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[R8-P-01]Petrography of hornfels of the Susa area, Yamaguchi Prefecture

*Chika Takahashi1, Toshiaki SHIMURA1 (1. Yamaguchi Univ)
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Keywords:

Hornfels of the Susa area,contact metamorphism,Koyama gabbroic complex

 はじめに 山口県北東部に位置する萩市須佐地域では,90~80 Maの流紋岩質~石英安山岩質凝灰岩および凝灰角礫岩からなる阿武層群が基盤として広く発達しており,それを前期中新世末~中期中新世初頭に堆積した礫岩・砂岩・泥岩からなる須佐層群が覆っている.この須佐層群に15 Ma頃に活動した山島火山岩と高山斑れい岩が貫入し接触変成作用を与えている (今岡ほか, 1997など) .西村・鈴木 (1980) により,この接触変成域は泥質岩源変成岩の鉱物組合せに基づいて,変成度の低いほうから高いほうへ,黒雲母帯・菫青石帯・斜方輝石帯に分帯されている.本研究では,この変成分帯を踏襲し黒雲母帯・菫青石帯・直方輝石帯に分帯し記載をおこなった.なお,この地域は「須佐ホルンフェルス」と呼ばれ,日本の地質百選や,萩ジオパークの重要地点になっている.また本研究の調査地域は国指定の名勝及び天然記念物須佐湾に含まれるため,特別地域(特別保護地区,海域公園地区)内鉱物の掘採(土石の採取)許可が下りたうえで,2025 年 3 月から試料採取を開始した.
 地質概説 本研究は西側海岸地域を対象に調査を行った.調査地域の北側には高山斑れい岩が産し,南側には須佐層群の砂泥質岩起源のホルンフェルスが見られる.両者の貫入境界は平面的ではなく複雑に入り組んでいる.また,ホルンフェルス分布域内には幅1.5~3 m程の玄武岩ないし閃緑岩の岩脈が複数みられる.本調査地域のホルンフェルスは南から北へ黒雲母帯・菫青石帯・直方輝石帯へと変成度が高くなる.
 岩石記載 各帯の岩石記載を黒雲母帯,菫青石帯,直方輝石帯の順で下記に示す.黒雲母帯のホルンフェルスは細粒で,肉眼で堆積構造がはっきり認識できるものがほとんどである.この帯の石英粒子は全体的に角張っており,特に調査地域南端の試料は顕著に砕屑粒子の形態を残している.鉱物組合せは 黒雲母+白雲母+緑泥石+斜長石+石英+グラファイト である.黒雲母のZ軸色は淡緑色である.菫青石帯のホルンフェルスは,黒雲母帯の試料に比べ粗粒で,原岩の堆積構造は直方輝石帯に近い試料ほど不明瞭になる.鉱物組合せは 菫青石+黒雲母+斜長石+カリ長石+斜長石+石英 であり,まれに白雲母・グラファイトを産する.グラノブラスティック組織を持つ試料がある.また,直径0.3 mmほどの菫青石斑状変晶が見られる試料もある.黒雲母のZ軸色は赤褐色~濃褐色である.直方輝石帯のホルンフェルスは,菫青石帯の試料よりもさらに粗粒になり,原岩の堆積構造は菫青石帯付近のものは不明瞭ながら確認できるが,斑れい岩との貫入境界付近では堆積構造は確認できない.鉱物組合せは 直方輝石+菫青石+カリ長石+黒雲母+斜長石+石英 である.グラノブラスティック組織が特徴的に発達しており,デカッセイト組織を有する試料もある.黒雲母のZ軸色は黒褐色である.
 考察 黒雲母帯の石英粒子は角ばっており,砕屑粒子の組織を残していることから,この帯は原岩の組織をよく残していると考えられる.なお,本調査地域より南に位置する観光名所「須佐ホルンフェルス,畳岩」の砂岩泥岩互層からは試料を採取していないが,非変成または黒雲母帯以下の変成度であると考えられる.また,黒雲母のZ軸色が低変成度の黒雲母帯から高変成度の直方輝石帯にかけて淡緑色,濃褐色,黒褐色となっていることは,変成度が高いほど黒雲母中のTi量やFe3+が増加することを示唆していると思われる.黒雲母のTi量は変成温度を反映することが知られているので(Henry et al., 2005など),この特徴は黒雲母帯から直方輝石帯にむかい変成温度の上昇を反映していると思われる.今後は鉱物化学分析などから,変成履歴や変成温度圧力条件の解析を進めてゆく.
 引用文献 Henry et al. (2005) Amer. Mineral., 90, 316-328; Imaoka and Itaya (2004) Geol. Mag. 141, 1-13; 今岡ほか(1997) 岩石鉱物科学, 92, 302-315; 西村・鈴木 (1980) 須佐-高山地域の接触変成岩類. 山口県教育委員会, 1-26; Suzuki and Nishimura (1983) Jour. Sci. Hiroshima Univ. Ser. C, 8, 151-160.