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[R5-P-01]Constrain of Temperature Conditions during the Crystallization of Porphyritic Chondrules: Reproduction of Crystal Textures Based on Gas-Jet Levitation Experiments

*Kana Watanabe1, Tomoki Nakamura1, Tomoyo Morita1, Changkun Park2 (1. Tohoku Uni.Sci, 2. Division of Polar & Earth Sciences, KOPRI)
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Keywords:

chondrule,chondrite,levitation experiment,olivine,crystallization

【目的】コンドライトの主要構成物であるコンドリュールは、原始太陽系星雲中でダスト等の前駆物質が高温で加熱され溶融し、冷却されて形成されたと考えられている。コンドリュール形成時の条件のうち加熱温度・冷却速度の推定はコンドリュールを形成した加熱イベントの特定に繋がるため特に重要だが、未だ議論が続いている。本研究ではこれら条件の制約を目指し、星雲中を模擬した非接触(浮遊)状態での結晶化実験を行っている。うち本発表では、最も主要である斑状タイプのコンドリュールに着目し、その典型的な結晶組織(オリビン・パイロキシンの斑晶とガラス)が再現される加熱温度・加熱時間(冷却速度を想定)の関係性について検討する。

【手法】実験:ガスジェット浮遊装置では、Arガスで浮遊させた出発物質にCO2レーザーを照射し、レーザーの出力を調節して加熱・冷却を行う。まず400℃/s程度で昇温した後、1400~1850℃までの特定の温度で5~30分程度温度を保持し、その後レーザーの電源を切り急冷した。保持した温度を加熱温度、保持した時間を加熱時間と呼ぶ。出発物質組成は天然のType IAコンドリュールの平均的なバルク組成に近い組成から微量元素と鉄を除いた組成となるよう酸化物粉末(MgO, SiO2, CaO, Al2O3)を混合した。MELTSで計算した出発物質のリキダスは1786℃であった。この粉末をレーザーで完全溶融させ急冷させることで生成されるガラス球を出発物質として用いた。ガラス球採用の理由は、従来の斑状コンドリュール結晶組織の再現実験(Lofgren & Russell, 1986)で出発物質にガラスが用いられたため・ガラス球の合成が容易であるためである。ガラス球を昇温し加熱温度に達した直後、温度保持せずに急冷した試料をSEMで観察すると、ガラスが失透し幅0.3μm程度の樹枝状~棒状の微結晶とその隙間のガラスが確認された。
観察FE-SEM/EDSまたは偏光顕微鏡を用い、実験後の試料と比較用の天然コンドリュールの観察・化学組成分析を行った。天然試料は国立極地研究所から借用したY-82038,61-3 (H3.2), Y-81020,41-1 (CO3.0), 韓国極地研究所から借用したEET 14017 (LL3.05)を用いた。

【結果・考察】実験後の試料の結晶組織は、(1)斑状(オリビンの斑晶から成る)、(2)棒状オリビン(棒状のオリビンから成る)、(3)(1)と(2)の混合という3つに分けられる。加熱時間が5~30分、加熱温度が約1400~1550℃程度の時(1)斑状または(3)斑状と棒状オリビンの混合組織が卓越した。(1)の組織をSEM・偏光顕微鏡で観察すると、斑晶の粒径・方位が揃った複数のオリビンから成るドメインが確認された。出発物質中には微結晶が存在するため、実験試料のドメインはこの微結晶の組織を受け継いでいると考えられる。加熱温度が1400℃・加熱時間が20分の試料では、オリビン斑晶の隙間にパイロキシン結晶が成長していた。一方で加熱温度が約1550℃以上の試料には(2)棒状オリビン結晶が卓越していた。以上から、棒状オリビン結晶が晶出する温度領域と斑状オリビン結晶が晶出する温度領域の境界は約1550℃(リキダスから約200℃低温)であった。10分間加熱した実験試料のオリビン斑晶の粒径について、1400℃加熱時の最頻値は11μm、1500℃加熱時の最頻値は15μm、1600℃加熱時は23μmから61μmまで複数の最頻値をもち、加熱温度と結晶粒径に正の相関が見られた。4つの天然Type IA斑状コンドリュールについてオリビン斑晶の粒径を同様に測定したところ、最頻値は各々21μm、21μm、25μm、27μmであり実験試料のオリビン粒径の範囲内であった。一方で結晶の数密度を測定したところ、実験試料では1000~10000個/mm2であったのに対し、天然コンドリュールでは500~1000個/mm2程度であり、実験試料は天然試料よりも結晶数密度が小さいことが確認された。以上から本実験の条件下では、リキダスから200℃以上低温での加熱で斑状コンドリュールと共通したオリビンの斑晶が晶出することが分かった。斑晶形成の時間は5分程度と、従来の斑状コンドリュール結晶組織の再現実験により支持されている数百℃/h(Jones et al. 2018)程度の冷却よりも短時間である。また、パイロキシンを含むType IA コンドリュールはオリビン晶出温度よりも低温領域(1400℃程度)で20分程度という比較的長時間加熱(徐冷)を経ている可能性がある。今後は、天然コンドリュール中に含まれる溶け残り粒子を想定したオリビン結晶を出発物質中に混合させ、出発物質中の結晶密度・冷却速度を変数とし検討を行う。