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[S1-01]Ultrananolite crystallization mechanism: Insights from in-situ FE-SEM observation of heating experiments

*Mayumi MUJIN1, Michihiko NAKAMURA2 (1. Hokkaido University, 2. Tohoku University)
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Keywords:

Ultrananolite,Nanolite,In-situ observation,Spinodal decomposition,Liquid immiscibility

我々は,新燃岳2011年噴火噴出物の石基マイクロライトの粒間ガラスに,数十nmのナノ結晶(ウルトラナノライト)が高数密度で含まれる場合があることを報告した(Mujin and Nakamura, 2014; Mujin et al., 2017).そののち海外の研究グループにより,ナノ結晶が噴火のダイナミクスに影響を与えるというモデル,つまりナノ結晶の存在やそれによるメルト組成の分化でマグマの粘性が増加したり (Di Genova et al., 2017, 2020),ナノ結晶が気泡の不均質核形成サイトとなりマグマの発泡を促す(Cáceres et al., 2020; Hajimirza et al., 2021)というモデルが提案され,火山噴出物中のナノ結晶が注目されている.しかし,高数密度のナノ結晶の晶出条件や晶出メカニズムは明らかになっておらず,ナノ結晶がこのような形で噴火のダイナミクスに与えるかどうかは定かではない.そこで我々は,ナノ結晶の晶出条件や晶出メカニズムを明らかにするために,電解放出型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)下で加熱ステージによる実験を行い,結晶成長のその場観察を行ってきた.FE-SEM観察で通常使用する高真空(9.6×10-5 Pa)では鉄が金属鉄となり,また鉄粒子が合体成長する様子が観察された(Mujin et al., 2021).本研究では,低真空(60 Pa)で乾燥大気を導入することで,Fe酸化物のナノ結晶の晶出に成功した(Mujin and Nakamura, 投稿中).
 出発物質には,石基結晶をほとんど含まない天然の火山ガラスを用いた(桜島火山大正噴火軽石の石基ガラス;全岩SiO2 = 62 wt%, SiO2 = 70wt%, 含水量 = 0.5 wt%,Otsuki et al., 2015).室温から850°C,900°C,950°C,または1000°Cまで10°C/秒で加熱し,40–122分間保持した後,室温まで急冷した.実験後はFE-SEM-EDSおよびTEM-EDSを用いて観察および鉱物相の同定を行った.
 Fe酸化物結晶のサイズと数密度は,900°C以下と950°C以上で大きく変化した.設定温度到達後約40分の時点で比較すると,950°C以上では,低数密度で数百nmまで成長した一方,900°C以下では,高数密度で晶出した粒子のほとんどは100 nmまで成長しなかった.実験後のHAADF-STEM(high-angle annular dark-field scanning TEM)観察では,950℃以上の実験産物のガラス部分は均質なガラスである一方,ナノ結晶が晶出した900°C以下のガラスは10 nm以下のコントラストのむらがあった.Rhyolite-MELTS(Gualda et al., 2012)を用いた計算では,ソリダス温度は900°Cと950°Cの間である.ナノ結晶が晶出したガラスで見られたコントラストのむらは,過冷却メルトのスピノーダル分解によって生じた可能性があり,ウルトラナノライトがナノスケールの液相不混和を経て晶出した可能性がある.つまりウルトラナノライトは,マイクロライトや粗粒のナノライトとは異なるメカニズムで晶出し,これらと連続的な結晶作用ではない可能性がある.我々が新燃岳サンプルで報告した,ウルトラナノライトサイズからの結晶サイズ分布に見られるギャップ(Mujin et al., 2017)は,晶出メカニズムの違いによって生じた可能性がある.