Presentation Information
[R6-06]Analysis of the formation environment of the Gamano granodiorite and the Daito granodiorite in the Inner Zone of southwest Japan: Constraints from zircon and melt inclusions
Chiho Ihira1, Taichi Kawashima1, *Satoshi Saito1, Mayuko Fukuyama2 (1. Ehime University, 2. Akita University)
Keywords:
Zircon,Melt inclusion,Gamano granodiorite,Daito granodiorite,Redox state
【はじめに】花崗岩類は磁鉄鉱系列とチタン鉄鉱系列に区分され、西南日本の花崗岩類は、主に山陰帯では磁鉄鉱系列、山陽帯と領家帯ではチタン鉄鉱系列である(Ishihara, 1977)。磁鉄鉱系列花崗岩は酸化的環境で形成したのに対し、チタン鉄鉱系列花崗岩は還元的環境で形成したと考えられ、マグマの起源物質から上昇・貫入・固結に至る花崗岩の形成環境を反映していると考えられる(石原, 1982)。Kawashima et al. (2024)では、領家帯蒲野花崗閃緑岩に含まれるジルコン中のメルト包有物を用いて、花崗岩マグマ中のメルト含水量とジルコン結晶化圧力を見積もった。本研究では、Kawashima et al. (2024)で分析したメルト包有物を含むホストのジルコンの微量元素分析を行い、ジルコン酸素分圧計(Loucks et al., 2020)を用いて酸化還元状態の見積もりを行い、蒲野花崗閃緑岩の形成環境を総合的に明らかにする。さらに同様の解析手法を山陰帯大東花崗閃緑岩にも適用し、両者の結果を比較・検討する。
【研究手法】蒲野花崗閃緑岩試料は山口県屋代島北西部で採取した磁鉄鉱を含まない黒雲母花崗岩で、大東花崗閃緑岩試料は島根県雲南市木次町で採取した磁鉄鉱を含む角閃石黒雲母花崗閃緑岩である。ジルコン中メルト包有物はマグマ冷却中の結晶化により不均質な多相包有物となっているため、ピストン-シリンダー型高温高圧装置を用いて均質化実験を行った。均質化を確認したメルト包有物をSEM-EDSで分析後、ホストのジルコンについてLA-ICP-MSで微量元素の測定を行った。
【野外産状・鏡下観察】蒲野花崗閃緑岩は領家変成岩類の構造に調和的に貫入し、しばしば変成岩類を捕獲岩として取り込んでいる。また、苦鉄質岩が火成包有岩や同時性岩脈として産する。大東花崗閃緑岩は苦鉄質包有岩に富み、周囲の火山岩類に貫入している様子が確認できる。鏡下観察では、両者の試料ともジルコンは主要造岩鉱物の周縁部や粒間に認められる。
【結果】SEM-EDSで均質化実験後のメルト包有物を分析したところ、蒲野花崗閃緑岩で特に高い含水量(6.4~11.3 wt%)と高いSiO2含有量(76~78 wt%, 主要元素totalを100%にノーマライズした値)を、大東花崗閃緑岩で高い含水量(4.1~8.1 wt%)と特に高いSiO2含有量(78~79 wt%)を示す。得られた主要元素組成にMagMaTaBメルト地質温度圧力計(Weber and Blundy, 2024)を適用したところ、蒲野花崗閃緑岩で751~707 ℃、563~266 MPaの温度と圧力が、大東花崗閃緑岩で763~705 ℃、265~161 MPaの温度と圧力がそれぞれ算出され、大東花崗閃緑岩の方がより低圧を示す。ジルコンの微量元素組成に酸素分圧計(Loucks et al., 2020)を適用したところ、ΔFMQ が蒲野花崗閃緑岩で-2.2~-0.2であるのに対し、大東花崗閃緑岩では0.1~1.7であり、両者の酸化還元状態に有意な差異が認められた。
【考察】メルト包有物組成から得られた含水量と圧力は、蒲野花崗閃緑岩と大東花崗閃緑岩の両者の試料とも、含水量-圧力図において、花崗岩質マグマの含水飽和曲線(Johannes and Holtz, 1996)に沿ってプロットされる。このことから、ジルコンが包有したメルトは、両者ともほぼ含水飽和状態であったと考えられる。また圧力-温度図においては、両者の試料とも花崗岩質マグマの含水飽和ソリダス(Johannes and Holtz, 1996)よりも高温条件を示し、ジルコンがソリダスより高温のマグマから結晶化したことを示す。また、ジルコン酸素分圧計から求められた蒲野花崗閃緑岩と大東花崗閃緑岩の酸化還元状態は、それぞれWones et al. (1981)によるチタン鉄鉱系列花崗岩と磁鉄鉱系列花崗岩の区分と調和的である。このことから、ジルコンの晶出時には、両者のマグマの酸化還元状態に、チタン鉄鉱系列と磁鉄鉱系列とに対応する差異があったと考えられる。
【引用文献】Ishihara, 1977, Min Geol, 27, 193-305; 石原, 1982, 鉱山地質 32(3), 281-283; Johannes and Holtz, 1996, Petrogenesis and Experimental Petrology of Granitic Rocks. pp. 335, Springer, Berlin; Kawashima et al., 2024, JMPS 119, 018; Loucks et al., 2020, JPet 61, egaa034; Weber and Blundy, 2024, JPet 65, egae020; Wones, 1981, Min Geol, 31(4), 191-212.
