Presentation Information
[R4-P-01]Observation of skeletal structure of reef-building coral Acropora sp.
Momoka Matsuno1, *Satoko MOTAI1 (1. Yamagata University)
Keywords:
reef-building coral,aragonite,skeleton,Acropora
造礁サンゴ骨格はアラゴナイト(CaCO₃)から形成される。骨格に含まれるSr/Caや酸素同位体比等の変動は骨格形成時の周辺環境を反映することが知られている。環境復元には年輪が明瞭であり、骨格が塊状で同心円状に成長するPorites sp.が用いられている。近年、飼育実験からAcropora sp.骨格の微量元素も生息環境を反映して変動することが明らかになった。さらにAcropora sp.は沖縄のサンゴ礁においてPorites sp.より生息域が広い点において、新たな環境復元プロキシーとしての利用が期待されている。しかし、Acropora sp.は枝状骨格を形成し、骨格に年輪はなくまた骨格成長過程がわかっていない。そこで、本研究ではAcropora sp.の骨格組織観察から骨格成長様式を検討することを目的とする。 試料はA. digitifera、A. tenuis、A. robustaの骨格を用いた。CTスキャンを行ったのち、全体構造の観察を行った。その後、薄片を作成し光学顕微鏡下で骨格組織観察を行った。カーボン蒸着を行った後に走査型電子顕微鏡を用い、骨格微細構造の観察、化学組成分析を行った。 CTスキャンからA. digitifera、A. tenuis、A. robustaいずれもaxial coralliteとradial coralliteが確認された。光学顕微鏡で観察したところ、骨格は色の違いから筋状の濃褐色の領域、淡褐色域、褐色域の3領域に分けられる。それぞれを走査型電子顕微鏡で観察すると濃褐色の筋は円状の空洞が連なっており、淡褐色域では濃褐色の筋部分から針状の結晶が放射状に伸びていた。濃褐色の筋と淡褐色域の結晶組織は連続的である。このことから濃褐色の領域が形成されたのち、続けて淡褐色域が形成したと考える。褐色域では長径数十µmの楕円状組織が見える。楕円状内の結晶方位はほぼ一様の方向である。淡褐色域と褐色域では結晶配列が大きく違い、結晶組織は不連続的である。このことから褐色域は淡褐色域と異なる骨格成長の形式だと考えられる。淡褐色域と褐色域はBSE像ではコントラストが異なり、淡褐色域はより暗く見える。よって褐色域より軽元素に富むと考えられる。このような特徴はA. digitifera、A. tenuis、A. robustaのいずれにも確認された。この3種の骨格成長様式は濃褐色の筋を石灰化中心として淡褐色域が成長し、その後に褐色域が成長するという2段階の成長過程があると考えられる。Porites sp.にみられる年輪や成長縞といった連続的な時間軸を示す組織は観察されなかった。Acropora spp.を環境復元プロキシーとして用いる際は、一部に連続的な成長がみられる濃褐色の筋のある領域が化学分析の候補と考えられる。