Presentation Information
[R5-P-02]Formation of Radial Pyroxene Chondrules Triggered by Inter-particle Collisions: An Experimental study with a Fine Particles Falling System
*Takayuki Osaka1, Hiroshi Isobe2 (1. GSST, Kumamoto Univ., 2. FAST, Kumamoto Univ.)
Keywords:
Radial Pyroxene Chondrule,Inter-particle collision,Nucleation
コンドライト隕石の主要構成要素であるコンドリュールは多様な組織, 組成を持ち, 原始太陽系円盤中で前駆物質が多様な過程を経て加熱・溶融と急冷を経て形成されたケイ酸塩質の球状粒子である. コンドリュールには形成時の熱履歴や周囲の環境に関する情報が記録されているため, 太陽系最初期の物理・化学状態を解明する上で重要な手がかりとなる. その多様な組織を生み出した形成メカニズムの理解は, 惑星科学における根源的な課題の一つである.
コンドリュールの形成過程を理解するため, これまで多数の再現実験が行われてきた. 初期の再現実験では接触部からの不均質核形成が問題視されたが, Connolly and Hewins (1995) は, 完全溶融したメルト滴にダストが衝突することで核形成が誘起され, 放射状輝石(radial pyroxene;RP)コンドリュールが形成されるというモデルを提唱した. この「ダスト衝突モデル」は, ガス浮遊法などの非接触系を用いた近年の再現実験によって, その妥当性が強く支持されている. これらの実験では, レーザーで加熱・溶融させたメルト滴をガス流で空中に浮遊させ, 過冷却状態に達したところでダストを衝突させる. これにより衝突点を起点として放射状の結晶が成長する様子が直接観察されている. これらの成果は, ダストの衝突がRPコンドリュールに特徴的な組織を生み出す重要な過程であることを示している. (e.g. Nagashima et al., 2006; Watanabe et al., 2024).
一方で, 観測事実として複数のコンドリュールが合体した複合コンドリュールの存在が知られており, これはコンドリュール同士の衝突が実際に起きていたことを示す重要な証拠であるとされている(Gooding and Keil, 1981). 特に, Wasson et al. (1995)は, 複合コンドリュールのうち57%が同じ種類のコンドリュールが結合したものであり, そのほとんどがRPコンドリュールであると報告している. この事実は, RPコンドリュールの形成に「コンドリュール粒子同士の衝突」が関与した可能性を示唆する. しかし, 現時点で粒子同士の衝突がRPコンドリュールの核形成に寄与することを主題とした研究はほとんどなく, ダスト衝突モデルだけでは説明できない形成メカニズムとして検証する価値がある.
本研究では, Isobe and Gondo(2013)で用いた実験系を用いて, RPコンドリュール前駆物質を模した平均約110μmサイズの微粒子を高温炉に落下・急冷させるという実験を行い, RPコンドリュールの再現を試みた. 本実験系では, 乱流状態の気流中で微粒子を落下させることにより, 粒子同士の衝突が起こることが期待できる. 回収した粒子には, 単独で溶融して球状となったものに加えて, 溶融状態での衝突を経たと考えられるものが存在する. それらには, 内部に表面の一点を起点として針状の輝石結晶が放射状に成長した組織を持つものがあり, その結晶間はFeに富んだメソスタシスガラスで満たされていた. これは天然のRPコンドリュールの特徴とよく一致する.
本成果は, コンドリュール粒子間の衝突が, 特に複合コンドリュールの存在が示唆するような高密度環境下において, RPコンドリュールの形成をもたらす重要なメカニズムである可能性を示す. これは, コンドリュール形成環境の多様性を理解する上で新たな視点を提供するものであると考えられる.
コンドリュールの形成過程を理解するため, これまで多数の再現実験が行われてきた. 初期の再現実験では接触部からの不均質核形成が問題視されたが, Connolly and Hewins (1995) は, 完全溶融したメルト滴にダストが衝突することで核形成が誘起され, 放射状輝石(radial pyroxene;RP)コンドリュールが形成されるというモデルを提唱した. この「ダスト衝突モデル」は, ガス浮遊法などの非接触系を用いた近年の再現実験によって, その妥当性が強く支持されている. これらの実験では, レーザーで加熱・溶融させたメルト滴をガス流で空中に浮遊させ, 過冷却状態に達したところでダストを衝突させる. これにより衝突点を起点として放射状の結晶が成長する様子が直接観察されている. これらの成果は, ダストの衝突がRPコンドリュールに特徴的な組織を生み出す重要な過程であることを示している. (e.g. Nagashima et al., 2006; Watanabe et al., 2024).
一方で, 観測事実として複数のコンドリュールが合体した複合コンドリュールの存在が知られており, これはコンドリュール同士の衝突が実際に起きていたことを示す重要な証拠であるとされている(Gooding and Keil, 1981). 特に, Wasson et al. (1995)は, 複合コンドリュールのうち57%が同じ種類のコンドリュールが結合したものであり, そのほとんどがRPコンドリュールであると報告している. この事実は, RPコンドリュールの形成に「コンドリュール粒子同士の衝突」が関与した可能性を示唆する. しかし, 現時点で粒子同士の衝突がRPコンドリュールの核形成に寄与することを主題とした研究はほとんどなく, ダスト衝突モデルだけでは説明できない形成メカニズムとして検証する価値がある.
本研究では, Isobe and Gondo(2013)で用いた実験系を用いて, RPコンドリュール前駆物質を模した平均約110μmサイズの微粒子を高温炉に落下・急冷させるという実験を行い, RPコンドリュールの再現を試みた. 本実験系では, 乱流状態の気流中で微粒子を落下させることにより, 粒子同士の衝突が起こることが期待できる. 回収した粒子には, 単独で溶融して球状となったものに加えて, 溶融状態での衝突を経たと考えられるものが存在する. それらには, 内部に表面の一点を起点として針状の輝石結晶が放射状に成長した組織を持つものがあり, その結晶間はFeに富んだメソスタシスガラスで満たされていた. これは天然のRPコンドリュールの特徴とよく一致する.
本成果は, コンドリュール粒子間の衝突が, 特に複合コンドリュールの存在が示唆するような高密度環境下において, RPコンドリュールの形成をもたらす重要なメカニズムである可能性を示す. これは, コンドリュール形成環境の多様性を理解する上で新たな視点を提供するものであると考えられる.