Presentation Information
[R6-02]Crust maturation process in Northern Kyushu during the Cretaceous period
*Keisuke ESHIMA1, Jumpei YAMAGUCHI2 (1. Yamaguchi Univ. Sci. Tech. Innov., 2. Yamaguchi Univ. Sci)
Keywords:
Cretaceous Northern Kyushu Batholith,Crust maturation process,Igneous activity,Generation mechanism of source granitic magma,Sanukitic HMA
【はじめに】地球46億年の歴史を通じて,大陸地殻は多様な火成活動を反映しながら成長(進化)してきた.特に,沈み込み帯におけるプレート運動を含めたマグマ形成プロセスおよび地殻成熟過程は地球科学の第1級課題として考えられている.沈み込み帯に位置する日本列島は国土の約30%を花崗岩類が占めている.一般にその規模が100 km2以上のものをバソリスと呼び,そのバソリスは日本各地に露出している.さらにそれらの活動のうち,約80%は130–50 Maに集中しており,非常にエピソディックな活動であったことが推察される.近年,各種精密分析技術の発展により,非定常的マグマ活動は全世界規模の検討課題となっている(Chapman et al., 2021, Lithos, 398–399, 1–23).また,バソリス形成に関する"マグマの空間問題(Lyell, 1865, Elements of Geology, pp. 723)"の研究も同様に,アナログ実験や数値シミュレーションなど課題の本質に迫る検討が進められている(Kavanagh et al., 2006, EPSL, 245, 799–813; Gill et al., 2022, JGR. Solid Earth, 127).しかしながら,モデルを実証するための地質学的・岩石学的検討はWeinberg and Hasalova (2015, Lithos, 212–215, 158–188)など少数の報告があるに過ぎない.そこで本研究では一度本質に立ち返り,野外調査を主体とした岩石学的検討によって,バソリス規模の火成活動および沈み込み帯における地殻の進化過程を検討する.また,バソリスを一つの岩体として捉えるのではなく,構成要素である小規模岩体固有の岩石学的特徴に着目して個々の岩体の形成過程を明らかにする.その上で,バソリスを深成岩小岩体の集合体として捉え,バソリス規模の火成活動および沈み込み帯のプレート運動を反映した地殻の進化過程を検討する.【白亜紀北部九州バソリスの概要】北部九州には東西約100 km南北約50 kmの範囲に白亜紀に活動した花崗岩,花崗閃緑岩および同時期に活動した苦鉄質岩(斑れい岩〜閃緑岩)から構成される白亜紀北部九州バソリスが露出する.このバソリスは海洋プレートの沈み込みに伴って形成したもの,つまり火山弧深成岩体であり,岩相,貫入関係および活動年代から現在までに19の小規模岩体が認識されている.花崗岩類は自形性の強いホルンブレンドを含む花崗閃緑岩と白雲母や菫青石を含む花崗岩に大別されるほか,一部,地殻浅所に貫入する花崗岩〜トーナル岩質の斑状深成岩体も産する.一方,苦鉄質岩類はホルンブレンドを大量に含み,集積構造をもつ斑れい岩質な岩石と輝石類を主成分鉱物とする閃緑岩類に大別される.前者は地殻深所(0.6–0.7 GPa),後者は地殻浅所(0.03–0.2 GPa)に貫入し,定置する.また,一般にこれら深成岩体の貫入母岩は周防帯の泥質岩・角閃岩と白亜紀関門層群(特に,脇野亜層群)であり,前者との間にはミグマタイト,後者との間にはぺぺライトが確認されることから,貫入深度の異なる母岩であることが推察される.さらに,一部では高度変成岩類も確認される.【白亜紀北部九州の地殻成熟過程】130 Maにかけてスラブロールバックが原因のアセノスフェアの上昇が発生する.その際,トレンチは後退し,そのサクションフォースとドラッグフォースによって火成活動の中心である火山弧はトレンチ側に移動する.そして,130–90 Maにはアセノスフェアのコーナーフローも強くなり,沈み込むスラブやその上面の堆積物が溶融し,珪長質の溶融メルトとマントルかんらん岩が反応しSanukitic HMAを熱源とした火成活動が始まる.その際,地殻内ではSanukitic HMAや玄武岩質マグマがリソスフェアを上昇し,地殻に底付け付加・貫入し,下部〜中部地殻を構成する岩石を部分溶融することによって花崗岩本源マグマ,優白質花崗岩メルトおよび地殻物質起源のメルトを生成する.また,これらの領域(深度別)は部分溶融帯としてだけでなくマグマのストレージとして働き,深度毎にある程度均質化し,新たな地殻を構成する.その後,中部から上部地殻に貫入し,バソリスを形成する.さらに,上昇中に様々な深成作用を経ることによって現在の岩相バリエーションが作られたと考えられる.【まとめ】小規模岩体の検討から北部九州に産する岩相は多様な端成分マグマによる混合や地殻物質との同化作用およびそれと同時に作用する分化集積作用によって再現可能である.Sanukitic HMAが熱源となり,下部地殻を溶融し,そのメルトと熱源が混合することにより北部九州の本質的な花崗岩マグマは再現可能であり,このような活動から地殻は成熟し,変遷したと考えられる.