Presentation Information
[R3-06]Discovery of a new hydrous phase at temperature and pressure conditions of the mantle transition zone
*Hikato Amano1, Takaaki Kawazoe2, Toru Inoue2, Kazutaka Yamaguchi2 (1. Hiroshima Univ. Sci., 2. Hiroshima Univ. Advanced Science and Engineering)
Keywords:
Hydrous phase,Mantle transition zone
1.はじめに
高圧地球科学において、地球内部の鉱物中における「水」の存在の有無およびその存在量とそれに伴う物性値の変化は、この分野が創始されて以降常に最重要テーマの一つである。長年の研究により多くの高圧含水相が発見され、無水であるとされていた名目上無水鉱物においても含水化することが明らかとなった。それらの含水相、水を含む名目上無水鉱物に共通する特徴として「温度が上昇すると脱水分解し、固相中の含水量が低下する」ことが挙げられる。故に、含水相は上部マントル~マントル遷移層において、比較的低温な沈み込むスラブ付近にしか存在しないとされている。ただし、近年では高圧含水相へのアルミニウムの固溶による脱水分解温度の上昇が報告され、注目されている(Li et al., 2022)。対照的にアルミニウムを含まない新規高圧含水相の探索は下火となっており、マントル遷移層までの含水相の探索は概ね完了したという認識も生まれている。本講演では、マントル遷移層に相当する温度圧力条件下において安定に存在できるアルミニウムを含まない含水相を発見したので報告する。
2.実験方法
高温高圧実験は、広島大学設置の川井型マルチアンビル高圧発生装置MAPLE600を用いて行った。実験条件は、16-23.5 GPa、1600-1900℃、これらの温度圧力条件を30分から5時間保持し急冷した。回収試料は、鏡面研磨し、SEMで組織観察を行い、EPMAで化学組成を分析した。回収試料の相は、顕微ラマン分光法により同定した。
3.結果および考察
本研究では、マントル遷移層の温度圧力条件下において安定に存在できるアルミニウムを含まない新規含水相を発見した。既知のアルミニウムを含まない含水相の内、マントル遷移層の圧力条件下にて最も高い温度まで存在可能な相は超含水B相であり、1400℃以下にて脱水分解する(Komabayashi et al., 2006)。一方、新相は16-23.5 GPaの圧力範囲において1600℃で安定であり、既知のアルミニウムを含まない含水相よりも200℃以上高い高温安定性を有する。また、1600℃はマントル遷移層における平均的な温度とされており、先行研究によるとカンラン岩組成ではこの温度圧力条件において含水相は存在せずウォズリアイトなどの名目上無水鉱物が水の貯蔵を担っているとされている。本研究にて発見した新高圧含水相は1600℃にて安定であるためマントル遷移層において水の貯蔵および運搬を担っている可能性がある。
本講演では、この新規高圧含水相に関する研究結果を発表する。
高圧地球科学において、地球内部の鉱物中における「水」の存在の有無およびその存在量とそれに伴う物性値の変化は、この分野が創始されて以降常に最重要テーマの一つである。長年の研究により多くの高圧含水相が発見され、無水であるとされていた名目上無水鉱物においても含水化することが明らかとなった。それらの含水相、水を含む名目上無水鉱物に共通する特徴として「温度が上昇すると脱水分解し、固相中の含水量が低下する」ことが挙げられる。故に、含水相は上部マントル~マントル遷移層において、比較的低温な沈み込むスラブ付近にしか存在しないとされている。ただし、近年では高圧含水相へのアルミニウムの固溶による脱水分解温度の上昇が報告され、注目されている(Li et al., 2022)。対照的にアルミニウムを含まない新規高圧含水相の探索は下火となっており、マントル遷移層までの含水相の探索は概ね完了したという認識も生まれている。本講演では、マントル遷移層に相当する温度圧力条件下において安定に存在できるアルミニウムを含まない含水相を発見したので報告する。
2.実験方法
高温高圧実験は、広島大学設置の川井型マルチアンビル高圧発生装置MAPLE600を用いて行った。実験条件は、16-23.5 GPa、1600-1900℃、これらの温度圧力条件を30分から5時間保持し急冷した。回収試料は、鏡面研磨し、SEMで組織観察を行い、EPMAで化学組成を分析した。回収試料の相は、顕微ラマン分光法により同定した。
3.結果および考察
本研究では、マントル遷移層の温度圧力条件下において安定に存在できるアルミニウムを含まない新規含水相を発見した。既知のアルミニウムを含まない含水相の内、マントル遷移層の圧力条件下にて最も高い温度まで存在可能な相は超含水B相であり、1400℃以下にて脱水分解する(Komabayashi et al., 2006)。一方、新相は16-23.5 GPaの圧力範囲において1600℃で安定であり、既知のアルミニウムを含まない含水相よりも200℃以上高い高温安定性を有する。また、1600℃はマントル遷移層における平均的な温度とされており、先行研究によるとカンラン岩組成ではこの温度圧力条件において含水相は存在せずウォズリアイトなどの名目上無水鉱物が水の貯蔵を担っているとされている。本研究にて発見した新高圧含水相は1600℃にて安定であるためマントル遷移層において水の貯蔵および運搬を担っている可能性がある。
本講演では、この新規高圧含水相に関する研究結果を発表する。