AとGroup Bの積層様式を区別するためには、いわゆるYi方向(Bailey,1969)からの約0.2 nm以下での高分解能観察が必要であるが、電子線による損傷が激しいカオリン鉱物ではほぼ不可能であった(Kogure et al., 2010)。このような状況の中で、最適明視野(OBF)-STEM法と呼ばれる結像法が開発された(Ooe et al., 2021)。この手法では、分割化された検出器から得られる各セグメントの位相コントラスト像に、検出器の位置と形状に応じた周波数フィルターを適用することで信号対雑音比を最大化し、少ない照射電子量でも非常に高コントラストな原子分解能像を得ることができる。そこで本研究ではこのOBF-STEM法によってnacriteの構造をYi方向から原子分解能で観察し、そこに見られる面欠陥がkaolinite/dickiteの積層構造となっていることを初めて明らかにした。
試料はフランス・Lodève地方に産する苦灰岩の空隙に形成された数mm程度のnacrite単結晶で(Buatier et al., 2000)、FIBにより十分に薄い断面薄膜試料を作製した。OBF-STEM像は収差補正型300 kV透過型電子顕微鏡(JEM-ARM300F2)と8分割検出器(SAAF-Octa)を用いて取得した。Fig. 1はnacriteの[100]方向から記録したOBF-STEM像であり、SiとAlに加えて全ての酸素原子に対応するコントラストが可視化されている。四面体シートの位置は、上下の層で横方向のずれが見られない一方で八面体シートの方向は明らかに積層方向で交互に反転しており、Group Dの積層様式が確認できる。その一方、中央付近には八面体シートの方向が変わっていない層があり、しかも図に示したようにこの2つの層は水平方向に1/3周期ずれていることがわかる。この積層はGroup A、つまりkaolinite/dickiteの特徴をもち、nacrite中にkaolinite/dickiteの積層が含まれることを示している。これより2八面体型の1:1層状ケイ酸塩において、異なるGroupの積層構造がひとつの結晶に存在することは可能と考えられる。
試料はフランス・Lodève地方に産する苦灰岩の空隙に形成された数mm程度のnacrite単結晶で(Buatier et al., 2000)、FIBにより十分に薄い断面薄膜試料を作製した。OBF-STEM像は収差補正型300 kV透過型電子顕微鏡(JEM-ARM300F2)と8分割検出器(SAAF-Octa)を用いて取得した。Fig. 1はnacriteの[100]方向から記録したOBF-STEM像であり、SiとAlに加えて全ての酸素原子に対応するコントラストが可視化されている。四面体シートの位置は、上下の層で横方向のずれが見られない一方で八面体シートの方向は明らかに積層方向で交互に反転しており、Group Dの積層様式が確認できる。その一方、中央付近には八面体シートの方向が変わっていない層があり、しかも図に示したようにこの2つの層は水平方向に1/3周期ずれていることがわかる。この積層はGroup A、つまりkaolinite/dickiteの特徴をもち、nacrite中にkaolinite/dickiteの積層が含まれることを示している。これより2八面体型の1:1層状ケイ酸塩において、異なるGroupの積層構造がひとつの結晶に存在することは可能と考えられる。