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[R5-P-04]Shock Metamorphism of metals in Beardsley (H5) Chondrite

*Riku Konishi1, Takafumi Niihara1, Keiji Misawa2 (1. Okayama Univ. of Sci., 2. NIPR)
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Keywords:

H chondrite,shock metamorphism,Fe-Ni metals,shock stage

Beardsleyコンドライトは、初期分類ではH5コンドライトとして分類され、ショックステージはS3とされた。このコンドライトは、他のコンドライトよりもRbやKを多く含む特徴をもち、その起源については未解明である[1, 2]。Hidaka et al. [3]は、Beardsleyが炭素質コンドライトに含まれるCAIと類似したCs/Ba同位体比を有し、原始太陽系星雲の情報を保有していることを示唆した。我々がこれまでに行った岩石・鉱物学的研究から、Beardsleyは細粒の鉱物が多く存在し灰色を呈する岩相(灰色岩相)と、粗粒の鉄ニッケル合金が錆びたことにより茶色を呈する岩相(茶色岩相)の2つの異なる部分から構成し、それぞれ衝撃溶融により生じた溶融物の含有量が異なることを明らかにした[4]。茶色岩相は灰色岩相に比べて衝撃溶融物の含有量が少なく、平衡コンドライトの組織を維持している。このように衝撃変成の痕跡が不均質に存在するため、Beardsley隕石のアルカリ元素の起源を理解するためには、局所的な衝撃変成作用の影響を理解する必要がある。衝撃変成を受けたコンドライト中の金属粒子は、その程度に応じて多様な痕跡を記録する[5-7]。そこで、本発表ではBeardsley隕石に含まれるFe-Ni金属の観察を行い、局所的な衝撃変成度の違いを明らかにする。
 本研究にはアリゾナ州立大学より貸与された切片から薄片を作製し分析を行った。偏光顕微鏡と走査型電子顕微鏡で組織観察を行い、主要元素組成は電子プローブマイクロアナライザー(JEOL JXA-8230)にて分析を行った。
 茶色岩相に含まれるFe-Ni合金は、不規則な形状で粗粒(約500 µm)である。その多くはカマサイト(Ni ~5 wt.%)とテーナイト(Ni >30 wt.%)からなる多結晶の内部組織を示す。これらは平衡Hコンドライトに含まれるFe-Ni合金と共通する特徴である。一部の粗粒の粒子はニッケル含有量がやや高く(約10 wt.%)、カマサイトからマルテンサイトへの相転移を示している。他の金属粒子はカマサイト、テーナイト、プレッサイトの微細粒混合物であり、ニッケル含有量は7-30 wt.%の広い範囲を示す。1か所の粗粒の粒子は伸長した組織を示している。灰色岩相には粗粒の粒子は少なく、微細な金属ドロップレットがかんらん石や輝石の亀裂に沿って存在し、これは衝突時にケイ酸塩鉱物中のFeの還元によって形成されたと考えられる。他の金属はガラス質のマトリックス中にも円形をした粒子が存在する。
 Beardsleyに含まれる金属粒子は、岩相ごとに異なる特徴を持つだけでなく、存在する位置により多様な内部組織と組成の違いを示す。これは同一の岩石の中でも不均質に異なる程度の衝撃加熱の影響を残していることを示す。一部の多結晶の金属粒子はニッケル含有量がやや高く、これらの粒子が衝撃加熱イベント中にカマサイトからマルテンサイトへの相転移を経験したことを示唆する。またいくつかの粒子は微細なプレッサイト組織を示し、その組成も幅広い分布を示している。これらの特徴はBennett and McSween[7]による衝撃変成度の分類の、S5からS6に相当する。伸長した組織を示す金属粒子はプレッサイト組織を示しており、S5-S6以上の衝撃変成によってケイ酸塩のメルトが流動したことにより形成したと考えられる。このためBeardsleyは衝撃溶融を含みS5以上の衝撃を受けている。
引用文献: [1] Gast P. W., (1962) Geochimica et Cosmochimica Acta 26, 927-943. [2] Niihara T. et al., (2023) LPS LIV, Abstract #2052. [3] Hidaka H. et al., (2009) Earth and Planetary Science Letters 285, 173-178. [4] Konishi R. et al., (2025) LPS LVI, Abstract #2080. [5] Luo Y. et al., (2024) Journal of Geophysical Research: Planets 129, e2023JE007938. [6] Luo Y. et al., (2024) Journal of Geophysical Research: Planets 129, e2023JE007940. [7] Bennett M. E., McSween H. Y., (1996) Meteoritics & Planetary Science 31, 255-264.