Presentation Information
[R2-P-03]Characteristics of the augite-pigeonite exsolution interface
*Shoichi TOH1 (1. Fukuoka Univ. Sci.)
Keywords:
augite,pigeonite,exsolution,interface
離溶現象により輝石内部には特徴的な組織が形成される。その形態は離溶に伴い変化するエネルギーを最小化する条件によって決定されることが知られている。
一般に離溶相の形成に伴う自由エネルギーの変化には、次の3つの要因が関与する。<離溶相の形成に伴い減少する項><母相と離溶相間の境界の形成に伴って増加する項(界面エネルギー)><離溶相と母相の体積の違いにより増加する項(ひずみエネルギー)>離溶相の形状としてはラメラ状(葉片状)の形態が広く知られているが、これは、ひずみエネルギー項を最小するためであると考えられている。
単斜晶系および直方晶系に属する輝石の場合は、ラメラの界面は(100)または(001)面上に形成される。特に単斜晶系同士の析出の場合、具体的には普通輝石(aug)とピジオン輝石(pig)との離溶の場合は、(100)や(001)面からわずかに傾いた方向に界面が形成される場合が知られており、“100”および“001”と表記される。この現象についてRobinsonら[1]は次のように説明した。aug-pig間の析出の温度では両相のa軸が一致しないため(001)での両相の接合にはひずみエネルギーが必要となる。このとき、pigラメラの(001)面がaugの(001)面からわずかに傾くことにより一般的にひずみエネルギーの無い、もしくはほとんど無い接合面の方向を実現できる。彼らはその組織の成因をoptimal phase boundary[2]を基礎としたExact Phase Boundaryモデル[1]によって説明した。
一方で発表者はこのような“100”、“001”界面で両相が接合する場合を原子レベルで考えた時、界面でのイオンの配置について疑問を持った。すなわち、界面領域においてイオンの配列に乱れが生じる可能性について考えた。
ラメラ状の離溶組織(または析出現象)については代表的な例として、立方晶系の結晶を対象としたスピノーダル分解組織についてのCahn (1962)[3]の考えに基礎を置いてWillaimeとBrown(1974)[4]は三斜晶系まで拡張し"Coherent Elastic Model"によって説明した。一方、前述したようにRobinsonらの研究はBollmannとNissenのO-格子理論にその基礎をおいて説明した。これらの研究は1960年代から70年代のものであり、当時は電子顕微鏡の空間分解能が十分でなかったためか、発表者が調べた限りでは実際の界面領域の原子配列の検証は行われてこなかったようである。
そこで、実際に界面の詳細な構造、原子配置を明らかにすることを目的とした観察することにした。そのためには、比較的に最近になって普及している球面収差補正走査透過型分析電子顕微鏡による個々の原子種のマッピング(カラムマッピング)を行う必要があると考えている。しかしながら、試料の作製状況や、観察と分析が可能な位置、適切な操作技術をはじめとした極めて微妙な条件が揃わなければならない。これらをクリアし界面構造の普遍的法則性を明らかにするためには、ある程度の試行錯誤のための実験時間の確保も必要である。
以上のような制約の下で界面領域の構造のデータ取得のため、これまでに汎用分析電子顕微鏡を用いた古典的なTEM手法である高分解能像によるフリンジの観察を行っている。その結果からは、いくつかの異なる特徴をもった界面構造が存在するらしいことがわかってきた。それらの中にはRobinsonらの研究で示されたモデルの平滑な界面とは異なる場合がある可能性も示唆される。そこで現在は、限られたカラムマッピングデータに普遍性を持たせる意味から、TEM高分解能像を整理し、界面構造の系統的タイプわけを行っている。本発表ではそれらの特徴を整理し報告する。
[1] Robinson et al., Amer. Min. 56, 909-939. (1971). [2] Bollmann & Nissen, Acta Cryst. A24, 546-557. [3] Cahn, Acta Met. 10, 179--183 (1962). (1968). [4] Willaime & Brown, Acta Cryst. A30, 316-331. (1974).
一般に離溶相の形成に伴う自由エネルギーの変化には、次の3つの要因が関与する。<離溶相の形成に伴い減少する項><母相と離溶相間の境界の形成に伴って増加する項(界面エネルギー)><離溶相と母相の体積の違いにより増加する項(ひずみエネルギー)>離溶相の形状としてはラメラ状(葉片状)の形態が広く知られているが、これは、ひずみエネルギー項を最小するためであると考えられている。
単斜晶系および直方晶系に属する輝石の場合は、ラメラの界面は(100)または(001)面上に形成される。特に単斜晶系同士の析出の場合、具体的には普通輝石(aug)とピジオン輝石(pig)との離溶の場合は、(100)や(001)面からわずかに傾いた方向に界面が形成される場合が知られており、“100”および“001”と表記される。この現象についてRobinsonら[1]は次のように説明した。aug-pig間の析出の温度では両相のa軸が一致しないため(001)での両相の接合にはひずみエネルギーが必要となる。このとき、pigラメラの(001)面がaugの(001)面からわずかに傾くことにより一般的にひずみエネルギーの無い、もしくはほとんど無い接合面の方向を実現できる。彼らはその組織の成因をoptimal phase boundary[2]を基礎としたExact Phase Boundaryモデル[1]によって説明した。
一方で発表者はこのような“100”、“001”界面で両相が接合する場合を原子レベルで考えた時、界面でのイオンの配置について疑問を持った。すなわち、界面領域においてイオンの配列に乱れが生じる可能性について考えた。
ラメラ状の離溶組織(または析出現象)については代表的な例として、立方晶系の結晶を対象としたスピノーダル分解組織についてのCahn (1962)[3]の考えに基礎を置いてWillaimeとBrown(1974)[4]は三斜晶系まで拡張し"Coherent Elastic Model"によって説明した。一方、前述したようにRobinsonらの研究はBollmannとNissenのO-格子理論にその基礎をおいて説明した。これらの研究は1960年代から70年代のものであり、当時は電子顕微鏡の空間分解能が十分でなかったためか、発表者が調べた限りでは実際の界面領域の原子配列の検証は行われてこなかったようである。
そこで、実際に界面の詳細な構造、原子配置を明らかにすることを目的とした観察することにした。そのためには、比較的に最近になって普及している球面収差補正走査透過型分析電子顕微鏡による個々の原子種のマッピング(カラムマッピング)を行う必要があると考えている。しかしながら、試料の作製状況や、観察と分析が可能な位置、適切な操作技術をはじめとした極めて微妙な条件が揃わなければならない。これらをクリアし界面構造の普遍的法則性を明らかにするためには、ある程度の試行錯誤のための実験時間の確保も必要である。
以上のような制約の下で界面領域の構造のデータ取得のため、これまでに汎用分析電子顕微鏡を用いた古典的なTEM手法である高分解能像によるフリンジの観察を行っている。その結果からは、いくつかの異なる特徴をもった界面構造が存在するらしいことがわかってきた。それらの中にはRobinsonらの研究で示されたモデルの平滑な界面とは異なる場合がある可能性も示唆される。そこで現在は、限られたカラムマッピングデータに普遍性を持たせる意味から、TEM高分解能像を整理し、界面構造の系統的タイプわけを行っている。本発表ではそれらの特徴を整理し報告する。
[1] Robinson et al., Amer. Min. 56, 909-939. (1971). [2] Bollmann & Nissen, Acta Cryst. A24, 546-557. [3] Cahn, Acta Met. 10, 179--183 (1962). (1968). [4] Willaime & Brown, Acta Cryst. A30, 316-331. (1974).