Presentation Information
[R2-P-01]Temperature and Pressure Variation of the Elastic Constants of α-Quartz by Molecular Dynamics Simulation: Application to Real Contact Area of Friction
*Riku Sugimoto1, Hiroshi Sakuma1,2, Kenji Kawai1 (1. UTokyo. EPS., 2. NIMS)
Keywords:
Alpha-Quartz,Elastic Constants,Friction,Real Contact Area,Molecular Dynamics Simulation
地殻の主要鉱物の一つである石英は、断層に多く含まれており、その摩擦特性を理解することは断層の挙動を知る上で重要である。一般に、鉱物粒子間の摩擦は真実接触面積と真実接触点での凝着を切る力に依存すると考えられる。これらの性質の温度・圧力依存性を知ることは、摩擦構成則のさらなる発展に不可欠である。しかしながら、真実接触面積が温度・圧力ともにどう変化するかは実験的に観察することが困難であり、未解明の部分が多い。Greenwood-Williamson(GW)モデル [1]によれば、石英が弾性体であることを仮定すると、真実接触面積は鉱物の弾性定数から見積もることができる。したがって、任意の温度・圧力で石英の弾性定数を求めることができれば、真実接触面積の温度・圧力変化を明らかにできる。そこで本研究では、分子動力学(MD)シミュレーションを用いて石英の弾性定数を精度良く再現できる原子間相互作用モデルを検討し、室温・常圧から地殻条件に相当する高温・高圧の温度・圧力範囲で石英の弾性定数を計算する。また、求められた弾性定数を用いて、真実接触面積の温度・圧力変化に対する知見を得る。本研究では、まず水の影響を無視できる乾燥条件を研究対象とする。
まず、MD計算から粒子数・圧力・温度(NPT)一定条件下の格子定数を決定し、そこから微小歪みを加えて粒子数・体積・温度(NVT)一定条件下での応力を決定した。得られた歪み-応力関係から弾性定数を理論的に計算した。石英のポテンシャルモデルは、既報のSiO2系 のMD計算で用いられているVashishtaモデル[2]、Tersoffモデル[3]、BMH-EXPモデル[4, 5] を採用し、結果を比較した。その結果、BMH-EXPモデルが室温から800Kでの弾性定数の実験値 [6] を最も良く再現していたため、高温・高圧の石英の弾性定数の計算にはBMH-EXPモデルを採用することとした。
BMH-EXPモデルを用いて計算した高温・高圧の弾性定数を基に、GWモデルにより真実接触面積の温度・圧力依存性を求めた。その結果、封圧250 MPaの条件下で室温から800 Kまで温度が変化すると、真実接触面積は12 % 増加することがわかった。また、接触点での凝着を切る力の温度依存性を無視できると仮定すると、この変化は石英や花崗岩ガウジの摩擦試験の結果 [7, 8] と調和的であり、弾性体であるという仮定付きではあるものの、摩擦係数の温度変化を真実接触面積の変化で説明できることがわかった。
α・β-石英の高温・高圧での弾性定数を予測することは、地震波計測結果の解釈を通じて、下部地殻の温度構造の解明にもつながる[9] 。高温かつ高圧両方の条件を満たした石英の弾性定数は実験値・計算値が未だに限られており、今回のα-石英の弾性定数の計算値は、下部地殻の温度構造解明につながる。
参考文献.
[1] Greenwood and Williamson, Proc. Roy. Soc. Lond. A. 295, 300-319 (1966).
[2] Vashishta, et al., Phys. Rev. B, 41, 12197 (1990).
[3] Munetoh et al., Comp. Mat. Sci., 39, 334-339 (2007).
[4] Ishikawa et al., J. Mineral. Petrol. Sci., 111, 297-302 (2016).
[5] Yokoyama and Sakuma, Geochim. Cosmochim. Acta, 224, 301-312 (2018).
[6] Ohno, J. Phys. Earth, 43, 157-169 (1995).
[7] Masuda et al., Prog Earth Planet Sci, 6(50), (2019).
[8] Lockner et al. PAGEOPH, 124, 445-469 (1986).
[9] Moarefvand et al. J. Geophys. Res. Solid Earth, 129, e2023JB027850 (2024).
まず、MD計算から粒子数・圧力・温度(NPT)一定条件下の格子定数を決定し、そこから微小歪みを加えて粒子数・体積・温度(NVT)一定条件下での応力を決定した。得られた歪み-応力関係から弾性定数を理論的に計算した。石英のポテンシャルモデルは、既報のSiO2系 のMD計算で用いられているVashishtaモデル[2]、Tersoffモデル[3]、BMH-EXPモデル[4, 5] を採用し、結果を比較した。その結果、BMH-EXPモデルが室温から800Kでの弾性定数の実験値 [6] を最も良く再現していたため、高温・高圧の石英の弾性定数の計算にはBMH-EXPモデルを採用することとした。
BMH-EXPモデルを用いて計算した高温・高圧の弾性定数を基に、GWモデルにより真実接触面積の温度・圧力依存性を求めた。その結果、封圧250 MPaの条件下で室温から800 Kまで温度が変化すると、真実接触面積は12 % 増加することがわかった。また、接触点での凝着を切る力の温度依存性を無視できると仮定すると、この変化は石英や花崗岩ガウジの摩擦試験の結果 [7, 8] と調和的であり、弾性体であるという仮定付きではあるものの、摩擦係数の温度変化を真実接触面積の変化で説明できることがわかった。
α・β-石英の高温・高圧での弾性定数を予測することは、地震波計測結果の解釈を通じて、下部地殻の温度構造の解明にもつながる[9] 。高温かつ高圧両方の条件を満たした石英の弾性定数は実験値・計算値が未だに限られており、今回のα-石英の弾性定数の計算値は、下部地殻の温度構造解明につながる。
参考文献.
[1] Greenwood and Williamson, Proc. Roy. Soc. Lond. A. 295, 300-319 (1966).
[2] Vashishta, et al., Phys. Rev. B, 41, 12197 (1990).
[3] Munetoh et al., Comp. Mat. Sci., 39, 334-339 (2007).
[4] Ishikawa et al., J. Mineral. Petrol. Sci., 111, 297-302 (2016).
[5] Yokoyama and Sakuma, Geochim. Cosmochim. Acta, 224, 301-312 (2018).
[6] Ohno, J. Phys. Earth, 43, 157-169 (1995).
[7] Masuda et al., Prog Earth Planet Sci, 6(50), (2019).
[8] Lockner et al. PAGEOPH, 124, 445-469 (1986).
[9] Moarefvand et al. J. Geophys. Res. Solid Earth, 129, e2023JB027850 (2024).