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[R2-P-06]Low-temperature neutron diffraction experiment on the end-members of loparite: NaLaTi2O6, NaCeTi2O6

*Ginga KITAHARA1, Kazuhiro Mori1 (1. IMSS, KEK)
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Keywords:

Loparite,Perovskite-type structure,Neutron diffraction,Structure phase-transition

ペロブスカイト型構造(化学組成ABX3」は原子価とイオンサイズが異なるさまざまな陽イオンがAサイトとBサイトを占めた結晶構造である。ペロブスカイト型構造は固溶体の化学組成とさまざまな物理的条件によって、BX6八面体の回転・傾斜とペロブスカイト型構造のカチオンサイト周辺の配位環境が変化し、圧電性、強誘電性、常誘電性、強磁性、電子伝導性、超イオン伝導性など、様々な物性を有する重要な結晶構造の一つである (Nakatani et al., 2016; Yoshiasa et al., 2016, 2018)。
ペロブスカイト型構造の起源は地球上に産出する鉱物CaTiO3の鉱物名perovskiteに由来するが、地球上で観察されるペロブスカイト型鉱物は4種類の端成分からなる固溶体であると報告されており、perovskiteの他にlueshite NaNbO3, tausonite SrTiO3, loparite NaREETi2O6(REE:希土類元素 Rare Earth Element)が挙げられる(Mitchell et al. 2017他)。その中でもlopariteはAサイトにナトリウムとともに多種の希土類元素を固溶し、ランタノイド系La, Ceを多く固溶する特徴をもつ。Lopariteを主組成とするペロブスカイト型鉱物は主にロシアのコラ半島で産出するが、端成分であるNaLaTi2O6の空間群は先行研究にて菱面体晶R-3c(Mitchell et al. 2000)、正方晶I4/mcm(Feng et al. 2016)または直方晶Pbnm(Sun et al. 1997)が報告されている。一方NaCeTi2O6に関しても合成報告例が少なく、端成分であるNaLaTi2O6, NaCeTi2O6の結晶構造については未だ明らかになっていない。この原因はX線回折では電子数の大きい重原子La, Ceに大きく影響され、ペロブスカイト型構造の歪に関連する酸素Oの位置が見えにくく、精密な構造解析ができなかった背景がある。
加えてPopova et al. 2015では天然loparite鉱物を用いた誘電率測定を行い、Tm =157 K付近での強誘電相への一次転移が起こっていると予想している。しかしlopariteの低温領域の詳細な構造解析は行われておらず、lopariteの強誘電相転移の直接的な証拠はいまだに発見されていない。
以上を踏まえて、本研究ではloparite端成分NaLaTi2O6, NaCeTi2O6の結晶合成を行い、大強度陽子加速器施設(J-PARC)の物質・生命科学実験施設(MLF)内にあるBL09 SPICAでの低温中性子回折実験、およびBL08 SuperHRPDでの超高分解能中性子回折実を相補的に扱うことで、希土類元素を有するペロブスカイト型鉱物lopariteの精密構造決定を行った。また低温環境での中性子回折測定も併せて行うことで、loparite構造の強誘電相への相転移メカニズムを観察することを目的とした。
Loparite端成分の合成方法では試薬Na2CO3, La2O3, CeO2, TiO2を混合し、ペレット状にして焼結する固相反応法を用いた(焼結温度・時間:1000℃ 16h, 1200℃ 48h, 1300℃ 48h)。続いてJ-PARC MLF BL09 SPICAを用いた粉末試料NaLaTi2O6, NaCeTi2O6の低温領域100 - 300KでのNPD実験を行った。NaLaTi2O6の回折プロファイルでは100 – 150Kの範囲で d = 0.81, 1.935, 3.87Åにてピーク分裂が観察された。(図a)これは温度低下に伴い結晶構造が低対称性へと変化し、ペロブスカイト型構造に歪みが生じ、軽元素である酸素原子の位置が大きく変位した構造相転移の証拠を示す。しかし一方でNaCeTi2O6は室温300Kで既に構造が歪んでおり、温度低下に伴ってその歪みが解消される方向が観察できる。(図b)すなわち同じloparite鉱物に分類されるLa固溶体とCe固溶体は、異なる結晶構造、異なる構造相転移プロセスを有していることが新たに明らかになった