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[R6-P-09]Applicability of trace element discrimination diagrams to rhyolites: Implications for felsic volcanism during opening of the Sea of Japan

*Raiki YAMADA1 (1. National Institute of Advanced Industrial Science and Technology)
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Keywords:

Rhyolite,Discrimination diagram,Trace element,Opening of the Sea of Japan

PearceとCann1, 2が微量元素を用いて苦鉄質岩のテクトニックセッティングを判別するアイデアを提案して以来,様々な岩種に対して数多くの判別図が提案されてきた。岩石学的な解釈が難しい古い岩石を扱うとき,判別図はテクトニックセッティングを制約する有効な手段となりうる。しかし,流紋岩類(SiO2 ≥69 wt.%;広義)に関してはその判別図は提案されてこなかった。流紋岩類は,衝突帯や火成弧,リフト帯など様々なテクトニックセッティングで噴出する火山岩の一種である。本研究では流紋岩類と同様に高いSiO2量をもつ花崗岩類に着目した。花崗岩類の判別図はPearceら3が提案した有名なものがあるため,その判別図が流紋岩にも適用できるか検討した。Pearceら3の判別図に加えて,ThiéblemontとTégyey4が提案したSiO2量が55 wt.%以上の火成岩に適用可能な判別図もあるため,こちらについても流紋岩類に適用可能か検討した。
世界の流紋岩類のうち,テクトニックセッティングが明らかな後期白亜紀~新生代流紋岩類の全岩主要元素組成および微量元素組成(Rb,Zr,Nb,Y)をコンパイルした。テクトニックセッティングの分類は,衝突帯(ヒマラヤなど),未成熟火成弧(IBM弧など),成熟火成弧(アンデスなど),海洋プレート内部(ホットスポット;アイスランドなど),大陸プレート内部(ホットスポットおよびリフト帯;イエローストーンなど)とした。適用性評価のためにプロットした判別図はPearceら3のY–Nb図,Y+Nb–Rb図およびThiéblemontとTégyey4のZr–(Nb/Zr)N図である。Zr–(Nb/Zr)N図のNbとZrはHofman5の始原的マントルで規格化する。
各種判別図にコンパイルした流紋岩類をプロットした結果,いずれの判別図もテクトニックセッティングを比較的良く識別できている。例えば,Y–Nb図,Y+Nb–Rb図では90 %以上の海洋・大陸プレート内部流紋岩がwithin-plate granitesの領域にプロットされる。さらに,成熟火成弧と未成熟火成弧はY–Nb図で明確に区別できることが明らかになった。しかし,各判別図には適用の限界も存在する。例えば,衝突帯流紋岩はZr–(Nb/Zr)N図では比較的良く識別されるが,Y+Nb–Rb図ではほとんどが正しい領域にプロットされなかった。さらに3つの図いずれにおいても,衝突帯と成熟火成弧を識別することが難しい。これは衝突帯と成熟火成弧では,流紋岩マグマの素となる起源物質が厚い地殻に由来するからであって,未成熟火成弧がマントル起源の物質が優勢であるのと対照的であるからだと考えられている6
注意点を除けば流紋岩類にも有効であると考えられるこれらの判別図を,背弧拡大である日本海拡大期の流紋岩にも応用を試みた。その結果,拡大初期の流紋岩類はプレート内部もしくは衝突帯にプロットされるのに対して,拡大後期の流紋岩は火成弧の領域にプロットされることが分かった。これは,拡大初期にはユーラシアプレート縁部でのリフティングに始まり,現在の島弧系を形成する過程を反映しているものと考えられ,先行研究によるモデル7, 8と矛盾しない。
引用文献
1Pearce and Cann (1971) Earth and Planetary Science Letters, 12, 339–349.
2Pearce and Cann (1973) Earth and Planetary Science Letters, 19, 290–300.
3Pearce et al. (1984) Journal of Petrology, 25, 956–983.
4Thiéblemont and Tégyey (1994) Comptes Rendus de l’Académie Des Sciences, Series II, 319, 87–94.
5Hofman (1988) Earth and Planetary Science Letters, 90, 297–314.
6Thiéblemont (1999) Earth and Planetary Sciences, 329, 243–250.
7Shuto et al. (2006) Lithos, 86, 1–33.
8Yamada et al. (2023) Journal of Mineralogical and Petrological Sciences, 118, 026.