Presentation Information
[R5-P-06]Local structure around Co in kamacite and taenite in iron meteorites
*Kanako Yoshihara1, Akira Yoshiasa2, Huimin Shao3, Makoto Tokuda4, Ginga Kitahara5, Hiroshi Isobe2 (1. Kumamoto Univ. GSST, 2. Kumamoto Univ. FAST, 3. CNSC, 4. Kumamoto Univ. IINa, 5. KEK)
Keywords:
XAFS,Co K-edge,taenite,kamacite
鉄隕石中のFe-Ni相は、Fe-Ni金属の相関係と母天体の多様な熱履歴により、複雑な組織を示す。最も一般的な鉄隕石とされるOctahedriteでは、面心立方格子(FCC)を持つtaenite相と体心立方格子(BCC)であるkamacite相が、ウィドマンシュテッテン構造を形成することが知られている。金属相の構造を結晶学的に詳細に解析することにより、鉄隕石母天体の宇宙化学的プロセスと進化の記録について検討することができる。
本研究では、鉄隕石に含まれるCoに注目し、K吸収端(K-edge)におけるXAFS分光法を適用してCo近傍の局所構造を解析した。K-edge XAFS測定は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)のつくば市にあるフォトンファクトリーにおいて、BL-4A、BL-9A、および10Aのビームラインにおいて蛍光モードで測定した。
分析に使用した鉄隕石は、微量元素や粒径による分類ではIABとされるCanyon Diablo及びOdessa、IVAであるMuonionalusta、金属に富むpallasiteであるBrenham、未分類のNWA859である。XAFS測定は、実体顕微鏡によりtaenite及びkamacite相を識別し、数百μm以下まで絞ったビームによって行った。
Canyon DiabloとMuonionalustaのSEM-EDS分析ではtaeniteの平均Ni含有量は28.87atm%から38.80atm%、kamaciteは5.47atm%から6.94atm%だった。taenite中のCo含有量は1.16atm%から0.24atm%、kamacite中のCo含有量は2.01atm%から0.57atm%であり、kamaciteのCo含有量はtaeniteのおよそ2倍であった。Canyon DiabloおよびMuonionalustaのtaenite相のCo濃度は、Niに対し弱い負の相関を示す。Shao et al. (2021)では、NWA859の化学組成はCanyon DiabloおよびMuonionalustaよりおよそ2倍のCo濃度を示すことが報告されているが、taenite相におけるNiとCoの負の相関、およびkamacite相にはtaenite相のおよそ2倍のCoが含まれることについては、同様の傾向を示す。これらの分析結果すべてに共通して、taenite相において、Niのatm%が50%近い領域にあってもCo濃度は0.2atm%を下回ることはない。kamacite相のCo濃度がtaenite相より高いことと合わせると、taenite相が縮小しkamacite相が拡大する過程において、CoはFeと同様にkamacite相へ移動する挙動を示すが、taenite相中に一定量のCoが残留していることを示すと考えられる。
XAFS測定の結果、kamacite中のCoのK-edge XANESスペクトルは、Fe箔が示す典型的なBCC構造と類似した吸収パターンを示した。さらに、測定したすべての鉄隕石において、FCC構造を有するtaeniteにおいても、CoのXANESスペクトルはBCC型局所構造を形成していることを示し、その配位数は8+6であった。これは、taenite中でCoはその近傍に独自の局所構造を形成しており、その構造はkamacite相が成長する過程においても安定して保たれたことを示すと考えられる。これらの結果から、鉄隕石の種類、組織やホスト相の構造の違いにかかわらず、共通してCoは元素特有の性質として近傍原子とBCC型の局所構造を形成することが明らかとなった。
本研究では、鉄隕石に含まれるCoに注目し、K吸収端(K-edge)におけるXAFS分光法を適用してCo近傍の局所構造を解析した。K-edge XAFS測定は、高エネルギー加速器研究機構(KEK)のつくば市にあるフォトンファクトリーにおいて、BL-4A、BL-9A、および10Aのビームラインにおいて蛍光モードで測定した。
分析に使用した鉄隕石は、微量元素や粒径による分類ではIABとされるCanyon Diablo及びOdessa、IVAであるMuonionalusta、金属に富むpallasiteであるBrenham、未分類のNWA859である。XAFS測定は、実体顕微鏡によりtaenite及びkamacite相を識別し、数百μm以下まで絞ったビームによって行った。
Canyon DiabloとMuonionalustaのSEM-EDS分析ではtaeniteの平均Ni含有量は28.87atm%から38.80atm%、kamaciteは5.47atm%から6.94atm%だった。taenite中のCo含有量は1.16atm%から0.24atm%、kamacite中のCo含有量は2.01atm%から0.57atm%であり、kamaciteのCo含有量はtaeniteのおよそ2倍であった。Canyon DiabloおよびMuonionalustaのtaenite相のCo濃度は、Niに対し弱い負の相関を示す。Shao et al. (2021)では、NWA859の化学組成はCanyon DiabloおよびMuonionalustaよりおよそ2倍のCo濃度を示すことが報告されているが、taenite相におけるNiとCoの負の相関、およびkamacite相にはtaenite相のおよそ2倍のCoが含まれることについては、同様の傾向を示す。これらの分析結果すべてに共通して、taenite相において、Niのatm%が50%近い領域にあってもCo濃度は0.2atm%を下回ることはない。kamacite相のCo濃度がtaenite相より高いことと合わせると、taenite相が縮小しkamacite相が拡大する過程において、CoはFeと同様にkamacite相へ移動する挙動を示すが、taenite相中に一定量のCoが残留していることを示すと考えられる。
XAFS測定の結果、kamacite中のCoのK-edge XANESスペクトルは、Fe箔が示す典型的なBCC構造と類似した吸収パターンを示した。さらに、測定したすべての鉄隕石において、FCC構造を有するtaeniteにおいても、CoのXANESスペクトルはBCC型局所構造を形成していることを示し、その配位数は8+6であった。これは、taenite中でCoはその近傍に独自の局所構造を形成しており、その構造はkamacite相が成長する過程においても安定して保たれたことを示すと考えられる。これらの結果から、鉄隕石の種類、組織やホスト相の構造の違いにかかわらず、共通してCoは元素特有の性質として近傍原子とBCC型の局所構造を形成することが明らかとなった。