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[R3-P-05]Experimental study of maximum water content in olivine just above the 410 km discontinuity

*Watanabe Toyoki1, Takaaki Kawazoe1, Kazutaka Yamaguchi1, Toru Inoue1 (1. Hiroshima Uni. Advanced Science and Engineering)
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Keywords:

Olivine,Upper Mantle,Water Content,Multi-anvil

【はじめに】地球内部の深さ約410㎞~660㎞の領域はマントル遷移層と呼ばれ、多くの水を含むことができる。この領域への水の運搬は大部分が沈み込むスラブ中の含水鉱物が担っていると考えられている。一方、かんらん石は地球マントルの深さ410㎞までの約70%を占めており、かつ沈み込むスラブの主要構成鉱物であるため、かんらん石の最大含水量を正確に決定することは水の運搬におけるその役割を明らかにするために重要である。加えて、鉱物の含水化により、相転移境界 (Inoue et al. 2010) や相転移機構 (Ando, Tomioka et al. 2006) が変化することが分かっている。このため、かんらん石の含水量の変化は、現在用いられている含水系の相図を変化させ、地球内部の鉱物分布にも影響を与える可能性がある。かんらん石の含水量については既に先行研究においていくつかの報告があるが (例えば、Kohlstedt et al. 1996, Smyth et al. 2006) 、その値は同じ温度圧力条件でも大きく異なり、最大含水量が~0.89wt%までの範囲で変化している。本研究では、そのばらつきの原因を明らかにし、かんらん石の最大含水量を精密に決定することを目的に、実験的研究を行った。【手法】含水かんらん石の高温高圧合成実験は、川井型マルチアンビル高圧発生装置MAPLE600を使用して行った。実験条件は、12 GPa, 1100~1400℃, 保持時間30分~3時間とした。出発物質はMg2SiO4 にH2Oを5 wt%含むようにMg(OH)2, MgO, SiO2の粉末を混合して準備した粉末混合体を使用した。試料はAuPdカプセルに封入した。回収した2つのカプセルのうち1つの試料は鏡面研磨を行った後、SEMで組織観察し、EPMAで化学組成を測定した。また、もう1つのカプセルはFTIRやSIMSにより分析する予定である。含水量はEPMA測定のトータル欠損値から推定した。今回の実験の場合、揮発性成分はH2O成分のみの閉鎖系実験であるため、含水かんらん石のトータル欠損値は、H2O成分の寄与のみであると考えられる。このためこのトータル欠損値についても、H2O EPMA吸収補正(ZAF補正)(H2Oの吸収を考慮した補正)を施し、含水量を推定した。【結果と考察】本研究で得られた最大の含水量は、圧力12 GPa、1250℃、30分保持の試料で検出された0.67 wt%であった。尚、今回保持時間30分と1時間で比較したが、後者の方が含水量が低くなった。この結果は30分保持では平衡状態に達していない可能性を示しており、今後保持時間を変化させ、その傾向を更に観察する予定である。本研究でも温度依存性についてはSmyth et al. (2006) と同じような傾向を示したが、含水量はSmyth et al. (2006)と比較して全体的に低い値を示した。この理由として、Smyth et al. (2006)では含水量の決定にFTIRを用い、本研究ではEPMAのトータル欠損を用いたことが考えられる。FTIR測定では含水量を導出するcalibration factorに問題がある可能性があると共に、試料中に存在する含水鉱物包有物の存在が高含水量を示した可能性があり、これらの問題点を今後明らかにしていく予定である。その手法については、先行研究と同様のFTIR測定および含水量を定量的に測定可能なSIMS測定により含水量を決定し、比較・検討する予定である。尚、含水量の温度変化の傾向については、1100℃では回収試料中に高圧含水相Phase Eが存在したため、一方1300℃以上では温度上昇に伴いメルトに水が分配されたため減少したと考えられる。