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[R7-06]Trace element compositions of clinopyroxenes in mantle peridotite xenoliths from Aitutaki Island, Cook Islands: garnet signature and mantle metasomatism

*Masako YOSHIKAWA1, Norikatsu Akizawa1, Akihiro Tamura2, Tomoaki Morishita2 (1. Hiroshima Univ., 2. Kanazawa Univ.)
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Keywords:

Aitutaki peridotite xenolith,trace element compositions,garnet signature,mantle metasomatism

南太平洋クック諸島アイツタキ島からは、ザクロ石の痕跡(細粒鉱物集合体:FMA)を有するマントルかんらん岩捕獲岩(以下、マントル捕獲岩)が報告されている(Akizawa et al., 2024)。海洋域ではザクロ石やザクロ石の痕跡が観察されるマントル捕獲岩は世界で数例しか発見されていない。このため、アイツタキ島のマントル捕獲岩の化学的特徴を明確化することは、海洋下マントルの化学的特徴の多様性を理解する上で重要ある。大陸下のザクロ石マントル捕獲岩の、重希土類が強く分配されるザクロ石と共存する単斜輝石のコンドライト規格化希土類元素(REE)パターンは、重希土類に枯渇し中希土類元素に頂点を持つ上に凸型のパターンを示す(図1, Ionov et al., 1993)。アイツタキのFMAを含むマントル捕獲岩中の単斜輝石は、これらと類似したコンドライト規格化REEパターンを示し、かつ捕獲岩の全岩化学組成が始源マントルと類似する事から、溶融過程をほとんど受けていないマントル物質が海洋下のリソスフェア-アセノスフェア境界からもたらされたとされる(Akizawa et al., 2024)。本研究では、海洋下マントルの多様性について検討するため、アイツタキ島マントル捕獲岩のFMAを含むものと含まないものの鉱物の化学組成や単斜輝石のSr-Nd同位体比を決定した。アイツタキ島のFMAを含まないマントル捕獲岩中の単斜輝石のコンドライト規格化REEパターンは、重希土から中希土類元素にかけての傾きと濃度に違いがあるものの、FMAを含む捕獲岩中の単斜輝石と同様に、概ね中希土類に頂点をもつ上に凸のコンドライト規格化REEパターンを示した。しかし、アイツタキ島マントル捕獲岩中の単斜輝石のNd同位体比とSm/Nd比は正の相関を示し、その一端に母岩のアルカリ玄武岩のデータがプロットされる。この関係は、溶け残りマントルとアルカリ玄武岩の混合で説明可能で、単斜輝石のREEパターンは交代作用による影響を被っていることを示す。すなわちアイツタキ島マントル捕獲岩中の単斜輝石のREEパターンがいずれも類似していることは、ザクロ石と共存したことによる特徴と母岩アルカリ玄武岩による交代作用の結果によるパターンが類似することを示す。ザクロ石やその記載的な痕跡は認められていないものの、地球化学的な特徴よりかつてザクロ石安定領域に存在していたと推測されている、東北日本沖プチスポット火山(Pilet et al., 2016)やアフリカ大陸西岸沖カーボベルデ・サル島(Bonadiman et al., 2005)のスピネルマントル捕獲岩中の単斜輝石のREEパターンは、アイツタキ・マントル捕獲岩の単斜輝石のものと類似する。東北日本沖プチスポット捕獲岩はザクロ石安定領域で母岩と類似したメルトによる交代作用を被った(Pilet et al., 2016)と解釈されており、サル島捕獲岩は交代作用の影響のあるものとないものが報告されている(Bonadiman et al., 2005)。本講演では、アイツタキ・マントル捕獲岩中の単斜輝石のREEパターンがザクロ石安定領域に存在していた特徴か、交代作用による影響なのかを区別が可能かについて検討した結果について報告したい。