Presentation Information
[R8-P-02]Geochronology of high-grade metamorphic rocks in Instekleppane, Lützow-Holm Complex, East Antarctica.
*Tatsuro ADACHI1, Lakshmanan Sreehari2, Yuki Mori3, Tomokazu Hokada4,5 (1. Kyushu University, 2. Shimane University, 3. JASRI, 4. NIPR, 5. SOKENDAI)
Keywords:
UHT metamorphic rocks,Zircon U-Pb dating,Lützow-Holm Complex,East Antarctica
東南極ドロンイングモードランド東部は,ゴンドワナ超大陸形成に伴う大陸衝突帯に位置していたと考えられている(e.g., Stern, 1994, Annu. Rev. Earth Planet. Sci.).ゴンドワナ超大陸形成の最終段階に存在した大規模造山帯については大きく二つのモデルがあり,約600~500 Maにわたって長期間活動した一つの造山帯であったとするモデル(e.g., Jacobs and Thomas, 2004, Geology)と,約600 Maと約550 Maそれぞれに活動した2つの造山帯があったとするモデル(e.g., Meert, 2003, Tectonophysics)が提唱されている.最近ドロンイングモードランド東部の複数の地域で,約600 Maおよびそれ以降の変成作用を記録する岩体と,約550 Ma以降の変成作用のみを記録した岩体が存在することが見いだされた(セール・ロンダーネ山地ブラットニーパネ,Adachi et al., 2023 JMPS;リュツォ・ホルム岩体ベルナバネ,Nakano et al., 2025, Gondwana Research).このことを踏まえ,65次日本南極地域観測隊では,これまで約530 Maが主要な変成作用の時期であると考えられてきたリュツォ・ホルム岩体において,約600 Maの変成・火成作用を記録する岩体を検出し, また約550 Maより若い変成作用のみを記録している岩体との地質学的関係を明らかにすることをターゲットの一つとして,岩体南部に位置するインステクレパネにて地質調査を実施した.
インステクレパネの最も主要な岩相はfelsic Opx-Bt gneissであり,南部や北西部にはGrtを含むLeucocratic Grt-Bt gneissやfelsic Grt-Opx gneissなども広く分布する.それら主要な岩相中のレイヤーとして,mafic granuliuteやmeta-ultramafic rock,Mg–Al-rich rock (例えばSpr-Crd-Bt gneiss,Grt-Spr-Opx-Crd gness)などが狭在する.これらの岩相の多くにグラニュライト相の鉱物組み合わせが認められ,特にMg–Al-rich rockには超高温変成条件付近での減圧を示唆する反応組織(Opx + Sil => Spr + CrdやGrt => Opx + Spr + Crd)が認められる(Adachi et al., 2025 JpGU meeting).
この露岩の代表的な岩相の変成年代を明らかにするため,felsic Opx-Bt gneiss(TA2024012703A),felsic Grt-Opx gneiss (TA2024012604)およびSpr-Crd-Bt gneiss(TA2024012401A)についてLA-ICP-MSを用いたジルコンU–Pb分析を実施した.それぞれに含まれるジルコンはCL像の輝度とTh/U比およびYbn/Gdn比に基づいてドメイン区分した.felsic Opx-Bt gneissに含まれるジルコンは,オシラトリー累帯構造を持つコア(Th/U=0.20–1.11,Ybn/Gdn=14.4–32.2,以下同様),暗いCLのインナーマントル(0.01-0.03,43.4-79.0),やや暗いマントル(0.16-0.48,29.4-36.7),明るいリム(0.05-3.46,15.6-34.2)に区分される.また,felsic Grt-Opx gneissに含まれるジルコンは,オシラトリー累帯構造を持つコア(0.55–0.95, 11.7–23.8),明るいCLのインナーマントル(0.02–0.48,27.0–1654.1),暗いマントル(0.02–0.50,3.5–1044.8),やや暗いリム(0.17–0.46,0.5–0.8)に区分される.Spr-Crd-Bt gneissに含まれるジルコンは,オシラトリー累帯構造を持つコア(0.34–1.48,5.28–39.28),暗いマントル(0.01–0.18,31.2–197.3),やや暗いリム(0.01–0.09,44.0–118.9)に区分される.コア以外は組織および低いTh/U比から変成起源であると考えられるが,どの試料からも約600–550 Maの年代値が得られた.これらのことは,この露岩に約600 Maの変成作用を記録する岩石が分布していることを示唆している.
今後インステクレパネの他の岩相の年代測定を実施し,約550 Maより若い変成作用のみを記録している岩体の有無を検証し,この露岩の地質学的位置づけを検討する予定である.
インステクレパネの最も主要な岩相はfelsic Opx-Bt gneissであり,南部や北西部にはGrtを含むLeucocratic Grt-Bt gneissやfelsic Grt-Opx gneissなども広く分布する.それら主要な岩相中のレイヤーとして,mafic granuliuteやmeta-ultramafic rock,Mg–Al-rich rock (例えばSpr-Crd-Bt gneiss,Grt-Spr-Opx-Crd gness)などが狭在する.これらの岩相の多くにグラニュライト相の鉱物組み合わせが認められ,特にMg–Al-rich rockには超高温変成条件付近での減圧を示唆する反応組織(Opx + Sil => Spr + CrdやGrt => Opx + Spr + Crd)が認められる(Adachi et al., 2025 JpGU meeting).
この露岩の代表的な岩相の変成年代を明らかにするため,felsic Opx-Bt gneiss(TA2024012703A),felsic Grt-Opx gneiss (TA2024012604)およびSpr-Crd-Bt gneiss(TA2024012401A)についてLA-ICP-MSを用いたジルコンU–Pb分析を実施した.それぞれに含まれるジルコンはCL像の輝度とTh/U比およびYbn/Gdn比に基づいてドメイン区分した.felsic Opx-Bt gneissに含まれるジルコンは,オシラトリー累帯構造を持つコア(Th/U=0.20–1.11,Ybn/Gdn=14.4–32.2,以下同様),暗いCLのインナーマントル(0.01-0.03,43.4-79.0),やや暗いマントル(0.16-0.48,29.4-36.7),明るいリム(0.05-3.46,15.6-34.2)に区分される.また,felsic Grt-Opx gneissに含まれるジルコンは,オシラトリー累帯構造を持つコア(0.55–0.95, 11.7–23.8),明るいCLのインナーマントル(0.02–0.48,27.0–1654.1),暗いマントル(0.02–0.50,3.5–1044.8),やや暗いリム(0.17–0.46,0.5–0.8)に区分される.Spr-Crd-Bt gneissに含まれるジルコンは,オシラトリー累帯構造を持つコア(0.34–1.48,5.28–39.28),暗いマントル(0.01–0.18,31.2–197.3),やや暗いリム(0.01–0.09,44.0–118.9)に区分される.コア以外は組織および低いTh/U比から変成起源であると考えられるが,どの試料からも約600–550 Maの年代値が得られた.これらのことは,この露岩に約600 Maの変成作用を記録する岩石が分布していることを示唆している.
今後インステクレパネの他の岩相の年代測定を実施し,約550 Maより若い変成作用のみを記録している岩体の有無を検証し,この露岩の地質学的位置づけを検討する予定である.