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[R4-04]Characterization of the mixed-layer structure in “hydrobiotite” using micro-XRD

*Toshihiro KOGURE1,6, Kazuya MORIMOTO2, Ryosuke KIKUCHI3, Kenji TAMURA4, Taiga OKUMURA1, Shingo YOKOYAMA5, Asuka YAMAGUCHI6 (1. Waseda Univ., 2. AIST, 3. Hokkaido Univ., 4. NIMS, 5. CRIEPI, 6. Univ. Tokyo)
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Keywords:

vermiculite,hydrobiotite,Mixed Layer,micro-XRD,Palabora

Vermiculite(蛭石)はO10(OH)2当たりの層電荷が0.6~0.9で,層間が水和したあるいは水和可能な2:1型層状ケイ酸塩として鉱物学的に定義される.一方,通常見られる試料はbiotiteなどの3八面体型雲母が風化により層電荷を減少させ,層間のKを水和したMgなどで置換した風化生成物がほとんどであり,さらにこの置換が不完全なために混合層構造となったものにもこの呼称が使われることが多い.一方hydrobiotiteはKの層間と水和Mgなどの層間(あるいはbiotiteとvermiculiteの各単位層)が交互に積層した1:1規則型混合層に与えられた鉱物名である(Brindley et al., 1983).よく知られた南アフリカPalabora鉱山で産する”vermiculite”の主体はこのようなbiotiteとvermiculiteの混合層鉱物であるが,日本粘土学会は参考粘土試料として”hydrobiotite”という名称で配布している.この試料の粉末XRDパターンにはvermiculiteとbiotiteのそれぞれ約1.4 nmと1.0 nmの001底面反射のピークと共に,その間に現れる混合層からのピークは2つの極大を示す.Kikuchi and Kogure (2018) は異なるWb/Wv比(WbWvはbiotite,vermiculite各単位層の割合,Wb + Wv = 1)をもつ2種類の混合層構造を仮定してこのピークの説明を試みた.今回はこのモデルを検証することを主な目的として,大面積2次元検出器を有する微小領域(μ-)XRDによって南ア産hydrobiotite試料の~1mm程度の単結晶粒子一つ一つからの底面反射回折パターンを測定した.さらにシミュレーションプログラム(Sybilla)によって高角の底面反射角度等も再現できる混合層構造のパラメータを推定するとともに,vermiculite層の層間をセシウム(Cs)でイオン交換した試料をADF-STEMで観察することで,混合層構造の直接観察を試みた.1 mm程度の板状粒子数十個をスライドガラス上に両面テープを用いて行列状に配置し,μ-XRD測定用の試料とした.使用したμ-XRDは東京大学大気海洋研究所のBruker D8 DISCOVER PLUSで,マイクロフォーカス型の管球(Bruker IμS)で発生したCu線から2次元多層膜ミラーを通して得られた平行ビームを直径0.3 mmのコリメータと0.05mmのスリットで制限して試料に照射した.試料から散乱したX線は,2D検出器(Bruker EIGER2 R 500K)を試料から171 mmの距離に設置して記録した.走査速度は約2.7° (2θ)/minで2θ = 2-40°の範囲に現れる底面反射(00l)による2次元回折パターンを測定し,通常の1次元パターンに変換した.一方,Csによるイオン交換は、試料を乗せたスライドガラスを室温下で15 mmol L⁻¹ CsCl水溶液(30 mL)に24時間浸漬し、溶液を新たに入れ替えてさらに24時間浸漬させることで行った.この試料からFIB(Hitachi High-Tech FB-2100)により粒子表面より薄膜試料を作製し,JEOL JEM-F200(200 kV)を用いてADF-STEM像を記録した.μ-XRD測定の結果,1.4 nm(vermiculite)あるいは1.0 nm(biotite)のピークを示す粒子は非常に稀であるとともに,混合層となった各粒子の回折パターンはほぼ2種類のものに分かれることが明らかとなった(Fig. 1).その典型的な実測パターンを再現する混合層のパラメータをSybillaによって求めた.Vermiculiteとbiotiteの粒子から得られた底面反射回折パターンを再現する両鉱物の単位層の構造(元素の種類とその占有率,z座標等)を探索し,それを基に決定した2種類の混合層のWb/Wv比とPii(存在割合が小さい方の単位層が連続して積層する確率)は,ひとつはWb/Wv = 60/40,Pvv = 0.01, もうひとつはWb/Wv = 45/55,Pbb = 0.083となり,Kikuchi and Kogure (2018)とほぼ同等な結果となった.特にvermiculite層の少ない混合層はPvv がほぼ0でいわゆるMPDO(Maximum Possible Degree of Ordering)の積層構造となっていることが明らかとなった.この他ADF-STEMの観察及びPalabora鉱山以外のvermiculite/hydrobiotiteについての同様な解析を現在進めており,それらについても本発表で報告する予定である.