Presentation Information
[R7-11]Distribution and coordination of REE and carbon in apatite of fish debris in REE-rich deep-sea mud from the Minami-Torishima area, southeastern Japan
*Terumi EJIMA1,2, Kon Yoshiaki2, Hoshino Mihoko2, Sanematu Kenzou2, Araoka Daisuke2, Saito Noriyuki2, Fukuda Chihiro3, Takemoto Ayu4, Takahashi Yoshio4, Tanaka Masato4,5, Kawano Shigenori6, Takagi Tetsuichi2 (1. Shinshu University, 2. AIST, 3. GEM RESEARCH JAPAN INC., 4. The University of Tokyo, 5. Hosei University, 6. Tochigi Prefectural Museum)
Keywords:
apatite,REE,fish debris,carbon,Y
希土類元素(REE)は供給リスクが高く、電気自動車の磁石などの製造において不可欠金属であるため、世界的な注目を集めている(Hoshino et al., 2016; Simandl et al., 2021)。REEに富む深海堆積物は太平洋およびインド洋の複数地域で報告されており(例:Kato et al., 2011; Yasukawa et al., 2014; Zhang et al., 2017)、近年日本の排他的経済水域である南鳥島周辺においてもREE泥が発見されている(Kato et al 2011)。先行研究において、この深海底泥中に含まれる魚骨類アパタイトがREEのホスト鉱物であることが報告されている(Kon et al., 2014)。しかし、魚骨類アパタイトにREEが濃集するメカニズムについては未解明である。
本研究では、南鳥島周辺の魚類骨片中のREEの存在形態を調べることで、魚骨類へのREE濃集のメカニズムを解明することを目的とした。魚類歯のエナメル質よりもREEを多く含む魚類骨片中のREE濃集アパタイトに焦点を当てた。また、魚類骨片中のREE濃集における炭素の役割についても検討した。
研究では、REE抽出実験、電界放出型電子線微小部分分析、透過型電子顕微鏡観察、レーザー誘起ブレークダウン分光分析、フーリエ変換赤外分光分析、およびX線吸収端近傍微細構造解析を行った。また、REEの中でも含有量が多いイットリウム(Y)を魚骨類中のREEの存在形態を知るための代表元素として用いた。
南鳥島周辺の未固結な深海泥に存在する魚骨類はREEを高濃度に含有している。魚骨類は形状に基づき、歯と骨片に分類される。歯はエナメル質特有の配向を持つ長柱状のアパタイト結晶で構成されるのに対し、骨片はランダムな配向を持つ短柱状のアパタイト結晶の集合体で構成されている。骨片は歯よりもYと炭素(C)の含有量が多い。骨片内には微細なYPO₄結晶やその他の不純物は観察されず、炭素のみを含む領域(有機物と推定される)ではYの濃集は確認されない。アパタイトがREEを含む場合、SiおよびNaと相関関係があることが知られているが、本ケースではこれらの元素とYに相関関係は認められなかった。一方で、Yを多く含むアパタイトにはCO₃²⁻(炭酸基)の存在が認められる。炭酸基はアパタイト構造内でリン酸塩や水酸基と置換可能であり、REEの取り込みを促進するサイトを形成する可能性がある。また、骨片中で炭素の含有量が高い領域では、Yがアパタイト内のCaサイトを置換することが確認された。これらの結果は、アパタイトへの炭素の取り込みが深海底未固結泥中に含まれる魚骨類アパタイトにおけるREE濃集プロセスにおいて重要な役割を果たしていることを示唆している。
本研究では、南鳥島周辺の魚類骨片中のREEの存在形態を調べることで、魚骨類へのREE濃集のメカニズムを解明することを目的とした。魚類歯のエナメル質よりもREEを多く含む魚類骨片中のREE濃集アパタイトに焦点を当てた。また、魚類骨片中のREE濃集における炭素の役割についても検討した。
研究では、REE抽出実験、電界放出型電子線微小部分分析、透過型電子顕微鏡観察、レーザー誘起ブレークダウン分光分析、フーリエ変換赤外分光分析、およびX線吸収端近傍微細構造解析を行った。また、REEの中でも含有量が多いイットリウム(Y)を魚骨類中のREEの存在形態を知るための代表元素として用いた。
南鳥島周辺の未固結な深海泥に存在する魚骨類はREEを高濃度に含有している。魚骨類は形状に基づき、歯と骨片に分類される。歯はエナメル質特有の配向を持つ長柱状のアパタイト結晶で構成されるのに対し、骨片はランダムな配向を持つ短柱状のアパタイト結晶の集合体で構成されている。骨片は歯よりもYと炭素(C)の含有量が多い。骨片内には微細なYPO₄結晶やその他の不純物は観察されず、炭素のみを含む領域(有機物と推定される)ではYの濃集は確認されない。アパタイトがREEを含む場合、SiおよびNaと相関関係があることが知られているが、本ケースではこれらの元素とYに相関関係は認められなかった。一方で、Yを多く含むアパタイトにはCO₃²⁻(炭酸基)の存在が認められる。炭酸基はアパタイト構造内でリン酸塩や水酸基と置換可能であり、REEの取り込みを促進するサイトを形成する可能性がある。また、骨片中で炭素の含有量が高い領域では、Yがアパタイト内のCaサイトを置換することが確認された。これらの結果は、アパタイトへの炭素の取り込みが深海底未固結泥中に含まれる魚骨類アパタイトにおけるREE濃集プロセスにおいて重要な役割を果たしていることを示唆している。