Presentation Information
[S1-03]Mechanism for repetitive explosive eruptions: New insights from proximal materials of the 2018 eruption at Shinmoedake volcano
*Keiko MATSUMOTO1, Nobuo GESHI2 (1. GSJ, AIST, 2. Kyushu univ.)
Keywords:
volcanic eruption,microtexture,oxidation
安山岩質火山は、しばしばブルカノ式噴火と呼ばれる間欠的な繰り返し爆発を繰り返す。地球物理学的観測からは、ブルカノ式噴火は、火山ガスの過剰圧により火道頂部に形成された溶岩(=“蓋”)が破壊され発生すると説明される。しかし、短時間で繰り返し“蓋”を形成し破壊する物質科学的メカニズムは不明である。本研究では、繰り返し爆発的噴火のメカニズムを理解するため、2018年の新燃岳噴火による火口近傍堆積物および火口壁の露頭から、火道頂部を構成する“蓋”の構造を調査した。調査範囲は2018年3月中旬以降の堆積物で被覆されていた。火口近傍堆積物の大部分は角礫状かつ赤色の表面を持つ岩塊で、しばしば赤色のタフサイト脈を伴った。黒色で変形したタフサイト脈を持つ岩塊も存在した。2018年4月の噴火で形成された山頂火口の火口壁は、赤色の角礫状岩塊と火山灰で構成されていた。密度および引張強度の測定により、黒色タフサイトを含む岩塊は、赤色タフサイトを含む岩塊や赤色表面の岩塊よりも高い密度と引張強度を示した。また、噴出物表面の赤色部分を顕微鏡で観察すると、赤色は、輝石マイクロライト上にみられる極微細な鉄酸化物に由来していた。これは破砕された後に高い酸素分圧(fO₂)下で酸化されたことを示す。以上の結果は、“蓋”構造が、大気が循環する脆性的で透過性の高い上部と、塑性変形によって形成された高密度で強固な下部から成ると仮定すると説明可能である。この“蓋”構造に基づくと、繰り返しの爆発的噴火は以下のモデルで説明される:(1) 爆発による高密度の蓋の破砕。(2) 蓋下部の塑性変形で亀裂が修復され、より深部からの火山ガス供給が遮断。結果、高浸透性の上部に大気が浸透し破片が酸化。(3) 火山ガスの蓄積による過剰圧により蓋下部がふたたび爆発。2018年噴火では、3月6~9日の溶岩噴出前にはほとんど含有されていなかった赤色火山灰粒子が、3月10日以降の爆発的噴火では最大で37%程度含まれていた(Matsumoto and Geshi, 2021)。これは本研究の赤色岩塊と同時期に噴出した遠方堆積物と推定される。通常、噴火中に火口近傍堆積物の観察は不可能だが、これらの対比により、遠方採取の噴出物から溶岩湖からの繰り返し爆発が発生していることが推定可能である。本研究は繰り返し爆発や脱ガスのメカニズムの理解に貢献するとともに、噴火の物質科学的モニタリングにも繋がる。