【研究手法】蒲野花崗閃緑岩試料は山口県屋代島北西部で採取した磁鉄鉱を含まない黒雲母花崗岩で、大東花崗閃緑岩試料は島根県雲南市木次町で採取した磁鉄鉱を含む角閃石黒雲母花崗閃緑岩である。ジルコン中メルト包有物はマグマ冷却中の結晶化により不均質な多相包有物となっているため、ピストン-シリンダー型高温高圧装置を用いて均質化実験を行った。均質化を確認したメルト包有物をSEM-EDSで分析後、ホストのジルコンについてLA-ICP-MSで微量元素の測定を行った。
【野外産状・鏡下観察】蒲野花崗閃緑岩は領家変成岩類の構造に調和的に貫入し、しばしば変成岩類を捕獲岩として取り込んでいる。また、苦鉄質岩が火成包有岩や同時性岩脈として産する。大東花崗閃緑岩は苦鉄質包有岩に富み、周囲の火山岩類に貫入している様子が確認できる。鏡下観察では、両者の試料ともジルコンは主要造岩鉱物の周縁部や粒間に認められる。
【結果】SEM-EDSで均質化実験後のメルト包有物を分析したところ、蒲野花崗閃緑岩で特に高い含水量(6.4~11.3 wt%)と高いSiO2含有量(76~78 wt%, 主要元素totalを100%にノーマライズした値)を、大東花崗閃緑岩で高い含水量(4.1~8.1 wt%)と特に高いSiO2含有量(78~79 wt%)を示す。得られた主要元素組成にMagMaTaBメルト地質温度圧力計(Weber and Blundy, 2024)を適用したところ、蒲野花崗閃緑岩で751~707 ℃、563~266 MPaの温度と圧力が、大東花崗閃緑岩で763~705 ℃、265~161 MPaの温度と圧力がそれぞれ算出され、大東花崗閃緑岩の方がより低圧を示す。ジルコンの微量元素組成に酸素分圧計(Loucks et al., 2020)を適用したところ、ΔFMQ が蒲野花崗閃緑岩で-2.2~-0.2であるのに対し、大東花崗閃緑岩では0.1~1.7であり、両者の酸化還元状態に有意な差異が認められた。
【考察】メルト包有物組成から得られた含水量と圧力は、蒲野花崗閃緑岩と大東花崗閃緑岩の両者の試料とも、含水量-圧力図において、花崗岩質マグマの含水飽和曲線(Johannes and Holtz, 1996)に沿ってプロットされる。このことから、ジルコンが包有したメルトは、両者ともほぼ含水飽和状態であったと考えられる。また圧力-温度図においては、両者の試料とも花崗岩質マグマの含水飽和ソリダス(Johannes and Holtz, 1996)よりも高温条件を示し、ジルコンがソリダスより高温のマグマから結晶化したことを示す。また、ジルコン酸素分圧計から求められた蒲野花崗閃緑岩と大東花崗閃緑岩の酸化還元状態は、それぞれWones et al. (1981)によるチタン鉄鉱系列花崗岩と磁鉄鉱系列花崗岩の区分と調和的である。このことから、ジルコンの晶出時には、両者のマグマの酸化還元状態に、チタン鉄鉱系列と磁鉄鉱系列とに対応する差異があったと考えられる。
【引用文献】Ishihara, 1977, Min Geol, 27, 193-305; 石原, 1982, 鉱山地質 32(3), 281-283; Johannes and Holtz, 1996, Petrogenesis and Experimental Petrology of Granitic Rocks. pp. 335, Springer, Berlin; Kawashima et al., 2024, JMPS 119, 018; Loucks et al., 2020, JPet 61, egaa034; Weber and Blundy, 2024, JPet 65, egae020; Wones, 1981, Min Geol, 31(4), 191-212.