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[R5-07]On the Possibility of Multiple Parent Bodies of “Angrite” Meteorites as Inferred from Petrography, Mineral Compositions, and Oxygen Isotopic Compositions
*Rikuto Honda1, Rider-Stokes G. Ben2, Sojiro Yamazaki1, Akira Yamaguchi3, Hideaki Hayashi4, Takashi Mikouchi5 (1. Fac. Sci. Univ. Tokyo, 2. School of Phys. Sci., The Open Univ., 3. Natl. Inst. of Polar Res., 4. Nat’l. Mus. Nat. Sci., 5. Univ. Museum, Univ. Tokyo)
Keywords:
Achondrite,Angrite parent body,Oxygen isotopic composition,Olivine,Anorthite
はじめに:アングライトは太陽系最古の結晶化年代を示す分化隕石グループであり (Keil, 2012)、その起源の解明は初期太陽系における天体進化を議論する上で重要である。アングライトの酸素同位体組成(angrite fractionation line:AFL)は、D17Oが地球(terrestrial fractionation line:TFL)の少し下にプロットされるトレンドを示す(Greenwood et al., 2017)。しかし近年、急冷されたアングライトの中に、カンラン石外来結晶はAFLの値を示す一方、石基はTFLより上にプロットされる試料が確認され(NWA 12320、A 12209)、アングライト的鉱物組成を持つ天体同士の衝突溶融過程が議論されている(Rider-Stokes et al., 2023)。本研究では、最近新しく見つかったアングライトBiZ 011の岩石組織、鉱物組成、酸素同位体組成について、他のアングライトと比較を行い、アングライトが複数の母天体を持つ可能性を検討した。試料・方法:BiZ 011およびQuenched(A 12209など6試料)、Slowly-cooled(NWA 16129, Fezzou 002など3試料)の薄片試料について、偏光顕微鏡とFE-SEM(JSM-7000F @東大)による岩石組織・構成鉱物観察およびEPMA(JEOL JXA-8200 @極地研, JEOL JXA-8230@国立科博)とFE-EPMA(JEOL JXA-8530F @東大)による構成鉱物の主要元素組成分析、放射光実験による灰長石中のFe-XANES測定(BL-4A@高エネ研)を用いた鉄価数比の推定、laser-assisted fluorination法によるBiZ 011の酸素同位体組成分析(英国オープン大)を行った。結果:BiZ 011の主要鉱物は、灰長石(An99.5-100)、Caに富むカンラン石(Fa39.8-73.9Ln1.5-6.8、Fe/Mn=61-106)、Al-Tiに富む輝石(Fs12.5-37.0Wo50.2-57.8、Al2O3 4.9-15.0 wt.%、TiO2 0.3-4.8 wt.%、Fe/Mn=52-285)で、副成分鉱物にはキルシュスタイナイト(Fa39.8-48.9Ln44.0-47.5、Fe/Mn=48-87)、Caリン酸塩、トロイライト、スピネル、ローナイト、FeNi合金が見られた。岩石組織は、輝石をオイコクリスト、カンラン石、灰長石をチャダクリストとするポイキリティック組織を示す領域(P領域)と灰長石が大部分を占める領域(A領域)の異なる2つの組織が確認でき、灰長石とカンラン石には衝撃変成の影響が見られた。カンラン石、輝石は化学的ゾーニングを示し、細粒な粒子は互いに組成が異なる。2つの領域間で鉱物組成に差が見られ、P領域では相対的にMgに富む一方、A領域ではよりFeに富む組成を示し、A領域でのみカンラン石-キルシュスタイナイトの離溶組織が見られた。灰長石中の鉄価数比(Fe3+/ΣFetotal)は~30 – 37%、全岩の酸素同位体組成(Δ17O)は二つの分析した岩片について0.083 ± 0.014 ‰ (d18O = 4.228 ± 0.004 ‰)と0.028 ± 0.034 ‰ (d18O = 4.169 ± 0.012 ‰)であった。考察・結論:BiZ 011は、他のアングライトと比較して構成鉱物に相違はなく、ポイキリティック組織やカンラン石-キルシュスタイナイトの離溶組織はSlowly-cooledと類似している。灰長石は端成分組成、カンラン石と輝石の組成はQuenchedとSlowly-cooledの中間を示し、Fe/Mn比が一致する。カンラン石の離溶組織から推定される冷却速度は0.1-0.25 ℃/年であり、Slowly-cooled(NWA 16129:0.0075-0.05 ℃/年、Fezzou 002:0.05-0.1 ℃/年)と比べてやや速い。灰長石中のFe3+/ΣFetotalは他のアングライト(<~20%)よりも大きく、Δ17OはAFLから大きく外れた値を示す。 岩石・鉱物学的にはアングライトであるものの、酸素同位体組成が異なることから、BiZ 011は他のアングライトの母天体と異なるが類似組成のマグマを形成した母天体を起源に持つと考えられ、アングライト的メルト組成を形成する火成活動を行っていた天体が複数存在したことを示唆する。特に、これまで報告されている特異な酸素同位体組成を持つQuenchedの石基と近い酸素同位体組成を持つため、共通の起源を持つ可能性があり、今後、さらに詳しい鉱物学的研究が必要である。