Presentation Information
[R3-07]High-pressure and high-temperature density and the equation of state of dense hydrous phases, MgAl-phase D and Mg-phase D
Daichi MAEDA1, *Toru INOUE1, Yusuke EGI1, Takaaki KAWAZOE1, Yuji HIGO2, Sho KAKIZAWA2, Noriyoshi TSUJINO2 (1. Hiroshima Univ., 2. JASRI)
Keywords:
Dense hydrous magnesium silicate,phase D,equation of state,mantle transition zone,lower mantle
1.はじめに
沈み込み帯における主要な含水鉱物は蛇紋石である。蛇紋石は Dense Hydrous Magnesium Silicate (DHMS) に高圧相転移しながら地球深部に水を運搬する。その中で,Mg-phase D (理想化学式:MgSi₂H₂O₆, 含水量10wt%) はマントル遷移層から下部マントル付近で安定な高圧含水鉱物であり,下部マントルまで水を運搬する候補物質として重要である(Frost & Fei, 1998)。著者らの研究によりこのMg-phase Dには,SiサイトにAl³⁺とH⁺の含水カップリング置換が起き,その置換はAl3+が1 pfu (理想式 MgAlSiH3O6, 含水量15wt%, 以下MgAl-phase D) 付近まで可能であることが明らかとなった(Maeda et al., in preparation)。このMgAl-phase DはMg-phase Dよりも高含水量にも関わらず,26 GPaでは1550℃付近まで安定であり,100℃近く温度安定性が上昇している。MgAl-phase Dはマントル遷移層から下部マントル最上部の圧力条件下で安定であるため,下部マントルへの水の輸送を議論するうえで重要な含水相と考えられる。本研究では,放射光X線その場観察実験により,MgAl-phase D及びMg-phase Dの高温高圧下での状態方程式を明らかにした。そして得られた値を用いて,沈み込むスラブの密度プロファイルを含水量の関数として計算した。
2.実験方法
出発試料のMgAl-phase D及びMg-phase Dは広島大学設置のマルチアンビル型高圧発生装置 (MAPLE600)を用いて合成した。放射光X線その場観察実験はSPring-8 (BL04B1) 設置のマルチアンビル型高圧発生装置 (SPEED MkⅡ) を用いて行った。実験の温度圧力領域は0~28 GPa, 0~1000℃である。温度は熱電対で測定し,圧力は試料に混合したAuの状態方程式から決定した。得られたX線回折パターンから格子定数・格子体積を計算し,バーチ・マーナガン状態方程式を用いて,体積弾性率,その圧力微分,及び熱膨張率を導出した。
3.結果及び考察
MgAl-phase Dの圧力-体積-温度(P-V-T)関係を図に示す。格子体積は(110), (111), (201), (021), (112), (211), (121)の回折線から計算した。室温データの解析からMgAl-phase DではV0 = 87.43 ± 0.01 ų,KT0 = 146 ± 3 ,K’T = 5.2 ± 0.4,Mg-phase DではV0 = 84.84 ± 0.09 ų, KT0 = 168 ± 1 GPa, and K’T = 4.3 ± 0.3が得られた。今回得られた値を用いて沈み込むスラブの密度プロファイルを計算した。沈み込むスラブの温度を1000℃, 周囲のマントルの温度を1600℃と仮定した場合,含水量が5 wt%までは十分重く,沈み込みが可能なことが明らかとなった。
沈み込み帯における主要な含水鉱物は蛇紋石である。蛇紋石は Dense Hydrous Magnesium Silicate (DHMS) に高圧相転移しながら地球深部に水を運搬する。その中で,Mg-phase D (理想化学式:MgSi₂H₂O₆, 含水量10wt%) はマントル遷移層から下部マントル付近で安定な高圧含水鉱物であり,下部マントルまで水を運搬する候補物質として重要である(Frost & Fei, 1998)。著者らの研究によりこのMg-phase Dには,SiサイトにAl³⁺とH⁺の含水カップリング置換が起き,その置換はAl3+が1 pfu (理想式 MgAlSiH3O6, 含水量15wt%, 以下MgAl-phase D) 付近まで可能であることが明らかとなった(Maeda et al., in preparation)。このMgAl-phase DはMg-phase Dよりも高含水量にも関わらず,26 GPaでは1550℃付近まで安定であり,100℃近く温度安定性が上昇している。MgAl-phase Dはマントル遷移層から下部マントル最上部の圧力条件下で安定であるため,下部マントルへの水の輸送を議論するうえで重要な含水相と考えられる。本研究では,放射光X線その場観察実験により,MgAl-phase D及びMg-phase Dの高温高圧下での状態方程式を明らかにした。そして得られた値を用いて,沈み込むスラブの密度プロファイルを含水量の関数として計算した。
2.実験方法
出発試料のMgAl-phase D及びMg-phase Dは広島大学設置のマルチアンビル型高圧発生装置 (MAPLE600)を用いて合成した。放射光X線その場観察実験はSPring-8 (BL04B1) 設置のマルチアンビル型高圧発生装置 (SPEED MkⅡ) を用いて行った。実験の温度圧力領域は0~28 GPa, 0~1000℃である。温度は熱電対で測定し,圧力は試料に混合したAuの状態方程式から決定した。得られたX線回折パターンから格子定数・格子体積を計算し,バーチ・マーナガン状態方程式を用いて,体積弾性率,その圧力微分,及び熱膨張率を導出した。
3.結果及び考察
MgAl-phase Dの圧力-体積-温度(P-V-T)関係を図に示す。格子体積は(110), (111), (201), (021), (112), (211), (121)の回折線から計算した。室温データの解析からMgAl-phase DではV0 = 87.43 ± 0.01 ų,KT0 = 146 ± 3 ,K’T = 5.2 ± 0.4,Mg-phase DではV0 = 84.84 ± 0.09 ų, KT0 = 168 ± 1 GPa, and K’T = 4.3 ± 0.3が得られた。今回得られた値を用いて沈み込むスラブの密度プロファイルを計算した。沈み込むスラブの温度を1000℃, 周囲のマントルの温度を1600℃と仮定した場合,含水量が5 wt%までは十分重く,沈み込みが可能なことが明らかとなった。