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[R6-P-08]The origin gabbronorite MME magma that pigeonite-producing in the Osuzuyama acidic rocks of Miyazaki prefecture.

*Takuto Kitashiro1, Toshiaki SHIMURA1 (1. Yamaguchi Univ. Sci)
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Keywords:

Pigeonite,Osuzuyama acidic rocks,Outer zone of Southwest Japan,MME

西南日本では、第四紀火山フロントより海溝寄りの地域に中期中新世に活動した火成岩類が見られる。その中で、西南日本弧の伸長方向におよそ600㎞連続する瀬戸内火山帯は、15.9 ~ 10.9 Maの中期中新世に活動し、マントルかんらん岩と平衡共存できる高Mg安山岩(HMA)によって特徴づけられる(Tatsumi, 1981 ; 1982)。HMAは高いMgO量にも関わらずSiO2に富むという特徴があり、白木ほか(1991)による微量元素組成では、MgO (wt.%)の増加に伴いCr、Ni(ppm)も増加するとされている。
西南日本外帯地域には外帯花崗岩類と総称される珪長質火成岩体が見られ、これら花崗岩類も13.5 ~ 15.5 Maの中期中新世の非常に短期間の同時多発的なフレアアップ活動であるとされている(Shinjoe et al., 2019)。外帯花崗岩類中には、多くの苦鉄質火成岩包有物(MME)の報告がされており、例えば新正ほか(2005)の大峰花崗岩体では、MgOに富みCrスピネルの晶出が見られる洞川火成岩包有物や、高橋ほか(2022)の大崩山花崗岩質バソリス中で、SiO₂が乏しくなるにつれて急激にMgOが増加する組成変化トレンドを持つ苦鉄質2重包有物が報告されている。また、中田(1983)では尾鈴山酸性岩体中にピジョン輝石の見られる安山岩質の包有物も記載されており、MgOの値が高いことを特徴としている。これらの外帯花崗岩類中に見られるMMEはいずれもカルクアルカリ系列を示し、高いMgO量を示す特徴などからHMAに由来する可能性があると議論されてきた。 
一方で、さらに海溝に近い地域には、苦鉄質火成岩体が点在する。これらは、ソレアイト系列を示し、三宅(1981)では、潮岬火成複合岩体のカンラン石斑れい岩中からピジョン輝石の記載を行っている。Yajima(1972)でも同様に室戸岬地域で、ソレアイト系列のかんらん石を含む斑れい岩体が見られるが、低酸素分圧・マグネタイトの晶出・遅い冷却速度などが原因でピジョン輝石は晶出しないとされている。

本研究で調査を行った尾鈴山酸性岩体は中田(1978)より、溶結凝灰岩を主とする主岩体に対して花崗閃緑斑岩が貫入している岩体である。また、岩体南部には基盤の四万十帯堆積岩に貫入する花崗岩岩脈も見られる。本調査では岩体の花崗岩類中にハンレイノーライト質の火成岩がMMEとして見られた。産状は5 ~ 10㎝の楕円形で包有されており、母岩より比較的細粒でオフィチック組織を示す。主な構成鉱物は斜長石・直方輝石・オージャイト・ピジョン輝石・イルメナイトが見られる。直方輝石はEn50~En78の組成範囲で正累帯構造を示す。ピジョン輝石の組成はXMg = 0.49 ~ 0.53で、三宅(1981)の潮岬のものと比べてXMgの値は低く、TiO₂・Al₂O₃の値も低い。モード測定によりMME中には花崗岩由来の斜長石ゼノクリストが3.7~4.2%、石英ゼノクリストが8.3~9.7%認められた。これらゼノクリストの存在から、MMEは、母岩の珪長質なマグマと混合を起こしていると判断し、全岩化学組成分析後にモデル計算にてゼノクリストを取り除く作業を行った。それにより、MMEはソレアイト系列で、HMAとは異なるMgOの組成変化トレンドを持つ特徴を示した。N-MORBで規格化したスパイダーグラムのパターンではCr、Niが少ない結果となった。MMEの温度は、ピジョン輝石の組成からIshii(1975)のピジョン輝石温度計を用いて求め、約1103~1112℃が得られた。
以上の結果やピジョン輝石の晶出から、MMEは外帯苦鉄質岩を構成したマグマに由来する可能性があると考えることが出来る。また、マグマの温度が1100℃以上と高温であることから、尾鈴山酸性岩体のS-type珪長質岩体を形成する熱源であると考えられる。

中田 (1978) 地雑 84, 243–256. Nakada (1983) J. Petrol., 24, 471–494. Tatsumi (1981) Earth Planet. Sci. Lett., 54, 357-365. Tatsumi (1982) Earth Planet. Sci. Lett., 60, 305-317. Shinjoe., et al. (2019) Geol. Mag., 158, 47-71. Ishii (1975) Miner. Jour. 8, 1, 48-57. 山口(1987)山陰地質研究 3, 149-155. 高橋ほか(2022)日本大学文理学部紀要, 57, 19―40. 新正ほか(2005)岩石鉱物科学 34, 15―23. 三宅(1981)地雑 87, 6, 383-403. Yajima(1972)岩鉱67, 218ー241. 白木ほか(1991)岩鉱, 86, 459―472.