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[R5-12]On the relationship between the proportion of different lithological fragments composing the asteroid Ryugu samples and CI chondrites and the inner structure of the parent body

*Takashi MIKOUCHI1, Minami Masuda2, Hideto Yoshida2, Michel E. Zolensky3, Tomoki Nakamura4 (1. Univ. Museum, Univ. of Tokyo, 2. Grad. Sch. Sci., Univ. of Tokyo, 3. NASA-JSC, 4. Grad. Sch. Sci., Tohoku Univ.)
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Keywords:

Asteroid Ryugu,Aqueous alteration,CI Chondrites,Brecciation

はじめに:これまで我々は、小惑星リュウグウ試料中に存在する様々な水質変成度を持つ岩相の存在量を定量的に解析し、CIコンドライト(Orgueil隕石)と比較を行って来た [1]。その結果、異なる岩相における角レキ岩片のサイズやその存在量は、リュウグウ試料とOrgueil隕石とでほぼ一致することが示された。これらの“CIコンドライト的”物質中に見られる水質変成度の異なる岩相の分布差異を解明することは、母天体の内部構造や起源を理解する上で極めて重要である。そこで、本発表では、既存データに新たに分析したリュウグウ試料およびCIコンドライト隕石のデータを加えたので、これらの比較結果の更新データについて報告する。試料と分析手法:本研究のデータ解析には、リュウグウ試料の初期分析「石」の物質分析とAO1により分析された(Chamber A試料の16研磨片とChamber C試料の34研磨片)リュウグウ試料合計50個の研磨片のFE-EPMA元素マップを用いた [2]。リュウグウ試料の総分析面積は59.69 mm²(Chamber A:18.55 mm²、Chamber C:41.14 mm²)で、岩相分類には、[3] で提案された7つの岩相(岩相I〜VIとその他)を採用し、各研磨片で境界線を決めた後に、Adobe PhotoshopとImage Jによって、各角レキ片の面積を算出した。比較のため、パリ自然史博から借用したOrgueilの研磨片(約2×2 cm)にも同じ分析を行い、総面積103.59 mm²で岩相割合を求めた。また、新しいCIコンドライトOued Chebeika 002とも比較を行ったが、岩相の境界が不明瞭で定量的な解析は行っていない。結果と考察:リュウグウ試料では、[2] で“主要な岩相”とされた岩相III(炭酸塩はドロマイトのみ)が引き続き全体のほぼ半数を占め(41.84%)、次いで、岩相II(カンラン石を含む、あまり水質変成の進んでいない岩相)も多く見られた(22.05%)。特に、岩相IIの岩片はChamber Cの研磨片にのみ存在していた [1]。Orgueilについては、これまでの分析面積65.98 mm²から、103.59 mm²へ大幅に面積が増えたが、すべての岩片は引き続き [3] で提案された岩相のいずれかに分類することができた。この結果は、この岩相分類がCIコンドライト的試料の分類に有効であることを裏付けている。さらに、新しい結果は、これまでの岩相面積比とほとんど変わらず、既報の約50 mm²の分析面積 [1] でも、これら試料における代表的な岩相比率が得られることを示している。これは、おそらく典型的な岩片サイズが約0.1 mmと微小であるためと考えられる。また、更新されたOrgueilのデータでは、以前の結果と比較して、岩相VI(炭酸塩をほとんど含まない)の比率がリュウグウ試料より高くなっている [3]。これは、リュウグウ試料はおそらく元の炭酸塩(主にドロマイト)を保持しているのに対し、Orgueilは地球での風化によりドロマイトが溶出し、岩相IIIまたはIV(炭酸塩はドロマイト+マグネサイト)から形成された岩相VIが相対的に増加したことが考えられる。また、リュウグウ試料とOrgueilに対し、Oued Chebeika 002では角レキ化はあまり顕著に見られない。これはこの試料では岩相I/IIが存在せず、主に岩相III、IV、V(大きなドロマイトの集合体)から構成されていることが原因と考えられる。つまり、Oued Chebeika 002の角レキ岩片は、より強い水質変成を受けた結果、泥状の性質が強かったため、角レキ後に混合した岩片の境界が不明瞭となったことが推測される。結論:本研究により、小惑星リュウグウ試料とOrgueil CIコンドライトの鉱物学的な類似性が一層明確になった。両者ともに岩相IIおよびIIIの岩片を豊富に含み、元天体の破壊後に中程度の水質変成を受けた岩相が主要な再堆積物として再集積されたことが示唆される。これらの材料は、親天体の表層近くの層から中間層にかけて由来していると考えられる [1]。一方で、Oued Chebeika 002は表層物質をほとんど含まず、主に中間層の物質から構成されていることが示された。文献:[1] Masuda M. et al. (2025) LPS LVI, #2090. [2] Nakamura T. et al. (2022) Science 10.1126/science.abn8671. [3] Mikouchi T. et al. (2022) JAXA Hayabusa Symp. 2022, S22-01.