Presentation Information
[R2-14]Dynamic process of extra-framework adsorbed chemical species in a largely Cs-exchanged natural Ca-chabazite studied by in-situ high-temperature single-crystal X-ray diffraction
Naomi Kawata1, *Akihiko Nakatsuka1 (1. Yamaguchi Univ. Sci. Tech. Inn.)
Keywords:
zeolite,chabazite,Cs-exchange,single-crystal X-ray diffraction,high temperature
福島第一原発事故で生じた汚染水は現在でも増え続け、放射性物質の除去処理を施した汚染水のうち70%は未だ「処理途上水」とされ、汚染水処理問題は未解決のままである。汚染水に含まれる放射性核種のうちで特に問題となるのは原発事故による放出量が多く半減期が長い137Cs(30.1 年)である。その主要な除去剤の一つとしてゼオライトが用いられている。ゼオライトとは、フレームワーク構造中に原子レベルの細孔をもつ多孔性アルミノ珪酸塩のことであり、その細孔内には通常水分子と交換性陽イオンが分布し、陽イオン交換によりCsなどの放射性元素を細孔内に吸着させるという方法をとる。特に菱沸石は、Cs交換能力に優れたていることが知られているゼオライトの一種であり、その性能を利用して、福島原発で実際に使用されている。そのような重要性にも拘わらず、イオン交換特性と密接に関係している細孔内での吸着化学種の配置は非常に複雑であるため、多くのゼオライト化合物において、その統一的な見解が得られていないのが現状である。特にCs交換菱沸石については、細孔内の吸着化学種の配置に関してほとんど報告例がない。そのような背景のもと、本研究では、放射性元素除去剤としての材料設計指針構築の一助とするべく、Cs交換菱沸石について温度を変数としたその場高温単結晶X線構造解析を行い、得られた精密構造と各化学種間の動的相互作用の詳細から、菱沸石のCs除去剤としての特性発現メカニズムに関する知見を得ることを目的とした。
天然Caチャバサイト単結晶(オレゴン産・USA)を用い、濃度の異なるCsCl水溶液中で80 °C・64日間振とう処理を行うことで、交換率の異なるCs交換体を作製し、Cs交換特性を検討した。その結果、最大で80%を超えるCs交換率に達し、優れたCs交換特性をもつことを確認した。本研究では、交換率72%のCs交換体において、その場高温単結晶X線構造解析を23,50,100,150,200 ℃の各温度で行った。
室温(23 ℃)での解析結果から、実質的に2つのCs席、4つのCa席および4つの水分子席の存在を明らかにした。その結果に基づく結晶学的観察から、高効率なCs交換特性をもつためには、(1)フレームワーク構造がCs拡散パスとなる3次元網状チャネルをもつこと、(2)Csイオンに対する強い選択性をもち適度な結合力によってCsイオンを固定する結晶学的占有席が存在すること、(3)フレームワーク構造が剛直であること、の3つの結晶化学的要因が必要であることを示した。
高温での解析結果から、以下に示すような脱水に伴う細孔内での陽イオンの運動プロセスが明らかになった。
・Csの場合: 脱水するには水分子が八員環窓を通過する必要があるが、その際、八員環窓の中心あるいはその付近に位置するCs優先席を占有しているCsイオンが他方のCs席に移動することによって、水分子の通過経路を確保していることが明らかになった。一方で、細孔内の水分子のほぼすべてが脱離した後は、他方のCs席に移動したCsイオンが再び元のCs優先席に戻ることが明らかになった。
・Cs交換されずに残存したCaの場合:Caに配位している水分子の脱離に伴い、配位子を失って不安定化したCaイオンがより多くの配位子(水分子・フレームワーク酸素)をもつ隣接陽イオン席へ移動するというプロセスが明らかになった。
天然Caチャバサイト単結晶(オレゴン産・USA)を用い、濃度の異なるCsCl水溶液中で80 °C・64日間振とう処理を行うことで、交換率の異なるCs交換体を作製し、Cs交換特性を検討した。その結果、最大で80%を超えるCs交換率に達し、優れたCs交換特性をもつことを確認した。本研究では、交換率72%のCs交換体において、その場高温単結晶X線構造解析を23,50,100,150,200 ℃の各温度で行った。
室温(23 ℃)での解析結果から、実質的に2つのCs席、4つのCa席および4つの水分子席の存在を明らかにした。その結果に基づく結晶学的観察から、高効率なCs交換特性をもつためには、(1)フレームワーク構造がCs拡散パスとなる3次元網状チャネルをもつこと、(2)Csイオンに対する強い選択性をもち適度な結合力によってCsイオンを固定する結晶学的占有席が存在すること、(3)フレームワーク構造が剛直であること、の3つの結晶化学的要因が必要であることを示した。
高温での解析結果から、以下に示すような脱水に伴う細孔内での陽イオンの運動プロセスが明らかになった。
・Csの場合: 脱水するには水分子が八員環窓を通過する必要があるが、その際、八員環窓の中心あるいはその付近に位置するCs優先席を占有しているCsイオンが他方のCs席に移動することによって、水分子の通過経路を確保していることが明らかになった。一方で、細孔内の水分子のほぼすべてが脱離した後は、他方のCs席に移動したCsイオンが再び元のCs優先席に戻ることが明らかになった。
・Cs交換されずに残存したCaの場合:Caに配位している水分子の脱離に伴い、配位子を失って不安定化したCaイオンがより多くの配位子(水分子・フレームワーク酸素)をもつ隣接陽イオン席へ移動するというプロセスが明らかになった。