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[R2-P-05]Theoretical analysis of the brucite/olivine interface topotaxy: Investigation based on molecular dynamics calculations

*Mitsuki Shimizu1, Jun Kawano1, Takayoshi Nagaya2, Takaya Nagai1, Simon Richard Wallis3 (1. Hokkaido Univ., 2. Waseda Univ. , 3. Tokyo Univ.)
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Keywords:

MD simulation,olivine,brucite,topotaxy,mineral interface

はじめに 
 ウェッジマントル浅部では、アンチゴライト((Mg,Fe)6Si4O10(OH)8)とブルーサイト(Mg(OH)2)が脱水して、オリビン((Mg,Fe)2SiO4)が生成する。近年、Nagaya et al. (2022)やMenzel et al. (2025)により、この反応におけるブルーサイトとオリビンとの間のトポタキシーが報告された。これが正しいとすると、従来考えられてきた反応条件やウェッジマントルの鉱物分布に大きな影響を及ぼす可能性があるため、これらの関係を明らかにすることは極めて重要である。
 Nagaya et al. (2022)のデータから、ブルーサイト(brc)の(001)面(001)brcと、オリビン(ol)の001面(001)olからわずかに傾いた(011)olが対応している可能性が推察される。しかし、乾燥条件下でより安定とされる(001)olではなく、やや高エネルギーな(011)olが界面に卓越して出現する現象は未解明である。一方、Menzel et al. (2025)は、(001)brcと(100)ol間のトポタキシーを指摘している。これらの界面のエネルギー的な安定性と、方位選択の要因を検証するため、本研究では分子動力学計算(MD)により、オリビン各結晶面の表面エネルギー、ブルーサイト/オリビン界面の界面エネルギーおよびこれらの構造を評価した。

手法 
 MD計算にはMXDTRCL (Kawamura, 1998)を使用し、ポテンシャルパラメータはブルーサイト、フォルステライトの結晶構造をよく再現するSakuma et al. (2003)およびMiyake (1998)によるものを採用した。原子数は表面モデルで約10,000原子、界面モデルで約25,000原子で、各モデル300 K、1気圧の条件のもと、ステップ間隔0.4 fsで100,000〜200,000ステップ計算を行った。
 前述の反応は脱水反応であり、反応界面に水が存在すると考えられるため、乾燥表面のモデルに加えて、オリビンの切断面に水を解離吸着したモデルについても計算を行った。その際の表面/界面エネルギー計算は、De Leeuw et al. (2000)の方法に倣い、フォルステライトと水の反応エンタルピーから推定した水の解離エネルギーに基づいて行った。なお、計算にはオリビンのMg端成分であるフォルステライト(Mg2SiO4)(fo)を用いた。

結果と考察 
 表面エネルギーは乾燥条件下で(001)foが最も安定であり、(011)foおよび(100)foは比較的高エネルギーであった。しかし、水を解離吸着したとき(001)foに対して(100)fo、(011)foが相対的に安定となった。乾燥条件では(001)olがより安定であることが従来から知られているが、この結果は、水存在下ではむしろ(011)foや(100)foが相対的に安定化しうることを示唆する。
 さらに、(001)brcと各オリビン面の界面構造をMDで評価したところ、乾燥条件下では(001)brc/(001)fo界面のみ安定な構造が確認できた。一方、水存在下では、(001)brc/(001)fo界面では安定な構造は確認できず、(001)brc/(011)foおよび(001)brc/(100)fo界面ではそれぞれNagaya et al.(2022)およびMenzel et al.(2025)が報告した方位関係で安定な構造が確認できた。界面エネルギーは、(001)brc/(011)fo、(001)brc/(100)foでほぼ同等の値を示した。
 以上の結果は、Nagaya et al.(2022)およびMenzel et al.(2025)が報告した異なる界面方位が、水存在下で安定に形成されうることを、エネルギー的に示すものとなった。


引用文献
1. Nagaya, T. et al., 2022. Contrib. Mineral. Petrol. 177, 87.
2. Menzel, M. et al., 2025. Contrib. Mineral. Petrol. 180, 30.
3. de Leeuw, N. et al., 2000. Phys Chem Min 27, 332–341.
4. Kawamura, K., 1997. Japan Chemical Program Exchange #77
5. Sakuma, H. et al., 2003. Surface Science 536, 1–3, L396-L402.
6. Miyake, 1998. Mineral. Jour. Lett. 20, 4, 189-194.