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[R3-P-02]Consideration of excess heat capacity on the isobaric heat capacity of olivine-type Mn2SiO4

*Yuta Asami1, Itaru Ohira1, Hiroshi Kojitani1 (1. Gakushuin Univ. Sci.)
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Keywords:

Olivine-type Mn2SiO4,Excess heat capacity,Kieffer model calculation

地球の上部マントルの主要鉱物であるオリビン型(Mg,Fe)2SiO4を熱力学的に取り扱うためには、その端成分であるMg2SiO4およびFe2SiO4の熱力学パラメータが必要となる。このうち、オリビン型Fe2SiO4の定圧熱容量は、格子振動のみの定圧熱容量を上回る過剰の熱容量があることをBenisek et al.(2012)が指摘している。この過剰熱容量はFe2+の場合、結晶場分裂に起因するショットキー異常が原因であると考えられている(Aronson et al. 2007)。この過剰熱容量の大きさは、d電子数の違いで異なることが予想される。そのため、3d電子が熱容量に与える影響を系統的に理解するには、様々な数の3d電子を持つ遷移金属イオンを含んだオリビンについて過剰熱容量を比較することが求められる。本研究では、オリビン型Mn2SiO4において、格子振動寄与による定圧熱容量を格子振動モデル計算により推定し、実測値との比較から過剰熱容量の大きさを検討した。
  Kiefferモデルを用いた格子振動モデル計算では、Sumino (1979)による弾性波速度(VP, VS)から音響モードを、格子力学計算(GULP)を用いた振動モード解析による分散関係を参考に光学モードをモデル化した。200 K以下の低温領域では非調和効果が小さいため、定圧熱容量(CP)と定積熱容量(CV)は等しいとみなし、この低温領域の実測CPデータを再現するように、光学モードの振動状態密度モデル(VDoS)を微調整してCVを算出した。CPは、格子振動モデル計算から得られたCVに非調和効果を表す熱膨張率(α)、体積弾性率(KT)、体積(V)、温度(T)を用いたα2KTVT項を加えて計算した。KTは128 GPa(Sumino, 1979)を使用した。αはα=γth CV/KT Vを用いて、繰り返し計算により求めた。なお、熱的グリューナイゼン定数(γth)は1.06 (Sumino, 1979)とした。
 繰り返し計算の結果、αは2.876×10-5 + 8.620×10-9T + 1.572×10-3T⁻¹ -0.9387T⁻²と最適化された。図1に、オリビン型Mn2SiO4の熱容量測定結果と、Kiefferモデルにより計算されたCVおよびCPを示した。300–830 KのCPデータは本研究でDSC測定により取得したもの、5–380 KはRobie et al.(1982)のCPデータである。実測値とKiefferモデルで計算されたCPは、約650 K付近までは誤差の範囲内で一致しており、650 K以下のMn2SiO4の熱容量は、格子振動のみによる寄与で説明できる。一方、650 K以上では実測値が計算値よりわずかながら大きくなり、過剰熱容量が認められる。この過剰熱容量の大きさは、800 KにおいてBenisek et al.(2012)のオリビン型Fe2SiO4の熱容量の約23%である。Fe2+(3d6)の場合、基底状態の5Dが分裂するためショットキー熱容量の効果は大きい。一方、Mn2+(3d5)の場合は基底状態の6Sは分裂しないが、650 K以上の過剰熱容量は6Sから4Gへの遷移で説明可能である。