Presentation Information
[R3-08]The effect of pressure on the solid solubility of Al3+ into CaTiO3-perovskite
*Takaya Nagai1, Toru Shinmei2, Toru Inoue3, Tetsuo Irifune2 (1. Hokkaido Univ. Sci., 2. Ehime Univ. GRC, 3. Hiroshima Univ. Sci.)
Keywords:
CaTiO3,perovskite,solid solubility of Al,high pressure,structural changes
ABO3で表されるペロブスカイト構造を有する酸化物結晶は、多様なイオンの固溶に寛容である。例えば、チタン酸塩A2+Ti4+O3の場合の固溶メカニズムには、A2+とTi4+を他の2価や4価の陽イオンでそれぞれ置換するものだけでなく、結晶全体の電荷を中性に保つように、2個のA2+を1価と3価の陽イオンでカップル置換(例:2Sr2+→Na++La3+)、A2+とTi4+をそれぞれ3価の陽イオンで置換(例:Ca2++Ti4+→La3++Al3+)、1価と5価の陽イオンでカップル置換(例:Ca2++Ti4+→Na++Nb5+)など多くが知られている。その他に本研究で対象とする、Ti4+を3価の陽イオンで置換すると同時に電荷補償で酸素欠陥を導入するメカニズムもあり、私たちの研究室ではこれまでCaTiO3ペロブスカイトのTi4+→Al3+の置換、すなわち、CaTiO3-CaAlO2.5系の固溶に伴う構造変化やAl3+の局所構造を調べてきた。その結果、大気圧下では約26 mol%まで固溶し、ペロブスカイト構造の対称性が、Al3+の固溶量が約22mol%までは直方晶系であるものの、約25mol%以上では立方晶系、その間の固溶量(23mol%)では正方晶系といったモルフォロジカルな変化をしていくことがわかってきた。一方、高圧下では原子間距離の短縮により、酸素欠陥の生成は欠陥近傍の静電的反発が強くなることが予想され、高圧下では酸素欠陥を生成する固溶メカニズムが好ましくなくなる可能性がある。実際、ペロブスカイト構造をもつMgSiO3ブリッジマナイトへの酸素欠陥を生成する固溶メカニズムによるAl3+の固溶量が、圧力の増加とともに急激に減少することが報告されている[1]。このような背景のもと本研究では、高圧下(10 GPa、1300 ℃)におけるCaTiO3-CaAlO2.5系の相関係について実験的研究を行ったので報告する。なお、この研究成果は、共同利用・共同研究拠点である愛媛大学先進超高圧科学研究拠点(PRIUS)との共同研究(2022-A07、2023-A11、2024-A14)による。
CaTiO3-CaAlO2.5系において、バルクのCaAlO2.5成分が20、40、50、60、80、100 mol%となるような、CaTiO3結晶とバルク組成がCaAlO2.5となるCa3Al2O6とCa12Al14O33結晶の混合物、あるいは、CaTiO3結晶とCaAlO2.5組成ガラスの混合物を準備し、出発物質とした。高圧合成実験は、愛媛大学地球深部ダイナミクスセンター(GRC) に設置されたマルチアンビル超高圧発生装置(ORANGE-3000)を用い実施した。TEL11mmの超硬アンビル、一辺18mmのMgO圧媒体を用い、出発試料は金カプセルに封入し、高温発生にはグラファイトヒーターを用いた。高温高圧の合成条件は、大気圧での結果との比較のために10 GPa, 1300 ℃とし、1~3時間保持した後、急冷回収した。回収試料はXRDとSEM-EDS分析し、評価を行った。
出発試料のバルクのCaAlO2.5成分が20 mol%では直方晶系ペロブスカイト構造相、CaAlO2.5成分が50、60 mol%では立方晶系ペロブスカイト構造相、CaAlO2.5成分が100 mol%ではブラウンミレライト構造相の単相が生成する結果を得た。一方、CaAlO2.5成分が80 mol%の出発物質からの生成相は、CaAlO2.5成分が出発物質よりわずかに少ない約77 mol%の立方晶系ペロブスカイト構造相と微量のブラウンミレライト型CaAlO2.5が共存していることが分かった。その他これまで得られた結果をすべて考慮すると、大気圧1300 ℃では約26 mol%であったCaTiO3-CaAlO2.5系ペロブスカイトのCaAlO2.5成分の固溶限界は、実験前の予想とは異なり、高圧下10 GPa, 1300 ℃では約77 mol%にまで大きく広がり、また、固溶量が約35 mol%以上では立方晶系であることが示唆された。今回の系においては、大気圧下ではCaAlO2.5組成の安定相は存在しない。しかしながら、少なくとも2.5 GPaの高圧下ではブラウンミレライト構造相が安定となり[2]、今回の結果で10 GPaにおいても安定であったことが固溶領域の拡大が関係している可能性がある。
参考文献[1] Z. Liu, T. Ishii, T. Katsura: Geochemical perspectives letters, 5, 12 (2017). [2] V. Kahlenberg, R.X. Fischer, C.S.J. Shaw: American Mineralogist, 85, 1061 (2000).
CaTiO3-CaAlO2.5系において、バルクのCaAlO2.5成分が20、40、50、60、80、100 mol%となるような、CaTiO3結晶とバルク組成がCaAlO2.5となるCa3Al2O6とCa12Al14O33結晶の混合物、あるいは、CaTiO3結晶とCaAlO2.5組成ガラスの混合物を準備し、出発物質とした。高圧合成実験は、愛媛大学地球深部ダイナミクスセンター(GRC) に設置されたマルチアンビル超高圧発生装置(ORANGE-3000)を用い実施した。TEL11mmの超硬アンビル、一辺18mmのMgO圧媒体を用い、出発試料は金カプセルに封入し、高温発生にはグラファイトヒーターを用いた。高温高圧の合成条件は、大気圧での結果との比較のために10 GPa, 1300 ℃とし、1~3時間保持した後、急冷回収した。回収試料はXRDとSEM-EDS分析し、評価を行った。
出発試料のバルクのCaAlO2.5成分が20 mol%では直方晶系ペロブスカイト構造相、CaAlO2.5成分が50、60 mol%では立方晶系ペロブスカイト構造相、CaAlO2.5成分が100 mol%ではブラウンミレライト構造相の単相が生成する結果を得た。一方、CaAlO2.5成分が80 mol%の出発物質からの生成相は、CaAlO2.5成分が出発物質よりわずかに少ない約77 mol%の立方晶系ペロブスカイト構造相と微量のブラウンミレライト型CaAlO2.5が共存していることが分かった。その他これまで得られた結果をすべて考慮すると、大気圧1300 ℃では約26 mol%であったCaTiO3-CaAlO2.5系ペロブスカイトのCaAlO2.5成分の固溶限界は、実験前の予想とは異なり、高圧下10 GPa, 1300 ℃では約77 mol%にまで大きく広がり、また、固溶量が約35 mol%以上では立方晶系であることが示唆された。今回の系においては、大気圧下ではCaAlO2.5組成の安定相は存在しない。しかしながら、少なくとも2.5 GPaの高圧下ではブラウンミレライト構造相が安定となり[2]、今回の結果で10 GPaにおいても安定であったことが固溶領域の拡大が関係している可能性がある。
参考文献[1] Z. Liu, T. Ishii, T. Katsura: Geochemical perspectives letters, 5, 12 (2017). [2] V. Kahlenberg, R.X. Fischer, C.S.J. Shaw: American Mineralogist, 85, 1061 (2000).