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[R3-P-03]Diamond crystallization from silicate and C-H-O fluid system under high-pressure and high-temperature

*Kento Suzuki1, Hiroaki Ohfuji1, Akio Suzuki1 (1. Tohoku Univ.Sci)
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Keywords:

Spontaneous nucleation,Diamond,Olivine,Stearic acid,Oxalic acid

はじめに
 近年の内部包有物の研究により、ダイヤモンドの多くは古い大陸地殻の下にある厚いリソスフェアにおいて、マントル物質と地殻物質の交代反応の結果形成されることが明らかになってきた。しかし、黒色塊状集合体のカーボナードや球晶状のバラスなどの特徴的な多結晶組織を有するダイヤモンドの起源や形成環境については、未だ不明な部分も多い。結晶成長の観点から見ると、そのような多結晶ダイヤモンドは非常に大きな成長駆動力下で、多核形成に端を発して生成されたと予想される。最近の我々の研究より、CH4に富んだ還元的なC-H-O流体がダイヤモンドの自発的核形成を促進することが明らかになり、多結晶ダイヤモンドはそのような極めて流体に飽和した環境で形成される可能性が高い。そこで、本研究ではC-H-O流体とケイ酸塩(出発物質:オリビン)共存系において、どのような条件でダイヤモンドの自発核形成が促進され、成長条件が形態・組織へどのように影響するのかを明らかにすることを目的とし、高温高圧実験を行った。

実験方法
 出発試料として、米サンカルロス産のオリビンの粉末、シュウ酸(C₂H₂O₄)、ステアリン酸(C₁₈H₃₆O₂)をペレット状に成型し、オリビンをシュウ酸、ステアリン酸のいずれかと重ね、またはシュウ酸とステアリン酸で挟み、Ptカプセルに封入し用いた。シュウ酸は実験条件で分解しCO2流体を、ステアリン酸は分解しCH4とH2Oの混合流体を(Yamaoka et al., 2002)生じると期待される。カプセル周囲に酸素フガシティのバッファー材としてMoを配置し、10 GPa、1000~1500 ℃の条件で高温高圧実験を行った。目的圧力へ到達後加熱し、目的温度で1時間保持した後急冷、減圧回収した。回収試料の生成相の同定と組織観察・化学分析にはSEM-EDSを用いた。

結果と考察
 1000 ℃で加熱した実験において、ステアリン酸とオリビンを封入した系では、オリビン側に大きな変化はなく、ステアリン酸側に径50~400 nm程度のグラファイトの板状結晶が生じていた。一方、シュウ酸とオリビンを封入した系では、固体相はエンスタタイトとマグネサイト(MgCO3)の混合よりなり、シュウ酸の分解により生じたCO₂流体とオリビンの反応によって生じたと推測される。もともとシュウ酸のあった部分は空隙となり、径70~200 nm程度のグラファイトの板状結晶が塊状をなしていた。1500 ℃で加熱した実験では、ステアリン酸とオリビンを封入した系で部分溶融組織が観察され、ソリダス相としてエンスタタイト(50~100 μm)が、メルトからの急冷相としてエンスタタイトとフォルステライトのデンドライトが認められた。ソリダス相のエンスタタイト中やメルト急冷相中には自形のダイヤモンド(~2 μm)の生成が認められ、板状のグラファイト(5 μm)も共存していた。一方、シュウ酸とオリビンを封入した実験では、マグネサイトとエンスタタイトからなるデンドライトとその外縁をフォルステライトが被覆する様子が認められた。これはシュウ酸の分解で生じたCO2と出発オリビンの反応で生じたエンスタタイトとマグネサイトの共融メルトの急冷と、メルトから分離したCO2流体に溶けていたフォルステライト成分の析出の結果と解釈される。一方、試料室にはシュウ酸の分解残さと考えられる板状グラファイト(2~10 μm)の集合体が観察され、その内部にも少量の自形ダイヤモンド(~4 μm)が散在していた。また、オリビンをシュウ酸とステアリン酸で挟んだ実験でも同様に、マグネサイトとエンスタタイトからなるデンドライト組織とその外縁を被覆するフォルステライトの析出が観察されたが、ダイヤモンド生成はどちらか片方の流体ソースを用いた実験と比較して明らかに多く、粒径も最大で20 μmと大きなものも認められた。なお、もともとステアリン酸のあった場所にはグラファイトが生じていた。高温高圧下でのシュウ酸の分解によって生じる流体はCO2+H2であるという報告(Wang & Zheng, 2011)があるが、分解の結果準安定グラファイトが生じていることを踏まえると、実際にはCO2とH2Oの混合流体が生じたと考えられる。そのような酸化的な流体共存下では高温条件でもダイヤモンドの生成は限定的であった。ステアリン酸由来のCH4とH2Oを含む還元的な流体存在下ではダイヤモンドの生成量は増えたが、準安定的に生じたグラファイトもまだ多く共存していた。一方、シュウ酸とステアリン酸を用いた実験ではダイヤモンド生成量、サイズが明らかに増加しており、これはCO2とCH4の反応により炭素に高過飽和な状態がつくられダイヤモンドの自発核形成が促進されたものと解釈される。