Presentation Information
[R3-P-14]Pressure scale cross-evaluation in the multi-megabar region
*Takeshi SAKAI1, Yuki Nakamoto2, Hirokazu Kadobayashi3 (1. GRC, Ehime University, 2. KYOKUGEN, Univ. of Osaka, 3. JASRI)
Keywords:
Pressure scale,Toroidal type DAC,Equation of state
地球よりも大きな質量をもつ系外惑星が多数発見されるようになり、惑星深部科学の研究圧力領域は地球中心圧力を超える範囲まで拡がりを見せている。このような大きな惑星の深部を理解するためには極限圧力環境を実験的に再現する必要がある。ダイヤモンドアンビルセル(DAC)は地球中心に及ぶ広範な圧力条件を実現できる静的圧縮実験手段として広く利用されてきたが,従来のDACでは400 GPa超の圧力発生は困難であった。これを可能にする手法として2段式DAC(ds-DAC)(Dubrovinsky et al. 2012)とトロイダル型DAC(t-DAC)(Dewaele et al. 2018)が注目されている。これまでにそれぞれの手法について多くの追試 (ds-DAC, Dubrovinsky et al. 2015; Dubrovinskaia et al. 2018; Sakai et al. 2015, 2018, 2020) (t-DAC, Jenei et al. 2018; Zurkowski et al. 2024; Sakai et al. 2025) が行われている一方、これらの研究における実験発生圧力はそれぞれ異なる圧力スケールにより決定されていることも多く、絶対的な値としての信頼性に加えて、相対的な関係、すなわち実際にはどちらの実験の方が圧力が高いのか?といったことでさえはっきりしないのが問題であった。
そこで我々は2つの圧力スケール物質を同時圧縮することで圧力スケールの相対的関係性を把握する実験を行った(Sakai et al. 2025)。具体的には鉄、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、白金、金、酸化マグネシウムについて異なる7種の組み合わせで、最大で430 GPaまでの圧縮実験を行った。特に高い圧力の実験にはキュレット径16~20 umのt-DACを用いた。高圧下の試料の格子体積はSPring-8 BL10XUおよびBL37XUにおいてX線回折実験を行い測定した。本研究の結果に加えて多くの先行研究の圧縮データを組み込み、上記物質に塩化ナトリウムを加えた9つの物質の体積-体積関係を明らかにした。この体積-体積関係は圧力スケールとは独立した実験測定結果であり、既存圧力スケールの相互比較が可能となると同時に、任意の一次圧力スケールに対して内部整合的な状態方程式群を提供する。圧力スケールの相互比較の例としては、近年報告されたRamp compressionに基づくCu,Au,Pt,Feの状態方程式(Fratanduono et al. 2020; 2021; Smith et al. 2018)について相互比較すると、Cu,Au,Feは3%の誤差範囲内で一致するが、Ptは400 GPa領域で7%程高い圧力を与える傾向にあることが分かった。また上述のt-DACを用いた報告は最初600 GPaの発生を報告したDewaele et al. (2018)によるただ一つの実験を除いて、他全ての実験は500 GPaに到達していないことが明らかとなった。t-DACは地球中心圧力を超える圧力発生を可能とする手法として有用ではあるが、500 GPa以上の圧力領域への適用を確実なものとするにはさらなる技術開発が必要である。
そこで我々は2つの圧力スケール物質を同時圧縮することで圧力スケールの相対的関係性を把握する実験を行った(Sakai et al. 2025)。具体的には鉄、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、白金、金、酸化マグネシウムについて異なる7種の組み合わせで、最大で430 GPaまでの圧縮実験を行った。特に高い圧力の実験にはキュレット径16~20 umのt-DACを用いた。高圧下の試料の格子体積はSPring-8 BL10XUおよびBL37XUにおいてX線回折実験を行い測定した。本研究の結果に加えて多くの先行研究の圧縮データを組み込み、上記物質に塩化ナトリウムを加えた9つの物質の体積-体積関係を明らかにした。この体積-体積関係は圧力スケールとは独立した実験測定結果であり、既存圧力スケールの相互比較が可能となると同時に、任意の一次圧力スケールに対して内部整合的な状態方程式群を提供する。圧力スケールの相互比較の例としては、近年報告されたRamp compressionに基づくCu,Au,Pt,Feの状態方程式(Fratanduono et al. 2020; 2021; Smith et al. 2018)について相互比較すると、Cu,Au,Feは3%の誤差範囲内で一致するが、Ptは400 GPa領域で7%程高い圧力を与える傾向にあることが分かった。また上述のt-DACを用いた報告は最初600 GPaの発生を報告したDewaele et al. (2018)によるただ一つの実験を除いて、他全ての実験は500 GPaに到達していないことが明らかとなった。t-DACは地球中心圧力を超える圧力発生を可能とする手法として有用ではあるが、500 GPa以上の圧力領域への適用を確実なものとするにはさらなる技術開発が必要である。