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[R5-P-08]Textural heterogeneity in the hydrothermal alteration process of Mg-Si-O amorphous nanoparticles

*Satomi ENJU1, Aika Saito1 (1. Ehime Univ. Sci.)
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Keywords:

Amorphous silicate,hydrothermal alteration,Heterogeneity,GEMS like material

【はじめに】太陽系の惑星は, 原始太陽系星雲のガスの中に含まれる塵(始原的物質)が集積して形成された(中川, 2010). 始原的物質は惑星形成時に熱や水により変質するため, 変質の条件と生成物の関係を知ることが惑星形成初期の理解に重要となる. はやぶさ2から持ち帰られた試料から始原的物質の一種であるGEMS様物質が見られた. リュウグウのGEMS様物質は非晶質ケイ酸塩から結晶性の非常に低い層状ケイ酸塩への変質がみられ, 変質の度合いが不均一であった(Nakamura et al., 2023). 非晶質ケイ酸塩の水質変成過程については先行研究(Igami et al., 2021)にて検証が行われているが, 粉末が集積した状態での変質過程や組織についての検証は行われていない. 本研究ではペレット状にした非晶質ケイ酸塩粉末を用いて水質変成の再現実験を行い, 変質の不均一性について考察することを研究目的とする.

【研究手法】本研究では熱誘導プラズマ装置で作成したGEMSを模した非晶質ケイ酸塩粉末試料を出発物質として水質変成実験を行う. 苦土かんらん石(Fo, Mg₂SiO₄)組成と, 頑火輝石(En, Mg₂Si₂O₆)組成の二種類の粉末を用いた. En組成の粉末はほぼ理想化学組成(Mg/Si=0.86-1.14, 平均1.01)であり, Fo組成の粉末は残渣の影響かSiに富んでおり蛇紋石と中間的な組成(Mg/Si=1.42-1.87, 平均1.67)を示した. ペレット状に成型した粉末に窒素充填のグローブボックス内で質量比1倍と3倍の精製水をそれぞれ滴下し, 72時間反応させた後乾燥させた. 比較のために出発物質のペレットも作成し, 分析した. RIGAKU 製 Ultima Ⅳを使用して粉末 X 線回折実験(XRD)を行い, Oxford 製エネルギー分散型 X 線分析装置 EDS を装着した JEOL 製 走査型顕微鏡(SEM)JSM-6510LV を用いて組織観察と組成分析を行った.

【結果・考察】水質変成を経ていずれの試料でも低結晶性の層状ケイ酸塩鉱物の生成とtotal (wt%)の上昇がみられ, Fo組成の生成物は縞状, En組成の生成物ではパッチ状と異なる変質組織の形成が確認された. ペレット精製の際に上から圧力をかけるため出発試料では粗密差による幅100μmほどの縞状の組織が見られるが, Fo生成物では幅数十μm以下の組成差を伴う縞状組織が見られた. 出発物質と同程度のMg/Si比を持つMgに富む部分(Mg/Si=1.58-1.84, 平均1.73)と蛇紋石組成に近いSiに富む部分(Mg/Si=1.42-1.54, 平均1.47)の二相が縞状に分布している. 試料内ではtotalにばらつきがあるが, 隣接する部分では組成に関係なく類似したtotalを示すことからあるtotalを持つ部分がMgに富む部分とSiに富む部分に分かれたと考えられ, 粗密差が組成差の要因ではないと推察できる. また, Fo生成物の水質変成実験中に採取した水を乾燥させるとブルーサイト(Mg(OH)₂)組成の物質が晶出したことから, Mgが水質変成実験中の水に溶脱することでMg/Si比が出発物質から変化したと考えられる. 縞状組織は水岩石比1及び3の両方で見られ, 類似していた. 一方でEn生成物は水岩石比1でパッチ状組織が見られ, パッチ部分のサイズは1mm程度で周りに数十μmのパッチを伴う. En生成物は全体的には出発物質よりわずかにMgに富んでおり, 大きなパッチ部分は比較的Mgに富み(Mg/Si=1,02-1.12 平均1.07) totalが高かった. 水岩石比3は比較的均質であり水岩石比1のパッチ部分に類似した組成やtotalを示すことから変質の進行に伴ってパッチ部分が拡大したと考えられる. 今回の結果より出発物質の組成の違いは水質変成の不均一性をもたらす要因になりうることがわかった. 同様の条件下でもFo組成では全体的に変質が進行し局所的な組成不均一をもたらすのに対し, En組成では局所的に変質が進行し変質部の組成は均質であった.