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[R7-P-02]Ore minerals occurring in hydrothermal deposits located in Yabu City, Hyogo Prefecture

*Hayate Sakanaka1, Mariko Nagashima1 (1. Yamaguchi Univ.Sci)
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Keywords:

Akenobe mine,Xenothermal deposits

【はじめに】兵庫県中央部には生野鉱山や明延鉱山に代表される多くの熱水鉱床が形成されている[1].両鉱山はゼノサーマル型多金属鉱床であることが知られており,浅熱水性-深熱水性の鉱石鉱物が同一鉱床内に産し,それらが水平的垂直的に帯状のゾーニングを示すという特徴を有する[2].明延鉱山の周辺地質は舞鶴帯に属し,鉱床はペルム系の舞鶴層群とペルム系~三畳系の夜久野オフィオライトの裂罅中に形成されている.舞鶴層群は玄武岩質火山岩類などを主とする下部層,頁岩を主として砂岩礫岩を挟む中部層,黒色粘板岩を主として頁岩や砂岩などを挟む上部層に分けられ,夜久野オフィオライトは,低度の変成作用を受けた斑れい岩や玄武岩で構成されている[3].これら母岩中の,鉱床は複数回の鉱液流入モデルが考えられており,早期からPb-Zn期, Cu-Zn期, Cu-Sn期, Sn-W期に大別され,形成ステージの早期から晩期にかけて温度上昇が示唆されている[4].これらの鉱石晶出期においてSn-W期の鉱脈は,それよりも早期に晶出した硫化鉱物の鉱脈を切る.なかでもWやSnなどは,チタン鉄鉱系列の花崗岩に由来するものと考えられていることから,鉱床の東側に位置する和田山花崗岩が鉱床形成の後期ステージに関与したと解釈されている[5] [6].上記のように,これまで地質学的,構造学的,鉱床学的観点から明延鉱山に関する多くの研究が報告されてきたが,鉱石鉱物の組み合わせや個々の鉱石鉱物の化学的な特徴などの報告は限られており,未だ検討の余地があるといえる.したがって,本研究では本鉱床に産する鉱石について鉱物学的特徴から,形成過程や環境について検討することを目的とする.
【実験手法】調査地周辺地域のズリ山より岩石を採取し薄片を作成. 化学分析にはJEOL製電子プローブマイクロアナライザー(EPMA) JXA-8230を用いた.
【結果・考察】観察された鉱石鉱物の組み合わせや切断関係などより,本研究では晶出早期から,閃亜鉛鉱と方鉛鉱が主のZn-Pb期, 閃亜鉛鉱と黄銅鉱が主のZn-Cu期, 硫砒鉄鉱が多く産するCu-Zn-As期, 斑銅鉱やインジウム銅鉱が産するCu-In期(図1a), 灰重石や鉄重石,錫石が産するW-Sn期の5ステージに分類した. 鉱化段階は前者2期を前期,Cu-Zn-As期を遷移期,後者2期を後期と区分する. 遷移期に晶出した硫砒鉄鉱の粒間に,比較的低温で晶出する他形のマチルダ鉱が産出するため,遷移期と後期では時間的な間隙があると考えられる.全てのステージで観察された閃亜鉛鉱は, ほとんどが黄銅鉱病変を伴い,Fe含有量は前期よりも後期で相対的に高い傾向がある. このことは,後期ステージにおける晶出温度の上昇,もしくはfS2の減少,またはその両方を示唆する[7]. さらに,後期に形成された閃亜鉛鉱中に最大1.14wt.%のInが含まれていることは形成温度の上昇を支持するといえる[8]. 輝コバルト鉱も全ての晶出ステージで認められ,前期に晶出したものは端成分組成に近いが,後期になるとCo成分(CoAsS)が減少し(Ave 21.6-28.9wt.%),Ni成分(NiAsS)が増加する(Ave 4.3-9.7wt.%).Klemm[9]に基づくと,この組成変化は形成温度の上昇によるものと解釈できる. またW-Sn期では含Bi鉱物が産することが明らかになった(図1b).自然ビスマスを取り囲むように輝蒼鉛鉱をはじめとする含Bi硫化鉱物が産しており,この産状はfS2の上昇を示唆する.  
このように鉱石鉱物の化学的特徴からも鉱床形成前期~後期の温度上昇が支持される.発表では,各鉱化期の鉱石鉱物組み合わせとそれらの安定領域,化学組成に基づき,より詳細な温度変化を議論する.
[1] 中村 ほか, 人と自然, 6, 197-243 (1995), [2] 例えば 阿部, 鉱山地質, 13, 41-53, (1963), [3] 小林, 人と自然, 8, 19-39 (1997), [4] 例えば 佐藤 ほか, 鉱山地質, 27, 245-262 (1977), [5] 石原, 資源地質, 58, 131-138 (2008), [6] Ishihara et al. GSJ, 63, 181-202 (2012), [7] Scott, Mineral. Mag., 47, 427-435 (1983), [8] Jonson et al. Can. Mineral, 51, 629-641 (2013), [9] Klemm, Mineral. Abh., 103, 205-255 (1965)