Presentation Information
[R5-03]Observations of altered low-Ca pyroxene in the Allende CV3 chondrite using aberration corrected scanning transmission electron microscopy
*Ichiro Ohnishi1 (1. JEOL Ltd.)
Keywords:
CV3 chondrite,Allende,alteration,pyroxene,biopyribole
はじめに:低Ca輝石はコンドライト隕石のコンドリュール主要構成鉱物の一つである。CV3コンドライトでは、低Ca輝石は鉄-アルカリ-ハロゲン交代変成作用の一環として、Feに富むカンラン石へさまざまな程度に変質していることが知られている[1]。その変質条件は、再現実験やシミュレーション計算などにより、ある程度の推測はなされている[2&3]が、詳細な過程に関してはまだ議論の余地がある。本研究では、その変質過程に関する新たな知見を得ることを目的として、収差補正走査透過電子顕微鏡(STEM)により、アエンデCV3コンドライト隕石中の低Ca輝石変質組織の原子スケールでの観察を試みた。
試料&手法:本研究では、アエンデ隕石の研磨薄片を通常の岩石学的観察を行った後、目的とする領域から集束イオンビーム装置(JEOL JIB-4501)を用いて超薄切片を作成した。作成した超薄切片は、素子面積158 mm2のウィンドウレス・シリコンドリフト検出器を2本備えた(検出立体角2.2 sr)加速電圧300 kVタイプの収差補正STEM(JEM-ARM300F2)[4]を用いて観察・分析した。
結果:本研究で対象とした低Ca輝石は、斑状カンラン石-輝石コンドリュールの斑晶として存在し、部分的にFeに富むカンラン石(Fa40-50)に置換され、脈状組織(幅<1 μm)を含むことが多い。STEM観察により、脈状組織は細粒(<50-300 nm)のFeに富むカンラン石多結晶より成り、少量の磁鉄鉱やFe-Ni硫化物、空隙(<20-50 nm)を含む。また、脈状組織近傍には高Ca輝石が孤立状粒子(<10-300 nm)として存在し、さらに高Ca輝石は脈状組織のFeに富むカンラン石と低Ca輝石の境界に沿って非常に薄い層(<3 nm)としても存在する。これらの高Ca輝石は、低Ca輝石とトポタクティックな方位関係を有する。さらに、孤立状の高Ca輝石粒子中には、積層不整や二重あるいは三重鎖などの多重鎖ケイ酸塩ラメラが認められ、これらのラメラは高Ca輝石の(010)に平行に配向して存在している(図1)。多重鎖ケイ酸塩ラメラは高Ca輝石にのみ存在し、しばしば低Ca輝石との境界で途切れている(図1)。
考察:本研究により、アエンデCV3コンドライト隕石中の低Ca輝石の変質組織中には、Feに富むカンラン石に付随して高Ca輝石が存在することが明らかとなった。また、高Ca輝石中には多重鎖ケイ酸塩ラメラが多数含まれていることが分かった。これらの多重鎖ケイ酸塩は高分解能TEMによる先行研究にてアエンデ中に発見された含水バイオパリボール[5]と類似する。高Ca輝石がFeに富むカンラン石で構成される脈状組織の近くに限定的に存在することは、これらの高Ca輝石が、低Ca輝石がFeに富むカンラン石に変質する過程で二次的に形成されたことを物語る。また、多重鎖ケイ酸塩ラメラが高Ca輝石中にのみ存在することは、高Ca輝石の形成過程は含水鉱物の形成を伴う水質変成に大きく関係する可能性が高いことを示している。
引用文献: [1] Krot A.N. et al. (1995) Meteoritics 30:748‒775. [2] Ganino C. and Libourel G. (2017) Nature Communication, 8(1): 261-271. [3] Suttle M.D. et al. (2022) GCA, 318: 83-111. [4] Ohnishi I. et al. (2018) e-J. Surf. Sci. Nanotech 16:286-288. [5] Brearley A.J. (1997) Science 276:1103-1105.
試料&手法:本研究では、アエンデ隕石の研磨薄片を通常の岩石学的観察を行った後、目的とする領域から集束イオンビーム装置(JEOL JIB-4501)を用いて超薄切片を作成した。作成した超薄切片は、素子面積158 mm2のウィンドウレス・シリコンドリフト検出器を2本備えた(検出立体角2.2 sr)加速電圧300 kVタイプの収差補正STEM(JEM-ARM300F2)[4]を用いて観察・分析した。
結果:本研究で対象とした低Ca輝石は、斑状カンラン石-輝石コンドリュールの斑晶として存在し、部分的にFeに富むカンラン石(Fa40-50)に置換され、脈状組織(幅<1 μm)を含むことが多い。STEM観察により、脈状組織は細粒(<50-300 nm)のFeに富むカンラン石多結晶より成り、少量の磁鉄鉱やFe-Ni硫化物、空隙(<20-50 nm)を含む。また、脈状組織近傍には高Ca輝石が孤立状粒子(<10-300 nm)として存在し、さらに高Ca輝石は脈状組織のFeに富むカンラン石と低Ca輝石の境界に沿って非常に薄い層(<3 nm)としても存在する。これらの高Ca輝石は、低Ca輝石とトポタクティックな方位関係を有する。さらに、孤立状の高Ca輝石粒子中には、積層不整や二重あるいは三重鎖などの多重鎖ケイ酸塩ラメラが認められ、これらのラメラは高Ca輝石の(010)に平行に配向して存在している(図1)。多重鎖ケイ酸塩ラメラは高Ca輝石にのみ存在し、しばしば低Ca輝石との境界で途切れている(図1)。
考察:本研究により、アエンデCV3コンドライト隕石中の低Ca輝石の変質組織中には、Feに富むカンラン石に付随して高Ca輝石が存在することが明らかとなった。また、高Ca輝石中には多重鎖ケイ酸塩ラメラが多数含まれていることが分かった。これらの多重鎖ケイ酸塩は高分解能TEMによる先行研究にてアエンデ中に発見された含水バイオパリボール[5]と類似する。高Ca輝石がFeに富むカンラン石で構成される脈状組織の近くに限定的に存在することは、これらの高Ca輝石が、低Ca輝石がFeに富むカンラン石に変質する過程で二次的に形成されたことを物語る。また、多重鎖ケイ酸塩ラメラが高Ca輝石中にのみ存在することは、高Ca輝石の形成過程は含水鉱物の形成を伴う水質変成に大きく関係する可能性が高いことを示している。
引用文献: [1] Krot A.N. et al. (1995) Meteoritics 30:748‒775. [2] Ganino C. and Libourel G. (2017) Nature Communication, 8(1): 261-271. [3] Suttle M.D. et al. (2022) GCA, 318: 83-111. [4] Ohnishi I. et al. (2018) e-J. Surf. Sci. Nanotech 16:286-288. [5] Brearley A.J. (1997) Science 276:1103-1105.