Presentation Information

[R6-05]Long term magmatic activity of the Takada Granodiorite from the San’in batholith, Southwest Japan

*Sena Nakayama1, Shunsuke Endo2, Atsushi Kamei2 (1. Oki Islands Geopark Management Bureau, 2. Shimane Univ.)
PDF DownloadDownload PDF

Keywords:

Takada Granodiorite,multiple magma injection,San’ in batholith,SW Japan

大陸地殻の成長や進化を考えるうえで,花崗岩バソリスを形成するような大規模珪長質火成活動は重要である.近年,大規模なバソリスは,漸次的なマグマ注入により小規模なシートが付加することで成長するというモデルが議論されている(例えば,Annen et al., 2015).しかし,記載岩石学的情報にもとづいて詳しく検討された例は少ない.島根県東部から鳥取県西部にかけて深成岩類のまとまった分布があり,山陰バソリスと呼ばれる(飯泉・山陰バソリス研究グループ, 1983).その中央部に分布する高田花崗閃緑岩は,普通角閃石黒雲母花崗閃緑岩を主岩相とし,その南縁にアルカリ長石の大型斑晶により特徴づけられる斑状普通角閃石含有黒雲母花崗閃緑岩および斑状黒雲母花崗岩を伴う.高田花崗閃緑岩は苦鉄質な小木石英閃緑岩とのマグマ混交の産状を示し,また斜長石の累帯構造などの組織から多段階のマグマ注入を経験した岩体である可能性が示唆されている(中山ほか, 2024).さらに高田花崗閃緑岩のジルコンU-Pb年代の検討からは65~60 Maの長期間にわたるマグマ活動が議論されている(中山ほか, 2024).本研究では,より詳細な岩石組織観察,鉱物化学組成,温度圧力推定および全岩Sr同位体組成にもとづき,高田花崗閃緑岩の長期間にわたるマグマ活動モデルの妥当性を検討した.
 高田花崗閃緑岩の構成鉱物には,オシラトリー累帯構造や融食-再成長組織が普遍的に観察された.斜長石は,アノーサイト(An)成分が高く小木石英閃緑岩起源と考えられる融食形コアが稀に残存するほか,1~2回の不連続なAnの増加を示す累帯構造が普遍的に認められる.また,斑状岩相に含まれる大型のアルカリ長石には,Baの急増とそれに続く減少を繰り返すオシラトリー累帯構造や融食-再成長組織がみられ,ソリダス~サブソリダス条件での既存のアルカリ長石の粗粒化を示唆する.火成起源のチタナイトにおいても,Zrのオシラトリー累帯構造や融食-再成長組織がみられる.角閃石やチタナイトを用いた地質温度圧力計を適用すると,高田花崗閃緑岩は180-200 MPaの定置圧力条件で含水ソリダス付近での温度変動が示唆された.このことは,斜長石や石英の粒界にフィルム状のアルカリ長石がみられ,これが再融解組織(アルカリ長石+斜長石+石英+H2O=メルト)と考えられることと調和的である.87Rb/86Sr vs 87Sr/86Sr 図において,高田花崗閃緑岩および 小木石英閃緑岩のトレンドと,61 Maのリファレンスアイソクロンは,中山ほか(2024)がジルコンのU–Pb年代測定をもとに解析した本岩体の活動時期(65~60 Ma)と矛盾しない.分析点がリファレンスアイソクロンに沿いながら,ややばらつく原因は,繰り返し供給されてくるマグマのSrIの僅かな不均質性を示唆する.
 これらは,180-200 MPaに定置した珪長質マグマだまり内において,苦鉄質マグマに加え,起源物質の同位体不均質をもつ広義の花崗岩質マグマの複数回の注入とそれに伴う温度変動を示唆しており,これが高田花崗閃緑岩の長期間にわたるマグマ活動の実態と考えられる.

引用文献:飯泉 滋・山陰バソリス研究グループ, 1983, MAGMA, 67, 7‒11.Annen et al., 2015, Lithos, 230, 206–221.中山ほか, 2024, 地質雑, 130, 297–311.