Presentation Information
[R8-P-05]Saline fluids migration and albite-spot formation in quartz schists in Sanbagawa metamorphic rocks, Tenryu district, Japan
*Takumi matsumoto1, Miki Tasaka1, Tatsuhiko Kawamoto1 (1. Shizuoka univ. Sci.)
Keywords:
albite-spot,sanbagawa metamorphic belt,saline fluids,Fluid Inclusion
三波川変成帯では、斜長石が粒径1〜2 mmのアルバイト・スポットと呼ばれる微細構造が普遍的に観察され、アルバイト・スポットはざくろ石帯周辺の比較的高温度で変成作用を被った領域でのみ観察されることから、温度上昇がきっかけとなって形成されたと解釈されてきた(Ernst et al., 1970; 落合, 1989; Inui et al., 2023など)。しかし、詳細な形成過程はよくわかっていない(Inui et al., 2023)。本研究は、静岡県佐久間・天竜地域の阿多古川沿いに分布する三波川変成岩の緑泥石帯からざくろ帯において10試料の石英片岩を分析し、沈み込み帯の水-岩石相互作用と流体存在下の変形と交代作用の視点から、アルバイト・スポットの形成過程を考察する。石英片岩中では、アルバイトは2種類の産状で存在する:(1)粒径約50 μmの細粒なアルバイトの集合が帯状に分布するものと、(2)粒径1〜2 mmの粗粒なもの。後者をアルバイト・スポットと呼ぶ。細粒なアルバイトは全ての岩石で観察されたが、アルバイト・スポットは比較的高温の変成作用を受けた岩石でのみ存在する。電子線後方散乱回折法(EBSD)による結晶方位解析の結果、粒径約50 μmの細粒な石英やアルバイトには亜結晶粒界と顕著な形態定向配列(SPO)が見られ、それらは転位クリープによる変形が示唆される。一方、アルバイト・スポットを形成する粗粒なアルバイト結晶は自形のものが多く、亜結晶粒界や明瞭な粒子内変形は見られない。また、電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)によるアルバイトの化学組成分析から、アルバイトは組成累帯構造をもたずアルバイト成分(X_Ab[=Na/(Na+Ca+K))は粒径によらず1から0.98で一定である。岩石のXY面の薄片をZ軸方向に1mm間隔で5枚作製し、アルバイトの三次元分布をマイクロXRFを用いて観察した。細粒なアルバイトは面構造に平行にシート状あるいは、線構造に沿う鉛筆状に分布する。加えて、本研究の試料では粗粒なアルバイト・スポット中で流体包有物が見られ、ラマン分光法によると水である。さらに、マイクロサーモメトリー測定より、流体包有物の均質化温度は148±5℃、塩濃度は5.5±0.5 wt.%である。三波川変成岩の緑泥石帯の泥質片岩における二面角測定から流体がAb/Qz粒界を選択的に濡らす可能があり(Hiraga et al.,2001)、沈み込み帯深部からアルバイト成分を含む塩水流体が石英片岩の面構造に沿って浸透することによって粒成長が促進されアルバイト・スポットが形成したと提案する。アルバイト・スポットは、外部からの塩水流体の浸透を示す直接的な証拠と考える。 参考文献:落合, 1989, 静岡大学理学部地球科学科卒業論文; Ernst et al., 1970, Geol. Soc. Am., 124; Inui et al., 2023, J. Mineral. Petrol. Sci., 118-021;Hiraga et al., 2001, Contrib. Mineral. Petrol., 141: 613-622