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[S1-02]Magma vesiculation triggered by the crystallization of Fe-Ti oxide minerals: Example from the Waimihia eruption

*Masatoshi Ohashi1, Ben Kennedy2, Darren Gravley2 (1. Kyushu Univ. Sci., 2. Univ. Canterbury)
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Keywords:

magma,Fe-Ti oxide mineral,vesiculation,magma mixing

はじめに
火山噴火の模擬実験として、メントスコーラが知られている。実際の火山噴火において、このメントスの役割を果たすのが鉄チタン酸化物の結晶である。特に磁鉄鉱は、気泡の核形成に必要となる界面エネルギーを大きく下げ、気泡数密度を増加させることが実験的に示されている。しかし、全ての気泡の核となるには、非常に多くの磁鉄鉱が必要となる(~1016 m-3)。そのような微小かつ多量の磁鉄鉱が、マグマだまりでどのように出来るのか、明らかにされていない。また、数密度という観点から、磁鉄鉱と気泡の関係を天然の軽石で調べた研究はほぼなく、定量的データが必要とされていた。そこで、講演者らは、New ZealandのTaupo火山で3300年前に発生した噴火に注目し、その噴出物の石基組織及び気泡組織を解析した。

石基組織
Waimihia噴火の噴出物は、白色軽石、縞状軽石、灰色軽石、苦鉄質包有物の4種類に区分でき、珪長質マグマと苦鉄質マグマの混合を示唆する。苦鉄質包有物は、数μmサイズのマイクロライトに富んでおり、低温の珪長質マグマだまりに貫入した時の冷却作用で結晶化したと考えられる。マイクロライトのサイズ分布は、包有物のサイズと相関があり、マグマだまりで包有物がすでに形成されたことを示している。一方、縞状軽石と灰色軽石は、鉄チタン酸化物や角閃石に富む一方、斜長石マイクロライトに著しく乏しい。結晶組織やガラス組成データを踏まえると、この斜長石の欠如は、冷却結晶時における核形成の遅れを示唆していると考えられる。斜長石の晶出が遅れることで、マグマの実効的な粘性が下がり、周囲の珪長質マグマとの混合が容易になる。珪長質マグマとの混合は、平衡・カイネティクスの両面から、斜長石の晶出をさらに遅らせ、混合を促進させる。このような正のフィードバックが起きたため、苦鉄質包有物と縞状軽石という極端な形状を示すようになったと考えられる。重要な点として、このフィードバックに鉄チタン酸化物は無関係である。磁鉄鉱を冷却結晶で多量に作りつつ、それを珪長質マグマへ効率的に分散させることが可能となる。

気泡組織
マイクロライトを含まない白色軽石と、縞状軽石・灰色軽石のBSE像から画像解析を行った。その結果、鉄チタン酸化物の数が気泡数より低い場合は、両者に相関は見られない。一方、鉄チタン酸化物が多くなると、気泡数密度と正の相関が見られるようになる。以上の解析結果は、マグマの発泡が核形成のサイト数に依存していることを示唆している。

まとめ
斜長石よりも磁鉄鉱の晶出が早い状況が作られると、マグマだまり内での混合過程で、磁鉄鉱マイクロライトが効率的に分散される。Waimihia噴火の噴出物が、この磁鉄鉱を核として、気泡の核形成が促進されたことを示している。